2/19 南カリフォルニア大学の教育改革(長文) |
2月19日(金)東京
2月20日(土)京都
なぜ、わざわざ1日だけ東京に帰ってきたのか。
すべてはこのためだった!
東京大学教養学部附属教養教育開発機構
国際シンポジウム「教育から学びへ:大学教育改革の国際的潮流」
www.komed.c.u-tokyo.ac.jp/document/20100219sympo.pdf
南カリフォルニア大学の学部教育担当副学長
ジーン・ビッカーズ教授の基調講演を聴くために戻ってきたのである。
「学生中心の学びの推進:南カリフォリニア大学の改革と成果」
(Student-Centered Learning:Global Trends and Practices at the University of Southern California)
Prof. Gene Bickers, Vice Provost for Undergraduate Programs, the University of Southern California
南カリフォルニア大学と言えば、
ロサンゼルスにある超名門大学である。
学部教育の全米ランキングでは26位。
日本での知名度は低いが、ジョージ・ルーカスの母校であり、
映画芸術学部の評価は全米ナンバーワンである。
こんなすごい大学の学部教育の話が、
カリフォルニアに行かなくても聞けるんだから、
このチャンスを私が逃すはずがない。
以下、メモを殴り書き。
・私の専門は理論物理。パズルが大好き。
・私たちの大学は、教育者ではなくて、学習者中心の教育をする。
・優秀な講義でも、独学できる能力は身についていない。
・脳はレクチャー方式ではうまく学習できない。
人類は2000年間講義形式の授業をしてきたが、
最善とはいえない。
★7つのグッドプラクティス
1・学生も教員も教室外で頻繁にコンタクトを取る。
自然科学系の世界的権威の教授でも、学生と食事などをして
過ごす時間を作る。
2・共同的な関係を学生に付ける
学生たちが音速の3倍の速度のロケットを打ち上げて回収する授業
「ロケット推進ラボ」とか
3・受動的ではなく能動的
初年度教育で問題解決型の授業
バイオメディカルエンジニアリング専攻の学生には
「水の上を25メートル歩く」
という課題を出す。
(忍者の水とんの術みたいなマシンで水の上に立つ学生の写真)
4・ビジネススクールでの実験
ロールプレイによるマーケティング
クラスメイトや教員からすぐフィールドバック
5・インストラクター(教員)はタスクに十分な時間をかける。
6・インストラクター(教員)は学生に高い期待を持ち、メンターになる。俳優をしていた教員が舞台演劇の授業で学生を励まし、応援している事例を紹介。
7・学生の学習の仕方は多様である。
教室の内で外で
小学校で子供たちに本を読んであげる授業
大学生が学習のヒントを得る
先生はこの7つの理念を持って教育をする。
研究大学ではきついだろう。
でも学術的な基準を下げるいいわけにはならない。
学習者を中心においたモデルは、
学生にも先生にも多くの課題を課す。
アメリカの高校3年生は週に4時間しか勉強しない(マジ?)。
講義(レクチャー)は学生への要求が低い。
優秀な教師に報いるのは経営者の責任。
16人のファカルティーフェローが教員の教育手法を
トレーニングする場を設けている。
優秀な先生に賞を出す。
「アソシエートアワード」7500ドル/年
USCメロン賞(エクセレントアワード)これは無報酬だが
教授には名誉だ。
これらは大学経営者の責任だ。
アメリカはこれ(学習者中心)を過去10年間
戦略的にやってきた。
アリゾナ州では、州が大学の質と競争力を高めようと
州立大学に教育投資している。
南カリフォルニア大は2004年から
アカデミックエクセレントの向上
学生中心の教育を導入している。
学生のニーズにこたえる。
個々の教育の実践
伝統的な講義も残っているが
革新的なコースデザインが進んでいる。
イノベーションが進んでいる。
★どんなプログラムか
多くの講義は問題追及型
ケーススタディー&問題解決
大学院でやってきたことを学部で
学習能力を高める、知識を得る
USCでは2年生の時に
工学部は中小企業でコンサルタントや技術提案をする。
学生の質も高まる
ビジネスライティングコースの先生は
モザンビークに学生を連れていき共同プロジェクトをしている。
5000ドルから80万ドルまで資金を獲得。
4年生の時にもこうしたプロジェクトがあり、工学部は必修。
1・2年生もケーススタディー。人気の高い講義。
国際関係学科では50%の科目がケーススタディー。
グループワークを重視
共同学習
ソフトウェアのデザイン
プログラミングをチームで行う。
工学部とビジネス学部と美術学部の学生が共同プロジェクトで
家電製品の開発をする。
(↑これはすごい。そして日本はマズイ)
★学習者中心のコース
フィールド体験と実験体験
政策学部は政府機関でのインターンシップ
映画学部の学生もインターン。専門分野でなくてもいい。
オフキャンパスの現場に連れていく。
カンボジアやベリーズ(マヤ文明)
2010年はブラジルに行きヒーリングの勉強
カイロ、ベルリン、パラオ
パラオでは「持続可能なツーリズム」
アメリカを離れて、世界を勉強してもらおう
キャンパスでのコースワークと海外でのフィールドワーク
ビジネススクールでは80%の学生が
10日間の海外フィールドワーク。400人が。
ムンバイ、チリのサンチアゴ、ワルシャワ、シドニー、
タイペイ、ホンコン、シンガポール。
工学部、コミュニケーション学部、建築学部も。
オナーズプログラムを作った。
「グローバルオナーズプログラム」
10週間、国際研究
GPA3・5以上が参加できる。
こうした学部教育は、これからますます増えていく。
★学生がオリジナルな研究
芸術的な成果物を作る
かつては学部教育は過去の知識を学ぶところだった
私の学生時代もそうだった
今のアメリカはもう違う
学部教育でのオリジナルなリサーチと
クリエイティブな作業が
学習の動機付けになる。
(↑このあたりの話、もう目からウロコ)
オリジナルなテーマで
「バチェラー・ディグリー・プログラム」
学部生がリサーチアシスタントをする。
映画を作ったり、パフォーマンス、リサイタル、芸術学部では。
今までは、クリエイティブなスキルをどう引き出すか。
今は学習者中心。
「ディスカバリー・スカラーズ」
年間150万ドルのフェローシップ。
夏休みなどに学生に研究費を出す。
(日本でも武蔵大学がやっているなあ)
学部教育はオンラインだけなんてありえない。
18~22歳の若い人は、オンラインだけではなく
仲間や先生とフェイスtoフェイスでインタラクティブに
そして学生寮でコミュニケーション能力、対人関係、
社会化、市民としての責任を学ぶ。
オンラインだけではオフラインと同じスキルは
学部生には身につかない。
社会人大学院生ならいいけど。
ブラックボードを学部教育で使っている。
オープンソースシステムsakaiとか。
講義を録画しWEBにUPする。
私の物理の授業も50時間録画。
学生のスキルの向上。
先生のティーチングテクノロジーに報酬制度。
いい学部教育をした先生に
2000ドルから1万ドルの報酬。
第一級の施設を提供するのは大学経営者の責任。
★学生中心の大学について
ウチはこれを戦略的にやっている。
寮での経験の大切さ。
学生と教員のインタラクションを科目・講義でするのが大事。
講義も重視しながら新しい学習プロセスを導入する。
新しい学習方法で学習成果を出す。
以上、ありがとうございました。
──情報量が多すぎて、今の自分にはすぐには咀嚼できない。
しかし、とにかく南カリフォルニア大学の教育は
学習者中心=学生中心であるということはよくわかった。
いくつかの事例は日本の大学でも導入されているが、
ここまで徹底した事例はまだない。
やはりアメリカの大学教育の話を聞いてよかった。
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