6/9 金沢にすごい大学がある、その名は金沢星稜大学! |
(写真)企画広報室の長久保実室長(右)、坂野光俊学長(中央)、総務部の友部充洋・星稜エクステンションセンター課長(左)
金沢にすごい大学がある!との情報を聞きつけた私は、福井から特急「サンダーバード」で文字通り稲妻のように金沢にやってきた。その大学の名は金沢星稜大学。松井選手の星稜高校と同じ学校法人の大学である。以前は金沢経済大学といい、長い間経済学部の単科大学で、まあ、パッとしない大学だった。
ところが今やこの金沢星稜大学、経済学部なのに毎年20人公務員合格、上場企業内定率が0.9%から39.0%に急上昇、オープンキャンパス来場者数も志願者数もうなぎのぼりという、奇跡の大復活を遂げた、驚異の地方文系私大なのである。その秘密を探るべく、私は金沢星稜大学を訪問した。
お話を伺ったのは、企画広報室の長久保実室長と、総務部の友部充洋・星稜エクステンションセンター課長。お2人いわく、「2005年ごろ、ウチはどん底だった」。特徴のない大学、人気は低い、志願者は集まらない、地域の評価も芳しくない。そんな八方ふさがりの中、改革をしようということで、
CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)というものを開始した。これは、とにかく公務員と税理士を輩出しようということで、ウチは金沢大学さんみたいに2年生、3年生からでは基礎学力もないし遅すぎるから、1年生からやろう、と、やる気のある1年生を55人集め、2年目で44人、
3年目で約30人と徐々に脱落者を出しながらも、4年間がんばったCDP一期生は、2008年、公務員に22人、税理士科目合格2人という好成績をあげた。どんな教育なのか。まず、1年生は高校までの勉強のリメディアル教育と、公務員試験の初級の基本を、週2日、16:10~19:30まで2コマ、
2年生は専門科目の入門と公務員初級の勉強を週2~3日放課後に、3年生は週3~4日、本当の公務員試験の対策を職種別に徹底して実施する。外部の専門学校の講師が来て、外部の公務員予備校よりも安価に開講した。キャリア考房という個人タイプのまるでロースクールのような自習室も完備されている。
さらには、エクステンションセンターの職員により、外部講師がいない時間は自主ゼミを開講し、公務員志望の学生を徹底的に鍛え上げた。2009年の2期生も、公務員に20人、税理士科目2人合格した。3期生は今、まさに公務員試験の真っ最中である。「期待以上の成果だった」とお二人は話す。
「3年前、2008年までの金沢星稜大学は、ほぼ全入だった。今は志願倍率が2倍近くなってきた。これは、必ずしもCDPだけが目玉なのではなく、通常の授業での取り組みが理解されてきたことも大きい」と長久保室長。かつて「勉強せん子が行く大学」とまで言われた金沢星稜大学、ならば、
「勉強させる大学」に変わろう!ということで、1年生のゼミは週2回にした。経済学部ではビジネス能力検定3級合格が義務。合格しないと単位が出ないので卒業できない。「自己肯定感がなく、成功体験もなかった学生が変わってきた」という。さらに「人のつながりをちゃんとつくろう」という意図もあり
初年次ゼミは20人で週2回を徹底している。しかも、この初年次ゼミには2人の専任教員が付く、検定試験の教員と、初年次教育の教員である。当初は初年次教育の教員はSPI対策の教員という位置づけだったが、反省点もあり現在は通常の教育内容になった。1年生20人に2人の専任教員のゼミ。
さらに金沢星稜大学は、「就職は親で決まる!」というものすごいパンフレットを作り、親に配布している。入学式の直後、親向けのガイダンスで、「ウチに入ったからには、親御さんもお子さんの就職のために一丸となって準備をしてもらいます」と宣言。年2回の保護者会では親と面談し、「お子さんを
フリーターにしない」など親を指導、就職活動をしていない、動けない学生は、親を呼び出し、指導をする。「このままではお子さんは就職できませんよ」と親を指導するのだ。パンフレット「就職は親で決まる」では、「受けるだけでも公務員試験を…と言わない」「東京への交通費は親が出す」
「半年間は日本経済新聞を取る」「3年秋以降はアルバイトをさせない」「安易に進学、留学に同意しない」「効きもしないのにコネがあるといわない」など、親への耳の痛いアドバイスが満載。また、早期離職者を防ぐため、卒業後5年までの卒業生は盆と正月の年2回、大学側が近況を確認し、
再就職支援もしている。既卒者求人のメール配信まで行っている。さらに、堀口英則就職課長から「ダメな学生」として、「いつまでもアルバイトをやめない」「素直さがない」「やりたいことがないといって活動しない」「出遅れる」「群れて行動する」「企業をたくさん回らない」「選択の範囲が狭い」
「進路志望を後になって変更する」「就職ガイダンスに出ない」など、ダメ学生の例を紹介。こうやって、親を教育しているのである。この偏差値の大学で金融・公務員にそれぞれ1割というのは、驚異的な実績である。人間科学部ができたので、CDPは公務員、税理士に加え、小学校教員コースも始めた。
「学生の質は確実に上がってきている。就職でペーパー試験を突破できるようになった」と友部氏。例えCDPを途中で辞めた学生も、基礎学力は上がっているので、民間企業就職では結果が出せるようになってきた。「地元のいい高校から生徒さんが入ってくれるようになってきたし、女子も増えてきた」
とのこと。全国の地方私大では悪循環が起きているが、金沢星稜大学では好循環が起きている。「ウチは全国区ではない。北陸3県でしっかり足場を固めればいい」と長久保室長は慎重だ。2010年春、1年生で公務員コースに入ったのはなんと120人、税理士コースは25人にも達している。これに加え、
通常の民間企業就職を目指す学生に、就職対策だけでなく職場実習やインターンシップまで盛り込んだ「CDP総合コース」も設置。1年生の半数がCDPに所属している。4年間の就職予備校と批判する人もいるだろう。だが、これがこの大学の生き残り方であるし、親、高校、社会のニーズはあるのだ。
しかし、友部、長久保両氏は冷静だ。「CDPはスーパーでいえば特売品のようなもの。先生方の教育こそが本道」という姿勢を崩さない。坂野光俊学長は、「CDPが特徴のうちは、本学はまだダメだ」と自戒を込めて語る。「昔は17時には皆帰ってしまったが、今は21時ごろまで学生が勉強している」
とも、しかし「大学とは、正しい答えがただ一つあるというところではない。CDPはあくまでも資格試験に合格するもので、いわば答えのある問題。答えのない問題に直面した時に、答えを見つけていく力は、CDPだけでは付かない。その能力は、正課で、ゼミで付ける」のだという。
「この現状に満足せず、答えのないものを見つけていく力を学生には身に付けてほしい。CDPもそのための一つではあるが、それ以上のものをこれからは教育で打ち出していく。見ていてください」(おわり)
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