プリンストン大学の独特の教育制度 |
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1)正月に実家でネットサーフィンをしていたら、「米国プリンストン大学における学部教育についてーその理念・制度的特徴・SFC への示唆ー」岡部光明2005 年というすばらしいレポートを発見したので、これを参考にプリンストン大学における教育の特徴を書く。
2)プリンストン大学は創立1746年で、アメリカで4番目に古い。キャンパスの面積は36万坪。大学院重視のハーバード大学などと違い、学部教育に重点を置いている。また一方で、小規模なリベラルアーツカレッジと違い、研究面でもトップクラスである。ノーベル賞受賞者は15人出ている。
3)プリンストン大学は、学部学生が約4600 名、大学院生が約2000 名で、アイビーリーグのなかで2 番目に小さい大学である。日本の大学でも学生数が7000人ぐらいの大学は多いが、プリンストン大学は、学部生は全寮制である。キャンパスの約1/3が学生寮地区となっている。
4)6600名の学生に対し、専任教員は850名もいる。実に教員1人対学生8人以下となる(SFC の専任教員数はプリンストンの八分の一の約100 名)。しかも、教員は全員が大学院と学部の両方を教えるので、学部での授業を担当しない教員はいない。
5)学費は高い。授業料・寮費・寮食費・学生会費等を合わせて1年間に41380ドル(約440 万円)ただし、必要に応じて給費奨学金(返済不要)、あるいは大学内での仕事の従事のいずれかまたは両方によってまかなえるようになっており、貸費奨学金(ローン)は廃止された。
6)プリンストン大学は学部教育が最優先で、教員には教育も研究も強く求められる。プリンストンの教員は研究と教育の統合は可能であるばかりか、研究を進めるうえでそれが真に必要であると考えている。教育とは学生と教員の相互活動であり、個人的かつ心から満足感を得られる活動であるとされる。
7)プリンストン大学の1年生は、15人クラスの「1年生セミナー」を受けるが、実施主体は学部ではなく各学寮であり、60種類ものテーマがある。討議、小論文作成、発表などが重視され、フィールドワークなどもある。
8)1年生全員に対して1学期間の履修を義務づける「論文執筆プログラム」がある。これは、論文執筆力の強化を図るもので、1クラスの人数は12 名以下と定めている。
9)「学習指導教員配置制度」は、全ての1年生に教員アドバイザー付き、履修科目および学習上のことがらにつきアドバイスを受ける制度で、学寮を中心に組織される。教員アドバイザーは1-2 年次だけで、3-4 年生は学科の教員がアドバイザーになるり、第3 学年論文や卒業論文を指導する。
10)プリンストン大学特有の制度として知られる代表的なものの一つは「Preceptorial system(プリセプト)」という、講義内容補完のための少人数グループ討議で、人文・社会科学の全ての授業で実施されている。週2 回の講義と週1 回のプリセプトで1科目が構成される。
11)各プリセプトの平均人数は12 名。たとえば330人が履修する「経済学入門」は25 のプリセプト(1つあたり約13名)に分かれている。プリセプトの指導は専任教員だけでは足りないので大学院生が入る。講義内容の復習的、関連した資料の輪読、特定テーマについての討議などをする。
12)プリセプト担当者は、事前に学生に対して討議テーマを知らせて準備を促したり、あるいは逆に学生から討議テーマを募ったうえでそれを決めるなど、事前のメールやり取りが相当なされている。大学院生が適切にプリセプトで指導できるようにするため、大学が彼らを訓練するための組織を作っている。
13)大学はマニュアル冊子を作成し、ウエブ上で提供。教員に対する教育方法の指導と改善、学生に対する勉学方法の指導、そして大学院生や博士課程修了者(プリセプト担当者等)に対する教育指導などをする組織を設置。大学院生と教員が一体化し、ともに学部学生の教育に取り組む。
14)プリセプトは、グループ内で緊密に討議をする場であり、学生は、講義内容をより深く理解することを議論することによって学ぶ。その科目が本当に自分のものになっているかどうかは、それを第三者に説明出来るかどうかによって判断できる。
15)プリセプト担当者は、その講義担当教員が行う全部の講義に出席すること、授業教材は全部読みかつ理解すること、そして学生のために自分自身のオフィスアワーを設けることが求められる。大学院生が学部生のためにオフィスアワーを設けているのである。
16)プリンストン特有の今ひとつの制度は「Honor system」と称されるものである。これは、全ての筆記試験は学生の正直(honesty)を前提とし教員による試験監督なしで実施する、という驚くべき制度である
17)プリンストンには、ウッドローウイルソン・スクールという、公共部門および国際問題を扱う学際的な学部がある。目玉科目は必修の「政策立案セミナー」である。政策のあり方を学生が能動的に探求する機会を与え、インタビュー、口頭発表、グループ研究、意思決定の訓練などの機会を提供する。1学年の定員は約90名。
18)政策立案セミナーは、毎学期約10 科目(コース)が開講される。3 年生は、秋学期、春学期それぞれ1 つのコースを履修する。3 年次に求められる第三学年論文はこの「セミナー」の成果として執筆し、4 年次の卒業論文の内容も通常はこのセミナーで扱うことと一体化したものになる。
19)一つのセミナーの定員は8 名程度。提示された問題の解決および政策立案に際し、履修学生はどんな領域の発想でも、あるいはどんな技法でも自由かつ弾力的に活用することが奨励される。各セミナーの会合は週1 回、長時間にわたって持たれる(すべて夜7:30-10:00)。
20)政策に関する調査立案の最終結果は、レポートとして取りまとめる。3 年生が執筆するすべてのレポートは、素稿の段階で担当教員が読むとともに、チーム(当該セミナーの履修者全体)によって討議され、必要に応じて内容が改定される。
学部生の数。ハーバード6650人、スタンフォード6705人、エール5319人、プリンストン4600人、コロンビア4376人。日本の名門私大も、本当はこれぐらいが適正規模なんじゃないか。
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