法政大学に学習ステーションができたので |
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(写真)法政大学市ヶ谷キャンパスの学習ステーション(撮影許可済)
1)法政大学の市ヶ谷キャンパスにこの春、「学習ステーション」なる部屋ができたので、さっそく見学に行ってきました。富士見坂校舎の2階にあり、教職員4人と学生スタッフが常駐しています。高校の教室ぐらいの広さの部屋です。
2)学習ステーションは、新入生サポート活動を行う場所です。大学での勉強で困った時、何をしたら良いか判らない時、学習ステーションを訪ね、教職員や先輩学生に相談ができます。思えば、なぜ今までの大学にはこうした場所がなかったのでしょうか。
3)学習ステーションは、4月だけ出張出店もしています。外濠校舎1階の学生センターの前にブースを出し、予約不要の「新入生サポーター活動」をします。先輩の学生スタッフが男女数人常駐し、新入生の授業やキャンパスライフの相談に応じます。すぐ後ろが学生センターなので、職員も近くに居ます。
(写真)新入生サポーター活動
4)学習ステーションの学生は、学習施設見学ツアーもします。これは、まるでオープンキャンパスの学内見学ツアーのように、先輩が新入生たちを連れて、大学の学習施設(図書館、スタディールーム、情報カフェテリアなど)をめぐる30分程度のウォーキングツアーです。
5)ポイントは、ただ校内見学をさせるだけではなく、キャンパス内で自学自習ができる設備を教えることで、新入生が自ら空き時間に勉強する場所を教えている点です。さらに、見学ツアー後は学習ステーションに戻って「振り返り」をします。
6)学習ステーションでは、「先輩トーク」というイベントも開催します。これは予約制で20名の新入生を集め、先輩たちが大学生活について、過去の体験談を話します。その上で、新入生は自分の大学生活を設計する上で聴きたい事、知りたい事を質問します。
7)学習ステーションの先輩学生アシスタントは、新入生が自ら学ぶ目的を設定し、学ぶことの意義を見出すまでの段階をサポートします。その結果、「学習の習慣づけ」がなされたかどうかが、成果として評価されます。
8)成果の客観的な指標として、学習ステーションを利用して、何人の学生がどれくらい「自発的な学習」を行ったかが問われます。そのために「ピアサポート」のシステムを導入し、学生アシスタントは、新入生をサポートする側でありながら、自分自身が目標を立て、自発的に学習することが求められます。
9)学生アシスタントは、自分が積極的に自学自習し、他者をサポートすることで、より多くの学生が学習行動に加わり、相互啓発のサイクルができることを目指すのです。もうひとつ、「アクティブ・サポート」というテーマを掲げています。これは、従来の他大学の事例を研究した結果、
10)ただ学習支援室を設置して黙って待っていても、新入生は誰もやってこないわけです。そこで、教職員や学生アシスタントが、自分たちから新入生に積極的に話しかけ、関わっていくことで、問題点の発見、解決につなげていきます。
11)学習ステーションは、「アクティブ・ラーニング」すなわち能動的な学習もテーマとしており、授業者が一方的に学生に知識伝達をする講義スタイルではなく、課題研究やPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)、ディスカッション、プレゼンテーションなど、能動的な学習を研究します。
12)「先輩トーク」も、アクティブ・ラーニングの一種であり、ただ黙って先輩の話を聴くのではなく、グループディスカッションを通じて、自己の目標達成のために必要な学習環境づくりをします。その過程で、ブレーンストーミングやKJ法を活用しています。
13)学習ステーションは4月の新入生サポートの時期だけ設置されるのではなく、常設なので、こうした取り組みは5月以降も継続されます。まだ今月できたばかりなので今は新入生サポートがメインの仕事ですが、今後は学習支援や授業改善などの取り組みも増えて行くと思われます。
14)学習ステーションの学生アシスタントは、ただ先輩として後輩の質問に答えたり、先輩風を吹かせるのが仕事ではありません。学生アシスタント発案型のグループワークのデザインをして、学習ステーションに提案することも仕事です。提案の実施は、学生を含めた企画委員会が審議します。
15)学生運動のころから、私の学生時代も含め、学生には、授業の改善について大学側に意見を言う機会が一切なかったことを考えると、こうしたFD活動に学生が参加できるということは、隔世の感があります。今までの大学は、学生の真摯に勉学したい思いに、応えてこなかったと言わざるをえません。
16)学習ステーションでは今後、学生アシスタントの提案による、学生主催のグループワークが盛んに行われていくものと思われます。こうした知見を今後、どうやって市ヶ谷キャンパスの多くの学生に波及させていくかが課題です。FDがサークル活動のようになっても、学生全体への影響は限られます。
17)学習ステーションでは、昼休みを活用した「宿題ゼミ」というものがあります。これは、「学士力向上」「単位の実質化」のために、学生の自習時間を少しでも延ばすため、毎週月~金の昼休みに、30分程度開催します。教職員の講師はその場で宿題の出題と取り組み方を説明します。
18)参加学生は、決められた期限内に宿題を提出し、講師の先生が添削します。宿題ゼミの定員は20名。レポートの提出期限は約1週間、講師の添削も1週間でします。単位は関係ありません。
19)対象となる学生は、1.学部のカリキュラムにフィットしないが、勉学意欲はある。2.何を勉強していいかわからない。3.そもそも、勉強の仕方を知らない という学生ですが、これはまだ予想にすぎず、今後、運営しながら改善を進めて行くそうです。
20)現状、月曜は英語、火曜は人文、水曜は社会、木曜はその他、金曜は就業力をテーマにした宿題ゼミが開講される予定です。年間18週×5回×20名で、約1800名の学生の学習活動の促進を行う予定となっています。以上は、学習ステーション長の木原章教授(経営学部・生物学)に伺いました。
21)「宿題ゼミ」で思い出したのが、新潟大学が昼休みに開講している「オナーズ・タイム」です。これは副専攻の科目を開講する正規の科目です。今の大学生にとって「昼休みに一人でランチ」というのは恐怖の時間であり、それが便所飯につながっています。昼休みに居場所があることは重要です。
22)名古屋外国語大学では、昼休みに、国籍や学年を超えた4人の学生がグループになり、「英語で」ランチやディスカッションを楽しむ時間が設けられています。これは学生の自発的な学習とされ、教職員が監視しているわけではありませんが、高い教育効果を生んでいると言われています。
23)大学の昼休みを、「一人で昼食をとる恐怖の時間」から、「自学自習、学習支援の時間」に変えて行く取り組みは画期的なものですが、まだ多くの大学にはほとんど普及しているとはいえません。多くの大学生は、授業の空き時間も学習のために有効に活用しているとはいえません。
24)法政大学の市ヶ谷キャンパスは、都心にありビルだけのキャンパスっぽいのですが、近年は学生が授業の空き時間などに自学自習できる環境が非常に充実してきています。自習室も富士見坂校舎や外濠校舎にたくさんできましたし、図書館には102名が使えるラーニングコモンズもできました。
25)今後は、現在はグルーバル教養学部、国際文化学部、キャリアデザイン学部にしかない学部図書室を、既存の学部にも設置できるかどうかです。それと、設備の改善だけではなく、少人数の授業を専門科目や教養科目で増やせるかどうかも課題です。経営学部のゼミ加入者が半分ぐらいというのもひどい。
26)FDに関わったり、学習支援ステーションを訪れて活動に参加する学生だけが、自発的な学習習慣を身につけられるのではなく、入学者全員にそのチャンスはあってしかるべきです。そのためには、新入生に少人数ゼミを必修化し、必ず先輩TAが入る形式にするとよいでしょう。
27)1年生のゼミ必修化や先輩TA・SAの活用は、立命館大学や近畿大学で実施されており、マスプロ私大だからできないということはないはずです。むしろ、関西に比べ首都圏の大学の方が遅れている印象もあります。今後、多くの大学でこうした取り組みが検討されることを望みます。(終)
(写真)ゼミごとに区切られた法学部の掲示板
(おまけ)
埼玉大学では、昼休みに昼食持ち込み可のセミナーを開催している。
http://p.tl/PLh0
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