国際日本文化研究センターの平松隆円先生@ryuenhrmt |
1)Twitterで出会った先生に会いに行くシリーズ。今日は国際日本文化研究センター研究員の平松隆円先生@ryuenhrmtです。1980年生まれですから私より2歳年下。どんどん若い研究者が活躍してきていますね。平松先生の専門分野はなんと化粧。化粧学で博士号を取得しました。
2)専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしています。2006年に財団法人日本繊維製品消費科学奨励賞を、2007年に佛教大学学術奨励賞を、2011年に第4回京都文化ベンチャーコンペティション日本経済新聞社賞を受賞。
3)大学の講義では、男性も女性も化粧をしている事実に気づかせ、外見の重要性や外見の魅力が内面の魅力につながっていること、化粧は時代の雰囲気に応じて秩序ある発展をした現象であり、社会や文化を発展させる歴史的原動力に対応していることを伝えています。
4)もともと佛教大学で生涯学習を学んでいた平松先生が化粧に関心を持ったきっかけは、関西ではファッション学の研究は盛んだが、化粧の心理学や文化史の研究者がいなかったことと、渋谷で女性の姿をしたギャル夫君を見て、なぜ男性が女性の格好をするのか興味を抱いたことでした。
5)化粧は女性だけのものなのだろうか。平松先生は学問としての化粧に関心を持ちましたが、そもそも化粧とは何かという研究は今まではありませんでした。海外にもないそうです。あくまでも社会心理学の一部として化粧を扱うなど傍流では取り上げても、化粧学という学問はなかったのです。
6)一般の人にとって化粧は、はやりすたりのある一過性もものです。しかし、平松先生は、化粧はコミュニケーションツールだと考えています。化粧は自分の印象管理をするものであり、歴史的にも、人類の歴史は装いの歴史でもありました。
7)平松先生の現在の研究テーマは「化粧規範」です。葬式の時はこんなメイク、人に会うときはこんなメイクといったものは、具体的に決まっているわけではないのに、漠然としたメイクのルールのようなものが存在します。これを心理学的に分析したりします。
8)たとえば先生が関心を持つきっかけになったギャル夫君ですが、その格好をしたほうがモテるからするという人もいました。化粧が対人魅力の効果をもたらしているのです。また、ギャル夫君は同類の女性に類似性や親近感を与えていることもわかりました。ただし美白系の女子には受けないそうです。
9)化粧は現代的事象に見えますが、歴史的には男性も化粧をしていました。さらには、スキンケアや歯磨きなども化粧の一種であり、私たちは誰でも、人に見られることを考えて化粧をしているともいえます。
10)平松先生は現在、化粧学を学問として構築していきたいと考えていますが、まだ学会を作るほど研究者がいるわけではありません。極端な言い方をすれば、化粧学者は平松先生しかいないわけです。これでは研究者同士議論もできません。先駆者の悩みです。
11)名古屋文化短大の授業で先生はいきなり学生に「人は見た目がすべてだ」と切り出します。文字通り受け取ってもらうのではなくハンマーセッションです。実際にはここから、印象管理や見た目のコミュニケーションの大切さといった話になっていきます。
12)化粧学を踏まえた授業といっても、「美人だからいい」ということではありません。自分の「見られ方」をどうするか、相手の立場を考えて、どうふるまえばいいのか、装えばいいのかという話に広がっていきます。化粧はコミュニケーションなのです。
13)「コミュニケーションのうまくとれない人は、相手が何を考えているかを表情から読み取れない」と平松先生はいいます。相手のことがわからない人は、自分も感情表現が豊かでないとも。女性は化粧のために毎日否応なしに鏡を見るため、男性よりも社交性があるそうです。
14)「外見を気にするのは、恥ずかしいことではない」と平松先生は言います。男も女も、もっと外見に気をつけるべき。外見はコミュニケーションでも重要なキーワードだからなのです。化粧は他者の存在が前提です。誰のためにしているのか、ということです。
15)平松先生の研究の中には、「マニキュアをすると感情がポジティブになる」というものもあります。男性もそうだといいます。ただし、化粧に療法的な効果があるかどうかは、まだ先行研究がないため研究手法が確立されていません。化粧学の先駆者である平松先生の研究は始まったばかりです。(終)
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