5/21 桜美林大学で流通ゼミと認知行動療法 |
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1)桜美林大学のオープンキャンパスで「模擬ゼミ」を見学してきました。模擬講義はよくありますが、ゼミは珍しいです。ビジネスメネジメント学群の多田慶幹ゼミで、テーマは「流通・マーケティング」。3・4年生のゼミの文献研究発表を高校生や保護者に見せます。
2)模擬ゼミは1時間弱しかないのえ、慌ただしく進みます。まず、先生がゼミとは何かを受験生と保護者に説明し、その後、ゼミ長に司会をバトンタッチします。ゼミ長の指示で来場者に参考文献の概要が配布されます。日本の流通史の本でした。
3)参加者が一通り資料に目を通したところで、司会のゼミ長に促されて、本日の発表者の学生が、参考文献研究のレポートを発表します。続いて質疑応答に移り、他のゼミ生たちから、発表者の学生に厳しい質問が飛びます。おそらくここは仕込みなのでしょう、かなり専門的な話になっていました。
4)学生同士の活発な議論を存分に参加者に見せた後、多田教授が最後にまとめます。教授は参加者に、「皆さんも大学に入るとゼミに入り、このように発表したり、論文を書いたりするんだよ」という話をしました。最後に多田教授は、ドラッカーの言葉を紹介しました。それは
5)「ネット社会になって情報はどこでも入手できる。そうなると大学の使命は、学問を通じての師弟関係に収斂されるのではないか」ドラッカー というものでした。
6)続いて、リベラルアーツ学群の山口創(はじめ)准教授の模擬講義「いやな気分よ、さようなら 認知行動療法のすすめ」を聴きます。かねてより認知行動療法には関心があり、早稲田で越川房子教授をインタビューしたこともあったので、私にとっては関心のあるテーマです。
7)認知行動療法は、最先端の心理療法であり、従来はうつ病は薬物治療で治していましたが、こうした抗うつ剤を使わなくても、同じぐらい効くことが証明されています。認知行動療法は、認知を感情(ストレス)の原因と考えるものです。
8)嬉しい、悲しい、怒りといった、私たちの感情は、何かできごと(A)があって、それが結果(感情)(C)につながりますが、認知行動療法では、AからCに至る間に、信念(B)が入ると考えます。うつになる人は、このBの部分が否定的に歪んでいます。
9)たとえば、「失敗したら人生おしまいだ」「皆は自分に優しく接するべきだ(→だからささいなことで腹を立てる)」という信念Bを持っています。そうすると、A失敗する→B否定的な信念→C負の感情へとつながっていくのです。
10)そこで認知行動療法では、この信念Bの部分をカウンセリングで治療します。つまり「どうせだめ」「人が自分を愛してくれない」という信念を持っている人に対し、「失敗しても次にがんばればいい」「周囲の人に必ず愛されないといけないのではなく、優しく接してもらえればいい」と変化をさせる。
11)具体的にはBに対しD論駁という方法でE効果的な哲学に導きます。ただしこれはアメリカでのもので、論駁に慣れていない日本人の場合は、論駁によってB信念を否定せず、やさしくカウンセリングしてEへと誘導していきます。カウンセラーは、Bの部分で患者が別の見方ができるように援助します。
12)つまり患者の信念B「自分はだめだ」→カウンセラーD「別の考え方ンもある」(別の認知、考え方ができるようにする)→患者「治療しなければC(最悪な展開)になるところが、E(少しはましな感情)になった」という効果を発揮します。薬物に頼らず、認知を変えることで、患者を治療します。
13)患者が持っている信念Bは、事実に基づかない、論理的でない、絶対的な考え方(自分は絶対に成功しないといけない、自分は絶対に愛されないといけない)、長い目で見て人を不幸にする考え方にとらわれています。人を不幸にする考え方とは、
14)「私が生きている状況は、私が望むものを望むときに与えてくれるべきである」「すべての人は私を公平に、正当に扱うべきである」「私はすべての人に愛されなければいけない」「私は完璧にやらないといけない」「私は絶対に成功しないといけない」というものです。これは人を不幸にする考えです。
15)これをイラショナル・ビリーフ(shoud思考)といいます。こうした考え方を持っているから、生きにくい。こうした考えを持っているから、負の感情が生まれやすい。世の中を呪ったり、他人を憎んだりして、自分の状況も悪くなります。うつのひとは0か100かで考えてしまい、結果0になる。
16)でも、現実の社会は0か100かではなく、60点ぐらいだったり、80点ぐらいだったりします。うつの人は、「完璧にできないといけない」「私は愛されないと行けない」と思うあまり、否定的な思考にはまり、結局は0「ゼロ」になってしまいます。100どころか、20点の結果も出ないのです。
17)これをラショナル・ビリーフ(wish思考)に切り替えます。これは現実的で論理的、絶対的ではない(第二希望もある、絶対に成功しないといけないと考えない、もっと合理的に柔軟に考えて、心の悩みやストレスを変えていく)、長い目で見て人を幸せにする考え方です。
18)ラショナル・ビリーフ(wish思考)は、自己実現を促進します。「できるなら立派にやりたい」「できるなら大事な人から愛されたい」「できるなら満足するものであってほしいが、必ずしもそうでなくてもよい。私の思い通りにならなくても、この世の終わりというわけではない」と考えます。
19)認知的技法の事例です。患者ができごとA「失敗し拒絶された」とする。すると信念B「私は失敗するべきではない、拒絶されるべきではない、だから失敗し拒絶されたのは、怖れるべきことである。私はどうしようもない人間で、これからも失敗する」という信念に陥ります、ここで治療です。
20)D1「あなたが絶対に成功しなければならないという証拠はどこにありのですか」D2「失敗することが怖れるべきこと、最悪であるのはなぜですか」D3「失敗することにあなたが耐えられないという理由は何ですか」
21)D4「あなたが悪い行動をしたという理由で、あなたが悪い人間だとどうしていえるのですか」D5「あなたが絶対成功しなければならない、というのはどこに書いてあるのですか」。一見責めているようですが、これは、患者に、自分が絶対正しいと考えていることに根拠がないと気付かせています。
22)「失敗した自分はもう終わりだ」という自分の考えが絶対に自分正しいと信じている患者に、もっと合理的な考え方があることを教える(論駁D)ことで、効果的な人生哲学Eへと導きます。この例の患者Aは、Bという不幸な信念を持っていましたが、論駁(治療D)でどんなEに変わったでしょう。
23)E「私は今回失敗した、将来も失敗するかもしれない」→「それは残念だ、不幸だ」→「しかし私は失敗を犯した人間であって、決してどうしようもないダメ人間ではない」→「さあ、私が将来成功するかどうか、もう一度やってみよう」という方向に導かれます。
24)応用ワザとして「ありがとう療法」というものがあります。これは、いやなことがあってもそれらをすべて「ありがとう」で解釈するものです。「私の講義を子守唄に熟睡してくれてありがとう」「こんなに夜遅くまで残業するほど仕事をくれてありがとう」と解釈することで、怒りを鎮めます。
25)実は「ありがとう療法」は、自分の置かれた現状が改善されていません。しかし、いやなことがあっても、それをユーモアに変えることで、自分の悩みやストレスを軽減することはできます。別の考え方ができることで、自分自身をカウンセリングするのです。
26)ストレスがかかったときに、原因を自分なりに別の考えでとらえてみる。そして自分の心の悩みやストレスを変えていく。認知行動療法には、こんな力があります。★以上は、私の聴いた模擬授業のメモを起こしたものにすぎません。認知行動療法に関心のある方は、専門書を読んでください。(終)
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