「丸の内朝大学」と「慶應MCC」 |
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(2011/7/5 07:27時点)
1)朝7時半の東京駅丸の内。まだ人影もまばらな時間に、新丸の内ビル10階の一室は活気に満ちている。一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(愛称:エコッツェリア協会)による「丸の内朝大学」の講義である。8時半までの1時間。出勤前の「朝活」に、この講座に通う人が増えている。
2)特徴的なのは、グループワークの充実により、参加者どうしが親睦を深めている点だ。一方的に講義を聴くのではなく、グループ活動や、ディスカッションなどを通じて、受講生全員が仲良くなれるようにしている。講義の開始前から教室では受講生同士の会話が弾んでおり、授業前の高校の教室のようだ。
3)受講生たちの職業はみなバラバラだという。多くがネットで朝大学を知って参加。勤務地も丸の内とは限らないが、新宿や品川など山手線内なら、授業の終了後でも十分通勤可能だ。
4)丸の内朝大学の講義メニューは、2010年秋は11クラス、定員は約700名。講義内容は「農業」「ヨガ」「温泉トラベルプランナー」「写真」など。参加者どうしは受講の過程で名刺交換をしたり、ランチタイムや夜の飲み会などで自然発生的に集まって仲良くなる。
5)丸の内朝大学の盛況により、丸の内地区で朝食時からオープンする飲食店や喫茶店も出て来た。大学側ではこれを「学食」と呼んでおり、提携して受講生には一品付けるなどのサービスもある。
6)一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(愛称:エコッツェリア協会)は、三菱地所など97社の出資で開設された環境戦略拠点。大丸有とは大手町、丸の内、有楽町のことで、丸の内の再開発に会わせ、環境配慮型の街づくりをするにあたり、
7)朝型のライフスタイルを提案して夜間電力の節約をしようという観点から、準備期間や単発イベントを経て、2009年4月から正式に朝大学として発足した。
8)朝の1時間でできること、をテーマにして科目を決めており、あえてビジネスに直結しない、楽しくできること、しかも社会的に関心の高いテーマを集めた結果、健康や自然、農業、地域づくりなどの内容が多くなった。参加者の7割は女性で30代が50%。丸の内に勤務しているのは3~4割。
9)参加者同士の交流が盛んで、コミュニティ化が進んでおり、受講生の満足度は高い。クラス委員を決めたり、全員参加の卒業式があり、卒業生が自分たちで卒業式の内容を企画運営するなど、手作り感にあふれている。講義は週1回だが、メーリングリストがあり、受講生同士の活発な交流を促進している。
10)朝大学に来ることで、朝の時点で自分の欲求が満たされ、楽しい気持ちで1日がスタートできる。受講生同士では、会社の同僚や学生時代の友人とは言えない話ができる。卒業してもクラスやグループごとに朝集まるようになったなど、多くの受講生から好評の声があがっている。
11)同じ丸の内の三菱ビル10階にあるのが、慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)。こちらは2001年から開講している。慶應義塾大学ではなく、大学100%出資の子会社である株式会社慶應学術事業会による運営だ。
12)三菱による丸の内再開発の中で、「ビジネスマンが学べる場を」という声によって設置された。こちらはほとんどの講義を夜間と土曜日に開講している。
13)教養系の講座もあるが、ビジネス系プログラムが充実しているのが慶應らしいところで、「経営戦略─成長のための戦略志向」「実践M&A講座」などのビジネス系科目は年間70~80本開講。こちらは6回の講義で15万円とやや高めだが、高い人気を誇り、企業派遣が半数を占める。
14)ビジネススクールの1科目だけを受けられるようなシステムだが、修士号など学位の取得は目的としていない。社会人は、すぐ役立つスキルや技術も重要だが、それ以上に、深く考える機会や場所が欲しいという切実な声があるという。
15)職場と社内研修のほかに、第3の場(サードプレイス)として、外部の異質な人との出会いと議論の場として機能している。ビジネス系のプログラムは1コマ25人まで。ゼミ形式の授業では、活発な議論が交わされる。教室も机やイスが可動式で、輪になって授業ができる。
16)大学院に通うには時間的、金銭的負担が大きいが、ここで1科目だけ学ぶのはそれよりもハードルが低い。各講座にはそれぞれメーリングリストがあり、ネット上でも受講生どうしが議論をする。修了後も受講生同士の付き合いが続き、10年近くも自主的な飲み会や勉強会を続けている例もある。
17)慶應MCCは、授業の水準はMBA並みで、好きな科目だけを取ることができる。講座は企業の社員研修や、新入社員研修などでも活用されている。さらに、必ずどの講座も、1回は懇親会をする。ネットワークづくりを戦略的に進めているのである。
18)「丸の内朝大学」「慶應MCC」はどちらも、正規の学士号や修士号が取得できる大学ではない。しかし、朝や夜の好きな時間に1科目から学べる点、受講生同士が親睦を深め、仲間づくりができるシステムを意図的に構築している点は、学びたい社会人にとって、かゆい所に手が届く仕組みだ。(終)
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