高校生に社会人基礎力を教える中京大学 |
高大接続の現在 (高等教育研究) (高等教育研究 第 14集)
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1)高大連携というと、大学教授の講義を高校生が聴く物が多いが、中京大学では、キャリアセンターの職員が高校で「社会人基礎力」について講義をする「キャリアデザインプログラム」を実施している。
2)大学教授の授業自体に価値がないわけではない。しかし、多くの高校生は、「自分がどうしたいかわからない」のであり、「もう自分なりの答えを見つけてしまったすごい人」の話を聞いても、ピンとこない高校生もいると思われる。なぜなら、
3)高校生の現状に対する高校教員の現場の声としては、「基礎学力習得に対するモチベーションが上がらない」「主体性が見られず、こちらから促さないと勉強に取り組まない」「高校時代の勉強が社会でどう役立つか教師が的確に説明できないので基礎学力の重要性が伝わらない」
4)「大学進学や就職といった、将来の進路に対する考え方が甘い」「受験不合格など、決定的な事実に、直面してからでないと行動できない(気づけない)」などの傾向がある。こうした生徒に、一方的に大学の情報を提供するだけでは、進路選択の参考にならないのかもしれない。
5)そこで中京大学が高校で行う「キャリアデザインプログラム」では、基礎学力習得をはじめとした高校での取り組みが、どう社会人基礎力(社会が求める力)の獲得につながっているのかを理解させ、生徒が自分の将来像をイメージするきっかけと方法を伝えるべく、
6)このプログラムを開発し、主に高校1・2年生と保護者に、2010年度は愛知・岐阜・三重・静岡の約40の高校で講演会を実施した。重要なのは、中京大学の宣伝だけをするために訪問・講演しているのではないということである。
7)プログラムは、1回の講演と3回の授業の2つで構成される。3回の授業はどれか1回だけでもいい。費用は無料で、指導用マニュアルも高校教員に提供される。まずは講演「キャリアデザインから進路を考える」。これは70分の講義で、中京大学のスタッフが講師を務める。
8)大学は「どこに入ったか」ではなく、「何に主体的に取り組み」「その結果何を獲得したか」が重要。そのような「自分づくり」を「キャリアデザイン」の観点から考える。同時に、高校での基礎学力の習得が、社会が求める力(社会人基礎力)に繋がることを解説する。
9)講演の流れ、①キャリアとは、キャリアデザインとは ②社会人としての前提(健康、ストレス耐性、読み・書き・数学) ③社会人として必要な力(社会人基礎力)主体性・実行力、課題発見解決能力、コミュニケーション能力 ④大学で身に付く力・大学での学習スタイル(「受動的学習」から「能動的学習」へ)
10)⑤企業の採用手順および採用する際の重要項目(エントリーシート、SPI、面接)企業の採用重視項目(基礎学力、専門知識、社会人基礎力[アクション・シンキング・チームワーク]など)。企業の採用の話まで高校生にするのは斬新だ。
11)⑥学部・学科(文理)選択のポイント(教科の得意・不得意を学部選びに結び付けない。職業や学部・学科をイメージだけで判断しない。安易に友達の進路に付き合わない)⑦まとめ(主体的に勉強する、沢山の経験をする、同世代でない人とコミュニケーションをとる)
12)続いて、高校の先生による授業「社会人基礎力育成プログラム」(50分×3回)。この特徴は、中京大学が講師を派遣するのではなく、資料提供をして、高校教員が授業をする点である。①自分の価値観だけで判断しない練習(BtoC企業からBtoB企業への視点の切り換え)続く
13)学部学科選択時の教科の得意・不得意やイメージだけで判断しないなどの内容を深く掘り下げる授業。②社会人基礎力を学び、その効果・効能について実感する授業 ③社会人基礎力水準を確認して目標設定する授業。の3つ。
14)講演後は、穴埋め形式のミニ課題を解かせ、さらに感想を書かせるほか、その後に、講演要約を配布し、高校生に知識を定着させるのみならず、自分で考える力をつけるきっかけを与える。
15)中京大学の高大連携授業の取り組みが、すべての大学に参考になるとは限らない。他大学がマネしてもしょうがない。重要なのは、各大学が自分たちの立ち位置を自覚し、高校生にとって最適な高大連携プログラムを独自に開発し、提供することだ。(終)
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