長岡大学の過激な中退防止策(後編) |
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(写真)長岡大学の大学案内に掲載された学生カルテ
1)授業の改善に加え、長岡大学が打ち出したのは「マンツーマン指導体制」だ。2005年度から導入され、「優秀な子だけではなく、キャンパス内で寂しい思いをしている子ほど面倒をみるべきだ」という理事長の思いから始まり、1年生から4年生まで全学年でゼミを実施。
2)ゼミの定員は1ゼミ10人ほど。この場で、専任教員が丁寧に、学生の悩みごとなどを聴き、相談に乗る。多くの大学には学生相談室があるが、本当に悩んでいる子は、自分からは話しづらいので来ない。それを、普段のゼミの中で、サポートしようというものだ。
3)ゼミの教員は、学生1人1人の、アルバイトや勉強、学生生活、家庭のこと、サークル、経済事情、就職の悩みまで相談にのる。もちろん、制度化しての導入には、「なぜ研究者がここまでしないといけないのか」という教員のものすごい反対があった。
4)こうした人は、きっと知らないのだ。イギリスのオックスフォード大学では、学寮(コレッジ)ごとのチュートリアルと呼ばれる個人指導の授業が、1対3や1対5で行われているということを。http://p.tl/w5Td むろん、同じだとは言わないが。
5)さらに長岡大学では、ゼミの教員は、毎月、全学生の「カルテ」を作る。これは、学生自身が将来の目標や生活態度などを書く「自己発展チェックシート」と、教員が出席態度やアルバイト事情、学生の悩み事などを書く「マンツーマン指導カルテ」からなる。
6)カルテは、当然ながら全学生分存在する。これを、全教職員が見る。そして、就職指導や、悩みを打ち明けにくい子へのサポートなどをする。学年が上がり、ゼミが変わる時は、次の教員に情報を引き継いでいく。
7)長岡大学の受験生向けパンフレットの文言はストレートである。「フリーター、ニートにさせない」「全員就職を目指す」。同じような偏差値なのに「グローバルな人材を育成」と言っている大学とは、まったく目線が違うことがお分かりいただけるだろう。
8)広田教授は、「学生の退学は、教員の責任です。学生の悩みがつかめなかったのですから」とまで言う。本来なら、辞めなくて済んだはずだ。だから、辞めたくなったことは、教員がじっくり話すべき。教員に言えないのなら、職員に話してくれてもいい。
9)「せっかく入学した大学なんだから、一人たりとも辞めてほしくない。全力で激励して指導する」(広田教授)。広田教授は同様に、「就職できないのも、教員のせい」とも言う。実際に、熱愛ある教員のゼミ生は就職率が高く、教員の指導の力量の格差が出る。
10)同大学の2011年3月卒の就職希望者の就職利中は87%と、ふるわない。だが、卒業生の就職率は8割に達しているそうで、これは多くの大学を上回る。一人ひとりの学生に目を配らなければ、こうした高い数字を出すことはできない。
11)ただ、原学長は、「ここ数年の学生を見ていると、活力を感じない」と懸念する。就職活動も、2、3社落ちると活動をやめてしまう。内にこもってしまう。「面倒見良く話を聞いてあげるだけではだめだと感じている。やさしいだけではいけない」(原学長)
12)リーマンショック、震災と悲劇的要因はあるが、実は求人はそれほど減っていないのだという。就職先はあるのに、学生たちは受けようとしない。なぜ、学生から元気がなくなってきているのか、これは全国的な現象なのか。
13)長岡大学では、就職委員会で、こうした学生の就職対策を練っている。1年生からの動機づけ、就職の意識を高める方法などを検討し、様々な手を打っている。
14)中退率は大幅に下がったが、実は就職実績はそれほど好転していないし、何より志願者はそれほど増加せず、定員割れが続く。入学者は5年連続増加し、かなり持ち直してきた面もあるが、大学のブランド力の向上は頭打ちに到達した感じだ。
15)「高校に飽きられてきていると感じている。新鮮味がない。今までは様々な改革が高校側に歓迎され、評価もあがり、ファンが増えてきた手ごたえがあった。だが、今後は今までとはまた別のPRをしていかなくてはいけなくなってきている」(原学長)
16)教職員の意識改革、そして、学生たちのマナーが良くなって、マイナスからゼロに戻った感のある長岡大学。次は、ゼロからプラスにしていく戦いだ。地域の評価を上げ、受験生が集まる大学にしていくためには、さらなる改革を迅速に進めなくてはいけない。(了)
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