『東大秋入学の衝撃』まえがき公開 |
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(2012/11/6 10:20時点)
はじめに
この本を読めば、なぜ東大が秋入学を導入するのかが分かる。
いつから、東大は秋入学になるのか。
受験生や、親はどうすればいいのか。
企業や社会には、どのような影響があるのか。
秋入学に、課題や問題点はないのか。
すべて、本書で答えている。
読者の皆さんの中には、すぐにでも東大が秋入学になり、日本中の大学がそうなると思う方もいらっしゃるかもしれないが、事実は違う。
東大が秋入学になるのは、早くても5年後、2017年秋だ。
とはいえ、2012年秋の時点で中学2年生の諸君は、秋入学一期生になる可能性が高い。先輩たちと違い、2017年3月31日に中学校を卒業しても、翌日から大学生というわけではない。入学は9月1日だからだ。
一体、4月から8月の丸々5か月も、何をしろというのか。それが、「ギャップターム」と東大が名付けた、いわば猶予期間で、海外留学をしたり、ボランティアをしたりして、視野を広めるのだという。
また、全国の他大学が秋入学になるのかというと、それも違う。
まず、京都大学は相当に慎重である。その代わりに、ペーパーテスト重視の従来の大学入試に変わる、「京大方式」という、新しい入試を一部で導入するとしている。
早稲田は秋入学ではなく、1年を4学期にした「クオーター制度」を一部の学部で導入を検討している。
こういった状況で、なぜ東大は、急に「秋入学」で騒ぎ始めたのか。
それは、経済界が唱える「グローバル人材」と深いかかわりがある。今までの日本の大学の教育システムでは、グローバル化する社会の変化に耐えられない、グローバル人材を育成できていないという批判が、大学の内外から上がり始めたのだ。
特に東大は、「日本で一番頭のいい高校生が集まる」という構造が、多様性のない、均質な組織を作り出してきたことは、疑いようがない。
その進路も、官僚か有名企業に限られがちだ。さらには、日本人だけという環境は、グローバル人材に相応しい国際感覚や、異文化理解の妨げになっていると、東大は考えている。
日本社会の各方面でリーダーとなる東大生たちが、どんな教育を受けているのか、そして、これからはどんな人材に育っていくべきなのかは、我々一般国民にとっても無関係ではない。
前述のように、現在中学2年生以下でこれから東大を目指す家庭には、むろん直接関わってくるが、実はそれだけではない。
東大が秋入学になれば、優秀な学生の争奪戦をしている他の大学も必然的に対応に迫られる。そのなかで、教育システムの変更が行なわれる可能性があり、すでにその動きはある。すべての大学が、何らかの形で巻き込まれるのだ。だから、「わが子は東大を目指さないから関係ない」とはいかないのだ。
また、受け入れる企業側も無関係ではない。
東大秋入学以降の世代は、入学後の教育システムが変わることが予想される。したがって、彼らが新入社員として2021年(飛び級などがあればそれより前もあり得る)以降入社してくるまでに、企業側にも変化が迫られるであろう。
私は今回、東大秋入学の本質を理解し、それを読者と共有すべく、本書を記すことにした。
マスコミに出る秋入学のニュースは断片的だし、大元の東大が出している情報は、官僚のお役所文書のような理解しづらい内容であり、これを理解するのは難しい。
そこで、これらの情報を分かりやすく紹介しつつ、その意義や課題を論じ、さらには私たちが今後どうすべきかを提言したものが本書である。
ただし、東大秋入学に関する動きは日々変化している。
そのため、本書で参考にしたデータや情報、ならびにそれに基づく考察などは、2012年●月現在のものであることを、お断りしておく。
最後に、今回、東大秋入学の本を書くにあたり、東大の教授や学生たちを取材し、その成果を盛り込んでいることを、申し添えておく。
山内太地
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