11/25 東大駒場祭 長谷川寿一 教養学部長講演「東大のリベラル・アーツ」 |
東大の学部生数は1万4千人、院生が1万4千人、専任教員が4千人。
東大の入学者数は、戦後は2千人からスタートし、最大時で3500人(第二次ベビーブームの頃)、今は3100人。
女子が2割を超えない。今は17%で下がって来ている。東大としては残念だ。
出身校所在地。H22年度合格者3109人中、東京都が1010人、東京以外の関東568人。半分以上は首都圏。意外と全国区ではない。近年、東京、関東が増え、地方が減り、多様性と言う意味では好ましくない。首都圏の受験秀才が増えている。2012年度は岩手県からは3人しか来なかった。震災の影響もあったのだと思うが、このままで良いのか。東大に入るには、特別な受験のスキルが必要になってしまっている。
東大生の志望動機(アンケート調査・複数回答)
1位 社会的評価が高いから 51.4%
2位 入学後に学部の選択が可能だから 44.2%
3位 私大より授業料が安いから 41.5%
5位 スタッフ・設備が優れているから 28.2%
──あんまり教員は期待されていないのかな、とちょっと思ったりもします。
進学振り分けは「Late Specialization」。遅い専門分化が魅力である反面、点取り競争になる、第二の受験という批判はあり、現在検討中である。前期が6つの類で、後期の専門教育が10学部。この前期が東大のリベラルアーツ教育である。
どんな授業科目があるか、大きく3つ。主題科目、総合科目、基礎科目。
基礎科目は外国語、情報、身体運動、基礎演習(文系)、基礎実験(理系)、社会・人文・方法基礎(文系)、数理・物質・生命(理系)など。
総合科目はA思想・芸術、B国際・地域、C社会・制度、D人間・環境、E物質・生命、F数理・情報で、これがリベラルアーツの中核。基礎科目と総合科目は大人数講義。
主題科目は小さなクラス。テーマ講義、学術俯瞰講義、全学自由研究ゼミナール、全学体験ゼミナールなど。
2010年度
夏学期 冬学期
主題科目162 129
総合科目524 393
基礎科目889 760
合計 1575 1282
2800科目という教養科目を提供しているのは東大だけ、日本一。
私が大学には行ったのは1972年。昔は人文、社会、自然と決められていたが、1990年代に自由化された。日本中の大学で一般教養が衰退した。旧制高校3年+旧帝大3年で6年で学んでいたのが、戦後は4年に圧縮された。1年生から専門を学ばないと間に合わない。それで自由化した。90年代に、リベラルアーツ教育、教養教育はペチャンコになってしまった。東大は全員が教養学部に所属するのでダメージが少なかった。今はリベラルアーツが全国の大学で復権しつつあるが、まだまだだ。
2800科目もの科目を、専任教員380人が教える。これも全国一の規模。数年前に聞いた話だが、九州大や名古屋大では、一般教養の教員が足りず、専門学部の先生を引っ張り出したが、彼らは教養科目を片手間でやっている。うちはしっかりやっています。
アクティブ・ラーニングも重視している。日本の大学全体で、教えるTeachingつまり先生が教えて、学生が受動的に聴くスタイルの授業から、学生がいかに自ら学ぶかLearningに変わってきた。学生による主体的な学びだ。東大教養学部も、アクティブラーニングを重視した教育改革をしている。
Input(資料、データ、映像、情報)
↓
Transform(比較、分析、批評、評価、判断、問題解決、統合)
↓
Output(発表、レポート、公開)
どうやってデータを取って来るのか、どう仲間と一緒に考えるのかなどが大事。
これまでは、先生が授業をやって、学生がノートを取る、1対多。
教師対学生のつながりから、学生同士での学びへ。
教室の構造も変わってきた。駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)という部屋ができた。
http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/
ALESSという科目も作った。Active Learning of English for Science Studentsという。1年生の理科生全員を対象とした英語の必修講義の一つで、英語の科学論文を自ら1本書き上げ、その論文についてプレゼンテーションを行う。
1.自分で課題を設定する。
2.簡単な実験や調査を行う。
3.英語で論文を書く。
4.英語で発表する。
学生同士が2人一組になり、互いの論文について気付いた点を指摘しあい(ピア・レビュー)、担当教員からのアドバイスも参考にしながら、自らの論文を推敲する。先生は全員ネイテヴィブ。授業は全て英語で行われ、学生同士で議論をするとき、授業外で教員から指導を受けるときにも英語を用いる。KWS(Komaba Writers' Studio)では、大学院生のチューターからマンツーマンでライティングの指導を受けることができる。2013年4月からは文系も必修でこうした科目をやります。任期制の若い外国人教員も増やしました。
これからの授業は、先生の力量が問われるようになる。教養学部の行動シナリオは国際化、高度化、新たな教養教育の開発など。教養は文化に関する広い知識。今の東大生は読書量が絶対的に減っていると感じる。ライティングの力もない。SNSをやったり、受験勉強ばかりだからだろうか。高校までの生活に余裕が無いと感じる。(終)
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