広島修道大学の強さの秘密に迫る |
2012年12月23日に広島修道大学で開催された「入試直前対策講座&相談会」をこっそり訪問。中四国地方随一の文系私学である同大学の強さの秘密を探ってきた。ちなみにこの会の来場者は629名の高校生だったそうだ。高校生対象の直前対策講座では、河合塾の講師による「センター試験+修大一般入試同時攻略」を行い、同時開催の保護者対象講演会では、学長やキャリア担当職員、学生らが大学の魅力やキャリア教育、在学生からみたキャンパスライフについての講演を行い、100名を超える保護者が参加した。教職員および在学生による相談コーナー、資料コーナーも設置されていた。
この会に出席した私が印象に残ったのは、学生の講演で、広島修道大学は、中国地方各県にある国公立大学に落ちた学生が、不本意入学してくる大学であるということ。大学側はそれを熟知したうえで、学生をエンカレッジするようにしている。すなわち、就職での逆転だ。
なので、まず、2011年度の就職状況を強調する。就職率90.6%、求人件数3382社、そして、金融・保険業界に毎年100名以上が就職(2011年度は109名)をトップに宣伝。広島銀行、山口銀行、伊予銀行、野村證券、大和証券、東京会場日動火災保険など。地元金融機関名を先に出すところがポイントだ。
中四国地方の企業からの厚い信頼。中国5県に本社のある企業において社長就任数 中四国私立大学でNo.1の523名(朝日新聞出版『大学ランキング2013』)。市川学長は、松山大学より多いというのを保護者に強調していた。(ただし中国5県の数字で四国を除いている)
そして、充実したキャリアサポート体制として、ガイダンスやセミナー、大都市圏就職ツアー、キャリア支援講座(2012年度は51講座)、難易度の高い資格取得者に奨学金給付、資格取得表彰制度などがあることを強調する。
公務員に強いことも積極的にPR。2011年度は129名が合格。こちらも毎年100人以上を強調。2011年度は国Ⅱが12人、広島県1人、広島市5人、地方公務員15人、警察官34人、消防官21人、教員21人など。公務員試験対策講座にも力を入れ、学生が切磋琢磨する専用自習室があるほか、模擬試験・2次試験対策までフォローする。
首都圏や関西のマンモス私大への流出を防ぐためには、小規模授業の充実を強調。2011年度開講科目のうち、68.1%が35人以下で、大人数講義が少ないとPR。100人以上の講義は12.5%だけ。専任教員1人あたり学生数は34.8人。ライバルの小規模校潰しとしては、図書館に約76万冊の本があるなど、逆に自分たちの大学が大きいとアピール。ピアサポートやPBL、卒業生との交流など、学生の活動が活発である点なども「大きい大学のメリット」として訴える。国際交流も、海外提携校数 中四国私大No.1(10カ国23大学)、2011年度は170名の学生を海外に送り出した。と、全国的にはともかく、中四国私大No.1を強調しまくる。
修大版キャリア・ポートフォリオ(ShuP)の導入
http://www.shudo-u.ac.jp/career/careergp2010.html
卒業生キャリアサポーター(CS)の募集
http://www.shudo-u.ac.jp/career/9q87990000000ltg.html
さらに、「広島修道大学の魅力10」という、とてもわかりやすいパンフレットを配布。こちらからダウンロードもできる。
http://www.shudo-u.ac.jp/information/8a2171000003l6lm.html
魅力1 社会で活躍する多くの卒業生
社長就任数が中四国私大でNo.1であることをとにかく強調。公務員、金融に強いことも。
魅力2 高大接続・入学準備教育/高大連携
中学、高校、PTA、地域の方向けの大学見学、模擬講義、公開授業などをPR。
魅力3 初年次教育「修大基礎講座」
1年生は1クラス20~30人の「修大基礎講座(前期)」「初年次セミナー(後期)」が必修。
魅力4 資格取得支援
約60の資格取得支援講座を毎年約700名が受講。キャリア・サポート・ラボという専用自習室を完備。
魅力5 インターンシップ
2011年度は45社に89名を派遣。地元自治体や金融機関が多い(就職を強く意識していると思われる)。中国での海外インターンシップもある。
魅力6 地域つながるプロジェクト
地域の課題発見・解決をするプロジェクト学習を実施。地元の人との熟議なども。
魅力7 サークル活動
2012年度のサークル・団体数は105。
魅力8 学生活動
キャリアやピアサポート、学生広報、オープンキャンパス、PC補助、震災ボランティアなど。
魅力9 国際交流
世界10カ国23大学と協定。2011年度は172名を派遣し149名を受け入れ。2013年からは米国でサービスラーニングを実践。
魅力10 奨学金制度・表彰制度
各種奨学金制度を充実。スカラシップ制度も実施。大学独自の奨学金が11もある。
まとめ 私が感じる広島修道大学のうまい戦略
1.国公立大学に落ちてきた学生を、巧みに励ます。
2.金融と公務員に強いのを特に強調。
3.都市部のマンモス私大に対しては小さい大学であることを、近隣のライバル大に対しては大きい大学であることをアピール。
4.中四国私大No.1と言い続け、受験生や保護者に刷り込んでいく。とにかく中四国の受験生に特化した宣伝。
宣伝がうまいだけではなく、教育も就職も本当に努力して向上し続けている。そして、全国的な評価は捨てている。とにかく、中四国の賢い受験生を確実に獲ること。これが私が感じた広島修道大学だ。地方私大としては卓越して上手だと思う。そして同時に、近隣に数多ある文系私大は、相当に厳しいと思う。
ツイート
←読後にクリックをお願いします