2012年3月 イェール大学見学 |
続いてイェール大学。プリンストンから列車で1時間半、ニューヨークに行き、ここからさらに列車で1時間半。ニューヘイブンに着く。あいにくの雨。駅に迎えに来て下さった斉藤淳先生の車でイェール大学に向かう。イェール大学といえば、この伝説の紹介動画を思い出さずにはいられない。
That’s Why I Chose Yale(YouTube・音が出ます注意)
http://www.youtube.com/watch?v=tGn3-RW8Ajk
イェール大学(Yale University)は、コネチカット州ニューヘイブン市の私立大学で、1701年設立。米国ではハーバード大学、ウィリアム・アンド・メアリー大学に次いで3番目に古い。アメリカ東部の名門大学群アイビー・リーグ8大学のうちの1校。US NEWS RANKINGSでは毎年ハーバード大学、プリンストン大学と共に3位以内に入る。ロー・スクール(法科大学院)はハーバードを超え全米最難関として知られる。学生数は学部、大学院合わせて約11,000人。
【画像4】イェール大学は、あいにくの雨。ハークネスタワーと私。このタワーからは毎日夕方5時にカリヨンの生演奏が響く
斉藤先生のクルマで、雨のニューヘイブンをドライブ。イェール大学のキャンパスはニューヘイブンの街の中に広がっており、非常に広いので、理工系キャンパスやメディカルキャンパス、MBAなどはクルマで回っただけで、メインキャンパスに戻り、イェール大学のシンボルであるハークネスタワーや、1年生が全寮制で過ごし、授業を受けるオールドキャンパスなどを見学。全米2位の規模といわれる巨大なスターリング図書館の中にも入った。
この図書館の中には、学生が学期単位で予約できる自習ブースがあった。他にも、学部生が主に使う図書館では、ラウンジや売店、飲食コーナーなどもあり、おしゃべりもできる。みんなノートパソコンを使っている。アメリカの大学生は行儀が悪く、机に足を乗せたりしている人が多いが、大学側は黙認している。そういう文化なのだろう。
イェール大学は年間の学費は高いが、高い学費の元は取れていると斎藤先生は言う。「学生1人あたりに、授業料の2倍のお金をかけている」のだと。2兆円の基金があり、運用益だけでその1割の2000億円に達する。こうしたお金はファンドマネージャーが運用している。
教員は学生のアドバイザーを務める。斎藤先生もフレッシュマンの1年生4人を抱えている。アドバイザーの教員用のハンドブックやウェブサイトもあり、学生の家庭環境などの情報を共有する。1年生には4年生のシニアカウンセラーも付く。2年生では自分でアドバイザーの先生を選ぶことができ、3年生からは学科長がアドバイザーとなる。
「私が出た上智大学英語科では、1年次の初年次教育が良かった。イングリッシュ・スキルズという科目」(斉藤先生)
音楽ホールを見学。超豪華。中で学生たちがオーケストラの演奏をしていた。貴重書があるバイネキー図書館を見学。巨大な本のタワーが圧巻。専門家の教員による一般向けの市民講座が開講されており、終了後は同じ場所でワインパーティーが開催される。
【画像5】バイネキー図書館の巨大な本のタワー
街角には書店とカフェが合体した店がある。イェール大学は生協を廃止し、代わりに大学の周囲の土地を買って、そこに店などを誘致した。かつては治安が悪い町だったが、大学のこうした努力で改善が進んだ。ただしニューヘイブンは近代的な都市計画には失敗しており、町の真ん中に高速道路を通したり、巨大な立体駐車場を作ってしまった。富裕層は郊外に流出。現在は景観保護に力を入れており、大学も見た目は古い校舎が立ち並んでいるが、地下に巨大なホールや教室があったりする。図書館も地下が巨大だった。
小学校は23~24人に教員が2人。イェール大学に近い公立小学校は、大学関係者の子弟が通うので州で3番目に頭がいいという。今夜宿泊する学生寮に到着。くつろぎのラウンジのコモンルームが超豪華で、ピアノが置いてあるが、ちょっとやってきてピアノを弾き出した男子学生が、ピアノが超絶うまく、本当にすごい学生が居ると感じた。寮の学食で夕食をごちそうになる。プリンストンと同じバイキング形式。
イェール大学にはライト(さんの)フェローシップというものがあり、日本に研修に行くというと500万円出してくれたりする。中国やベトナムにも行ける。
どう学んでいけばいいのかを教員が導くしくみがある。寮のルームメイトに相談したりもできる。
崎山俊樹(さきやま・としき)さん。3年生。歴史メジャー。主に日本史、東アジア史、ロシア史を学んでおり、日本史は明治など近代が中心。世田谷の学芸大附属高校出身。小学校5年生から中学3年生まではニューヨーク郊外にいた。英語よりも日本語の方が得意。
崎山さんは多様な環境、国際的な環境で学びたいとイェールを選んだ。学費の7割近くを奨学金でもらっているので、日本の私大ぐらいの学費しか払わなくていい。SATは市販本を新宿の紀伊国屋で買って、自分で勉強した。TOEFLiBT100点は中学の時の経験で楽に到達。先生の推薦状をもらった。エッセイは高校生の時に代表団として中国に行った話を書いた。エッセイは父親に添削してもらった。塾などには行っていない。グルー(バンクロフト)基金という、リベラルアーツの大学に入れようという留学支援の人たちにエッセイを添削してもらった(限られた名門高校にしか来ない)。質疑応答では、「イェールに入りたい理由を50字で説明しなさい」などと訊かれる。エッセイは500字~1000字。
イェールの入試はレギュラーとアーリーがあり、崎山さんはレギュラーだったので、12月締め切りで4月1日が合格発表。万が一イェール大学に落ちてしまうと行くあてがなくなるので、とりあえず一橋大学法学部に入っておいた。ハーバードの小林君と同じ方法。しかし一橋の授業には出ないで自動車学校に通っていた。日本の大学は形式的な授業をしていると思う。学生は後ろに固まり、先生は前でブツブツしゃべっている。良い先生もいるが、個々の先生のスキルに左右されすぎ。
8月末で一橋を休学し、イェールに入学。一橋は250円で休学できる。シルマンカレッジという寮に住んでいる。4人部屋で、寝室は2人部屋。4年生は1人部屋に住んでいる。好きな科目が取れる。アドバイザーはあんまりアドバイスしていない。1・2年生は何を勉強したいのかを探せ、という感じで、僕は政治経済学を学んだ。
崎山さんの1年生の1学期(秋学期・前期)。4科目取って1つ落とした。覚えているのはスペイン語とロシア文学の科目を取ったこと。イェール大学は各学期4.5単位で、1年で9単位、4年で36単位取ると卒業。←これ、確かにこう言った気がするのですが、「単位じゃなくて科目じゃないの」との指摘あり。しかし、36科目を履修で卒業なのは確かなので、各学期に4.5科目(単位?)を取るのは確実なはず。
スペイン語は週5。9時半~10時半で、毎日1時間は予習復習をした。ロシア語は90分授業が週2回。カラマーゾフや罪と罰を読んだ。
1年次後期(春期)は4.5単位を履修。スペイン語、ミクロ経済、西洋音楽史、比較政治学の4科目。スペイン語は週5で1年間。1.5単位。クラスは15人。ミクロ経済は90分×週2で300人授業だが、週2回の講義に週1回のセクションが加わる。セクションは15人の大学院生TAが運営し、その週のリーディングやディスカッションをする。1人のTAが20人の学生を見る。西洋音楽史は75分×週2で30人。18~19世紀の音楽を中心に学んだ。比較政治学入門は50分×週2で40人授業だが、セクションは8人×5クラスでやる。政治学は関心があったが、この授業で政治には幻滅した。数字ばかり。僕はロジックよりも感性だと思った。日系アメリカ人の団体に入って飲んだり遊んだり。アルバイトもした。日本語学科で日本語の採点のバイト。時給12ドル。
●崎山さんの1年次後期の履修科目(4科目だが13時限ある)
スペイン語 週5(月~金の毎日60分授業)、15人クラス
ミクロ経済 週2×90分の300人授業と、週1のTAによるセクション(20人クラス)
西洋音楽史 週2×75分の30人授業 セクションはなし
比較政治学 週2×50分の40人授業 セクションは8人×5クラス
2年次秋学期は、東欧史、インド・イスラム史、ロシア語、天文学の4科目。現在の歴史メジャーを選ぶ前提の科目を多く取った。東欧史は75分×週2で30人授業、インド・イスラム史は50分×週2で20人授業。どっちもためになった。すごくよかった。どっちの授業もセクションがあり、20人授業のインド・イスラム史ですら10人に分けてセクションがあった。ロシア語は週5×50分で、クラスは15人。天文学は「文系のための科学」という科目群なので、それほど難しくはなかった。75分×週2で100人授業。セクションは無かった。
●崎山さんの2年次前期の履修科目(4科目だが13時限ある)
東欧史 週2×75分 30人クラス セクションあり
インド・イスラム史 週2×50分 20人クラス セクションは10人×2クラス
ロシア語 週5×50分 15人クラス
天文学 週2×75分 100人クラス セクションなし
2年次春学期は、ロシア語、天文学、核時代の歴史学、フランス革命史の4科目。もう歴史を専門にしようと決めていた。ロシア語と天文学は前学期と同じ。核時代の歴史学は200人が履修している授業のはずだったが、80人ぐらいしかこなかった。セクションは無し。フランス革命史は30人だが10人×3でセクションがあった。前もって教授から課題が出て、セクションではそれをやる。
3年次秋学期は、夏にロシアに行ってきた。ロシア語、東アジア史、プログラミング、ロシア革命史の4科目を履修。東アジア史は主に日ロ関係を学んだ。プログラミングの授業は毎週課題が出てきつかった。なぜ急にプログラミングの科目を履修したかというと、人文・社会・自然を満遍なく学べという「スキルズ」の科目だから仕方なく。歴史学部は卒論が必修で50ページ書かないといけないのでがんばります。
日本の大学の方が、自由な時間があるので、バイトやインターンシップなど、社会とつながっていると思う。日本でも志があれば、充実した大学生活は送れると思う。僕の兄は東北大学工学部の4年生です。(崎山宏樹氏)
学生寮のコモンルームというラウンジでくつろいだり、地下にあるビリヤード場のあるラウンジでくつろいだりできる。寮の図書室は24時間。教員食堂は無い(寮食堂で学生と一緒に食べる)。
田口厚志(たぐち・あつし)さん。1年生。中高は筑駒。6・7歳だけニューヨークに住んでいたが、筑駒には帰国子女枠で入学していない。日本にいるときは、親がしっかり英語の補習をしてくれた。
文系と理系の両方に興味があって、イェール大学を志望した。SATは参考書を買って自分で勉強した。TOEFLiBTは、スピーキングとライティングは短期講習に通った。エッセイは、ネイティブの人に繰り返し見てもらった。これは自分だけではどうにもならない。
日本の高校を卒業してから、秋の入学まで半年間、自動的にギャップイヤーになってしまったので、中国語をしっかり勉強しようと思い、日本で独学で中国語を勉強した。そうしたらイェールで、本当ならレベル1から中国語をやるのに、プレイスメントテストを受けたらレベル3になった。これは大学3年生レベル。他にも、日本の予備校で小学生に授業を教えたり、そこで稼いだお金でヨーロッパを一人旅したりしていた。あと、赤十字のボランティアもしました。震災関係のメール対応とか。
9月に入学。1年生の秋学期が9~12月、1年生の春学期が1~5月。6、7、8月は夏休み。オールドキャンパスにあるカルホーン寮(400人)に住んでいる。7人の共同生活で、2人部屋が2つと1人部屋が3つ。ディーンという事務長のような教員?(専門家・修士を出た人。基本的に授業は持たない)と、マスターという寮長の教員(テニュアを持っている)がいる。オリエンテーションでこのマスター、ディーン、フレッシュマンアドバイザーの先生、フレッシュマンカウンセラーという4年生(1対6か十数人?記憶あいまい)がいる。
1年生秋学期に履修したのは、有機化学、免疫学、ライティングセミナー(崎山君から「あ、それだ。思い出した」)、中国語、有機化学実験の5科目。有機化学は50分×週3回で、選抜試験がある難関科目。僕はいわば「飛び級」で履修させてもらった。(斉藤先生・「1年生でこれはすごい」)。日本でしっかり勉強していたからできたこと。日本の高校の科学教育は全体的に良い。セクションは毎週1時間ある。これは正課の授業ではない。免疫学はフレッシュマンセミナーで、履修しなくてもいい。これは1年生のうちから最先端を学ぶという科目。10数人で75分×週2だが、普通(のフレッシュマンセミナー)は週1。ライティングセミナーは英語を学ぶ。75分×週2日で10数人の授業。中国語は週5×50分でクラスは10数人。有機化学実験は週1だけど2~3時間やる。以上5科目。
1年次後期も5科目(普通は4科目だそうだ)。引き続き有機化学、有機化学実験、中国語。それと細胞生物学。これは75分×週2で、60人授業だがセッションでは10人になる。あとは現代ヨーロッパの政治学。60人のレクチャーと15~20人のセクション。
寮(レジデンシャルカレッジ)にはライティングチューターがいて、作文を添削してくれる。レポートや論文の書き方も教えてくれる。プロの弁護士がアルバイトでライティングチューターをしていることも。さらに、ライティングパートナーという、ライティングのできる大学院生がパートナーとして教えてくれる。大学院生以外にも、ジュニアという3年生、シニアという4年生がいる。僕は生物を専門にしようと考えています。
●田口さんの受けた、イェール大学の初年次教育
【1年次前期(秋学期)】 5科目だが週14時限
有機化学 週3×50分+セクション週1
免疫学(フレッシュマンセミナー) 週2×75分 10数人クラス
ライティングセミナー 週2×75分 10数人クラス 導入ゼミ的な科目のようだ
中国語 週5×50分 10数人クラス
有機化学実験 週1×2~3時間
【1年次後期(春学期)】
有機化学 週3×50分+セクション週1
有機化学実験 週1×2~3時間
中国語 週5×50分 10数人クラス
細胞生物学 週2×75分 60人授業 セクションでは10人
現代ヨーロッパの政治学 60人のレクチャーと15~20人のセクション。
(↑この授業の時間と週あたりのコマ数は聞き忘れました)
「有機化学は50分授業x週3+セクション50分、細胞生物学は75分授業x週2+セクション50分、現代ヨーロッパの政治学も75分授業x週2+セクション50分」
「ライト(さんの)フェローシップ」は、日中韓に行く人にお金を出してくれる。日本なら500万円くれたりする。今回僕はハーバード大学主催の中国でのプログラムに参加できることになり、大学から100万円もらった。9週間の研修で、2週間はボランティアで中国で教える。
(斉藤先生)学生への研究費は、これとは別にくれる。パフォーマンスアーツにも出す。学生寮がやっているファンド、学部がやっているファンドがある。
内藤大輔先生。京都にある総合地球環境学研究所の研究者だが、イェールでポスドクをやっていたので、今回縁あってアメリカに来ていて、取材に合流。日本学術振興会から3年間のポスドクをもらっていて、1年半は旅に出ていいと言われたので、半年間はカリフォルニア大学にいて、1年間イェールにいた。
環境学が専門。京大では大学院アジア・アフリカ地域研究研究科にいて、京大農学部ではマレーシアの熱帯雨林を研究した。イェールでは、ものすごい有名な先生のもとで1年間学べた。リソースが限りなくある。
寮はフロアで男女に分かれている。3年生からは混じることも。
田口さん「レジデンシャルカレッジは手厚い仕組みだ」
1セメスター北京大に行くこともできる。中国語と生物学を専門にしたい。
Gostudyabroad.boo.jpという、現在、Harvard(ハーバード大学)やYale(イェール大学)、MIT(マサチューセッツ工科大学)をはじめとしたアイビーリーグやリベラルアーツカレッジ等の米国大学の学部に在籍している日本人留学生による留学プロセス及び体験記を公開するためのボランティアページに関わっているので、ぜひ見てほしい。(田口さん)
http://gostudyabroad.boo.jp/
寮には数学のチューターもいる。学内でアルバイトができるのはありがたい。
安井君は「世界を変える就職ナビ」という、カンボジアに学校を作っている会社に就職しようとしているらしい。
夜はイェール大学の寮のゲストハウスに宿泊。80ドル。私、星野君、安井君の3人で1部屋、寝室、リビング、バスルームの3部屋からなる。広い。学生2人は宿泊タダに(私が
まとめて払ったので)。夜中に安井君が非常口を開けて警報機を鳴らしてしまい、斉藤先生に助けてもらった。こうして2月29日(水)は終わった。
イェール大学 おわり
【画像6】左から、斉藤淳先生、田口さん、崎山さん、安井君、星野君、内藤先生
旅はこの後、ブラウン大学、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、ヨーク大学、トロント大学と続きます。
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