リスボンの市電 |
リスボンの魅力のひとつが、石畳の狭い道路をゴトゴト走る路面電車だ。新車もあるが、古い電車は木造で趣きがある。日本では考えられないような、自動車1台しか通れない路地にも電車が入っていき、よくこれで事故が起きないと思うが、みんな慣れているのだろう。
古い電車は冷房もなく窓全開で走っており、さわやかな風が吹き抜けてくる。引越作業のトラックが道をふさいでいたので、穏やかで温厚なポルトガル人たちが珍しく声を荒げて窓から顔を出し「早くどけ!」と野次っていたが、本気で怒っているというよりも楽しく騒いでいるという感じで、電車内には奇妙な一体感が生まれていた。
市電に見慣れない東洋人(私)が乗ってくると、周囲の乗客が次々に話しかけてきて、「お前の目的地はここだ」「降りるときはボタンを押すんだ」「ここの展望台は景色がいいからこの駅で降りろ」というようなことを次々にポルトガル語とジェスチャーで訴えて実に面白い。こうした明るく楽しい人たちが住んでいるのがリスボンだ。
日本人は電車内で偶然目があったら普通そらすが、ここの人たちはにっこりしたり何か面白いことを話しかけてきたりする(意味は分からないが)。この違いは大きい。リスボンの市電に乗る時は、ただ電車に乗ることを楽しむのではなく、できるだけ多くの人との交流をお勧めしたい。
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