上海大学めぐり⑥ 上海視覚芸術学院 |
学生街というよりも郊外の専門店街のように、生活必需品の店はなんでもある。
大学が郊外移転するなら、必ずキャンパスに隣接して生活の場があるべきで、日本との違いは大きい。
安い定食屋に入る。衛生的には日本人にはやや厳しい雰囲気。
ここで私は周さんに勧められるままに、「宮爆鶏丁飯」という
辛い鶏肉とみそあんかけ、野菜、ピーナッツ、じゃがいも、白菜の
入った、マーボ丼みたいなのを食べる。7元。激安だ。
周さんは黒酢あんかけと豚肉の丼物を食べていた。
メニューを見ると日本では見たこともない珍奇なものが多い。
さらに、「上海で今一番はやっているナウなヤングのジュース」と
言われた「玉老吉」という缶ジュースを飲む。
甘茶みたいな味。
食事をして、定食屋を出ると、ああ悲劇。豪雨だった。
傘があってもずぶ濡れになり、歩けないほどである。
ショッピングモールの一角にある卓球場を見に行って時間を潰す。
ちなみに卓球は中国では「ビリヤード」のことである。
日本語でいう卓球は「兵兵(ピンポン)」という。
雨がやや小ぶりになったので、意を決して出かけた。
近所にあるもう1つの大学を見なければ、ここまで来た甲斐がない。
その名は、上海視覚芸術学院。
復旦大学のイニシアティブのもと、2005年に創立された、最先端のアート専門大学である。
コミュニケーションデザイン、デジタルメディア、ファッションデザイン、空間・工業デザイン、
ファインアート、パフォーミングアートの6学科。
世界トップレベルのデザイン・美術大学の学長からなる国際諮問機関を有し、
国内外から著名な教授を招いている。ここまで来て見ないで帰るわけにはいかない。
だが、あまりにひどい雨で歩きにくいことこのうえない。
とりあえず何とかキャンパスにたどり着き、目の前にある大きな校舎に入ってみた。
図書館やコンピュータ教室、音楽練習室などがある校舎だったが、展覧中心という巨大空間があり、
英語でエキシビジョンホールと書かれていたので、ここでイベントなどをするのだろう。
高さは4階建て分くらいあり、紙で作った大きな千羽鶴がいくつもぶらさがっている。
日本のどの芸術大学でも見たことがない巨大な規模の展示場であった。

館内のコンピューターや芸術関係の設備はとても充実しており、
図書館に隣接した喫茶店では学生が運営していると思われる喫茶店があり、
学生の芸術作品を展示している。
インフォメーションコモンズというインターネットカフェのような情報教育の部屋や、
映画を放映する劇場もあり、卒業作品展のポスターが貼ってあった。
学生をあまり見かけず、我々だけでウロウロしていると怪しすぎるので、
ほどほどのところで退散する。本当は他の校舎も見たかったのだが、
あまりにひどい雨で歩けず、断念した。
それにしても、上海視覚芸術学院の校舎・設備とも素晴らしものであった。
郊外の新設大学でありながら、その充実度はムサビ・タマビの本部に匹敵するものである。
もちろん既存の学生街や学生寮は近い。
ここと比較すると、交通の便は悪い、寮がない、設備が貧弱、近所に店もない
東京芸大の取手キャンパスはものすごくだめだ。負けてしまうぞ。
今の上海はまだ、東京、ロンドン、パリ、ニューヨークのような
デザインとアートの世界都市とはいえないと思う。だが、この莫大な
先行投資を見ていると、近い将来、この大学から世界的デザイナーが
どんどん出てきて、上海が世界に誇るアートとデザインの発信地になる。そんな予感がした。
雨はあいかわらずひどく、1分も歩けば靴の中からひざまでビチョビチョである。
松江大学城にはほかにもいくつも大学があるが、これ以上の見学はあまりにしんどいので断念し、
周さんに雨でも楽しめるところに連れて行ってくれと頼んだ。
そして我々はタクシーで松江大学城駅に戻ってきた。筑波大学からつくば駅に戻ってきた感じ。
地下鉄で1時間以上かけて都心に戻り、浦東(プートン)の東方明珠塔の隣にある上海海洋水族館という
アジア最大級の水族館に入る(135元、高い!)。
世界一長い155メートルのガラス張りの海底トンネル風水槽があり、動く歩道で見る。
世界各地の魚がおり、室内のインテリアがちゃんとアマゾン風、東南アジア風になるなどとても凝っていた。
孵化するサメの卵を10日おきに見せる展示が斬新だった。黒い白鳥がいた。
雨も小ぶりになったので、浦東のハイテクオフィスビル街を眺める。
日本の新宿と違い、ここ数年でできた2000年代の新築ビルばかりなので、建築工法も最新で、
100階建てのビルもあり、まるで未来都市のような景観だったが、
ビジネス街なのでそれほど人は多くおらず殺風景だった。
森ビルの上海ワールドフィナンシャルセンターまで来たが、ビルは雨雲の中に消えており、
150元払っても景色が見えそうにないので上らなかった。
タクシーで豫園という、日本でいう浅草のような古い町に行く。おみやげ屋街になっており、
ここで周さんが「上海でいちばんうまい」と豪語する南翔饅頭店の小籠包を食べる。

16個20元と激安。かにみそと熱いスープが入っており、言われたとおりめちゃめちゃうまい。
ここで日が暮れたが、さらに、今上海でいちばん熱いスポットだという新天地というところに行く。
古いレンガの住宅街を高級レストラン街に改装したもので、巨大デパートも隣接。
欧米人や日本人の客が多かった。東京だと南青山や麻布のような高級な雰囲気の場所だ。
ここの一軒に入り、ビールを飲んだら75元。高い。
いちおう普通の観光地にも行ったところで、今日はおしまい。地下鉄でホテルに戻ってきて寝た。
