5/16 田園調布学園大学で社会福祉士の話を聞く |
(写真)田園調布学園大学の村井教授と小野教授
桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科大学アドミニストレーション専攻通学課程1年生で、大学職員を目指している二宮幸太君@Antler12が、田園調布学園大学出身と聞いて、面白いので田園調布学園大学のオープンキャンパスに行ってみることにしました。
田園調布学園大学といっても、大田区の田園調布にはありません。そこは発祥の地で、中学高校などがあり、大学は川崎市麻生区の駅から遠いニュータウンの中にあります。約40年前に短大として開学し、2002年から社会福祉の単科大学としてスタートしました。現在は2学部3学科です。
小さな大学なので、学生会で活躍していた二宮君@Antler12を覚えている先生はたくさんいました。社会福祉学科の小野敏明教授(地域福祉、コミュニティワーク)、村井裕一教授(福祉情報、電子情報工学)、川名正昭准教授(福祉工学)からお話を伺いました。
田園調布学園大学は全学生数約1200人、少人数で学生と先生の距離が近いのが特徴だとアピールしますが、それはどこも言っているので、ちっとも特徴になっていません。もう私ははっきり書きます。しかも、私が志願倍率と志願数を聞いたら、すぐ答えられず、資料にも掲載されていなかったのはマズイ。
ホームページ、パンフレット、代々木ゼミナールのサイトなどで入試結果を公開していないことは、それだけで悪い印象を与えます。「志願者が集まらないのだろう」という負の情報を撒き散らしているのです。旺文社のパスナビにはいまでも昨年の入学者数が掲載されており、定員割れです。偏差値は35。
社会福祉士合格率は25%と、決して高くありません。これも数字が独り歩きし、大学のブランド力に悪い影響を与えています。村井先生は「社会福祉士と精神保健福祉士のダブル合格では関東一の実績です」と誇りますが、あまり宣伝していないので、私はこの事実をまったく知りませんでした。
教員の研究意欲は熱心で、論文の数では近隣のライバル大学をしのぐとおっしゃいますが、これも高校生や親や高校教員はまったく知りません。確かにオープンキャンパスではパンフやネットでは分らない情報が手に入りますが、OCに来た人にしかこうした情報を公開しないのは非常に問題です。
この景気でも福祉の就職は求人がたくさんあり、安定していて、離職率も低いそうですが、これも、「福祉は3K」というネガティブキャンペーンの声にかき消されがちです。これに対する反論は私の著書『こんな大学で学びたい!』で日本社会事業大学を取材しているので、そっちをぜひお読みください。
社会福祉士の合格率が低いのは事実ですが、もともと学力の低い層が入る大学なので、むしろ入学後にがんばって勉強して合格している学生が多い点を評価してほしいと村井教授は言います。福祉施設に就職した学生が、仕事をしながら社会福祉士に合格できるよう、大学で講座を開講し、支援しています。
田園調布学園大学では介護福祉士も取得できます。これも介護は3Kと思われていますが、高卒と大卒では待遇が違い、しかも田園大学では全員に社会福祉士の受験資格も取らせるため、しっかり勉強もしていて現場にも強く、将来は幹部になれる介護福祉士を育てているとのこと。
福祉は確実に就職はあり、よっぽど倒産しない。また、人の役に立つ、やりがいのある仕事である。就職した学生たちの満足度は高いと村井先生はアピールします。中学高校で「福祉はやめておけ」みたいなアドバイスをしないでほしいと切実に訴えています。公務員福祉職の採用も増えています。
横浜市は今年80人も福祉職を採用するそうで、これは生活保護のワーカーが足りないためだそうです。公務員ですが社会福祉主事を持っていないと福祉職は応募できないので、普通の文系大学からはなれず、偏差値35の田園調布学園大学でも、横浜市役所に就職できる可能性があるのです。
「たとえ勉強が不得意な子でも、ウチに入れば25%は社会福祉士に在学中に合格できる。この努力を評価してほしい」と村井教授は言います。福祉の世界は将来有望であると。田園調布学園大学ががんばっていることはわかったのですが、せっかく今年は定員割れしていないのにその情報を出さないなど、福祉ネガティブキャンペーンや、偏差値下位大学差別に対し、有効な宣伝の手を打っていないことは、非常に気にかかります。内部に居る本人たちは、自分たちはがんばっていると思って日々努力していても、高校生に伝わらなければ何にもなりません。イメージアップの努力が必要だと思いました。
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