7/17 なぜ国士舘大学が消防官合格者数1位なのか |
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(写真)高規格救急車
最新の機材を搭載した高規格救急車を3台所有しており、走行中の揺れや急ブレーキ時の対応要領を体験するために都内で走っている救急車と同じものを使用し、実際にグラウンドを走らせて訓練する。急病、交通事故など、あらゆる事故を想定し、観察から救急処置、病院搬送、医師への引継ぎまでの一連の実技訓練を実施している。
09年度の消防官合格者数1位は国士舘大学(86名)である。2位の日本大学(38名)を大きく引き離している。なぜそうなのか。国士舘大学に行って聞いてみた。場所は体育学部の多摩キャンパス。ここにあるスポーツ医科学科が、消防官になるための学科なのである。正確には、救命救急士を養成する。
医師である伊藤挙(すすむ)教授いわく、本学科は救命救急士養成を大きく打ち出しており、消防官を目指すつもりの学生が初めから多いとのこと。ちなみに体育学部だけあり保健体育や養護教諭の教員免許も取得できる。消防官になるための公務員試験合格を目指し、2・3年生から公務員講座が受けられる。
今まで専門学校が中心だった救命救急士を四年制大学で養成しようという全国初の学科としてできた。技術と学問を身に付ける場であり、予備校みたいな公務員試験対策をやっているのではないという。土曜日には外部委託した公務員講座をしているが、地方公務員の試験なので自分で勉強する学生もいる。
消防官の合格者86名中、56名が同学科(受験者80名)。あとは体育学科など。学科定員は150名で、そのうち100人近くは救命救急士志望だという。そして学科の1/3が実際になる。初年度納入金は1,654,600円と安くはない。
救命救急士の大学は国士舘が初めてであり(2000年設置)、すでに東京消防庁などにはかなりの卒業生が進んでいる。2010年からは、将来の幹部になる人材育成も考え、大学院も設置した。文系大学から消防官になるのとの違いは、在学中に専門知識が身に付くこと、教員も医師など専門家であること。
文系大学から消防官に受かった場合、入職し実務経験を積んでから救命救急士になるが、国士舘のスポーツ医科学科なら在学中に資格取得が可能。こうするとどうしても出世も早くなる傾向があるようで、これはアドバンテージだ。山口嘉和教授・学科長からもお話を伺う。山口教授は内科医である。
山口学科長は、「消防官希望者の8割は受かる」「昨年の合格者の2割は女性」「消防経験者が専任教員で、面接対策指導もしてくれるのが強み」とのこと。体育学部にあるが、別に必ずしも人一倍スポーツができなくてもよく、体育の授業程度がきちんとこなせれば問題ないという。
一般試験の体育実技は最低限の運動能力を見るもので、むしろ学科試験重視なのだという。消防官は消防士と救命救急士があるが、国士舘の本学科では消防士志望は少ない。ただし入職した消防局によっては入ってからはどちらになる可能性もあるし、入職してすぐには救命救急士にならないのが普通だという。
最後に、救急車の内部が再現された実習設備などのある臨床実習室を見学した。本物の消防官の制服のようなユニフォームを着た学生たちがいてなかなか格好いい。加藤義則准教授から実習の説明を受ける。「道具の使い方だけでなく、チームワークやコミュニケーションを学ぶ」とのこと。
私は中堅大学の生き残りに必要なのは、「オンリーワンの得意分野を持つこと」だと考えているが、国士舘大学のスポーツ医科学科はまさにそれである。消防官・救命救急士の養成で他大学の追随を許さない。これが人気学科となって大学を引っ張ってくれているのだ。
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