7/29 東北大学オープンキャンパス(文系編) |
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(写真)大学院教育情報学研究部・教育部の、クリッカーを使った授業改善支援ツールのデモ
東北大学青葉山キャンパスの工学部、理学部、薬学部を見学してきた私は、山を下山して、歩いて(22)川内北キャンパスにやってきた。ここは1・2年生が主に過ごす、いわゆる教養部である。このキャンパスではそれほど催しものはないにもかかわらず、高校生がかなりたくさん見学に来ていてにぎやかだった。
私が東北大の川内が非常に好きなのは、キャンパスの建物の配置がすっきりしていることで、広すぎない敷地に、教養部の校舎、学食などの厚生施設、サークル棟などがまとまって建っており、快適なキャンパスライフがすごしやすい設計になっていることである。特に、東北大学のサークル棟は充実しており、
この点は私の評価は非常に高い。教養部の校舎は改装されており、学生の自習室ができていたり、教室も机が動かせるようになっていた。東北大学は朝日の『大学ランキング』で「高校からの総合評価」「入ってから伸びた」が全国1位なのだが、この1・2年を過ごすキャンパスも重要な役割を果たしている。
入学後2年間の「全学教育」では、特色GPに採択された「転換・少人数科目(基礎ゼミ)」が160も開講されている。http://www.he.tohoku.ac.jp/center/tgpm/2.html 学生はこれを学部横断で受講する。1ゼミは20人程度。
(23)附属図書館に行く。東北大学は全学で380万冊の蔵書があり、ここが中央図書館なのだが、はっきりいってショボかった。これは私の独断と偏見なので許してほしいのだが、たとえば200万冊全面開架でラーニング・コモンズだらけの大阪大学図書館と比べると、露骨に見劣りするのである。
開架の閲覧室が狭すぎる。書庫に入れるのは2年生以上で、科目履修している教員の推薦状がなければいけない。東北大学の附属図書館は、まだまだ改善の余地があると感じた。図書館を出たら、しみじみと雨が降っており、ひぐらしが鳴いている。学生相談コーナーは生協の学生がやっていた。
(24)文、教育、法、経済の文系4学部が集まる川内南キャンパスに行く。今回は理工系を優先したが、文系のオープンキャンパスも見なければ帰れない。法学部は模擬講義、説明会、わずか1時間ほどの質問コーナーと、きわめて充実していなかった。こんな学部もある。一方、経済学部は比較的充実しており、
教員の研究室を公開して質問に答えたり、経済学部図書室やICT教室を開けて見学できるようにしたり、留学生と高校生が国際交流するコーナーを設けたり、ゼミ用の小教室で高校生と大学生がお茶やお菓子をつまみながら心ゆくまで相談ができたり、韓国の高校生とネット生中継で会議したりと多彩だった。
研究室公開をしていた経済学部の松田康弘准教授にお話を伺う。東北大学経済学部は定員250人でゼミが40ほどあり、3・4年生は必修。1学年4~5人という充実したゼミ教育をしている。私立大学とはまったく違う環境だ。ただし、経済学部生が授業の空き時間を過ごす専用の自習部屋は特にない。
(25)文学部のオープンキャンパスも素晴らしいものだった。文学部は25の専攻ごとに研究室というミニ図書館を持っており、このすべてが公開されていて、丸テーブルの会議室のような場所で、来場した高校生と大学生・院生が、サロン形式でいつまでも語り合うことができるのである。単なる教室展示と違い、
図書室でもあるので、話しながら資料がいくらでも出てくる。文学部のオープンキャンパスはとても好印象だった。(26)お次は大学院教育情報学研究部・教育部。IT教育をテーマにした独立大学院で、教育学研究科とも情報科学研究科とも違う、東北大学にある面白い大学院だ。
ここでは院生の方に、クリッカーを使った授業改善支援ツールのデモを見せてもらった。なぜか中国人留学生がいっぱいいたので、以前上海に行ったときに、聞いた、中国の大学の不思議な専門職教員の話を聞く。中国の大学では、職員と教員の間に「補導員」という役職が存在する。
補導員は1人が40人の学生を担当し、学生のキャンパスライフの面倒をみたり、相談に乗ったりする。アカデミックポストの教員を目指す人も、最初は補導員になる。学生を管理する仕事をしながら、少しずつ授業もするようになり、いずれ教員になっていく。ただし、補導員をしながら自分の適性を考え、
大学教員になるか、幹部職員になるかを選ぶことができる。これは日本にはないとても優れたシステムだ。まずは学生生活の面倒をみる担任の先生として大学に勤務し、教員になるか職員になるかは、働きながら自分で適性を判断する。日本にもこの制度を導入するべきである。
補導員は学部卒でも修士、博士からでもなれる。ただし学部卒では教員にはなれないため、大学教員を目指す場合は、働きながら大学院に通う。中国人留学生からは、こうした話を聞いた。あんまり大学院教育学研究部・教育部の話をしなかったが、まあいいや。
(27)番目は教育学部。講座ごとに教室展示をしており、高校生とじっくり話せる展示形式だったが、私が関心のある高等教育に関する講座が見当たらなかったので、適当に眺めて退散。最後に(28)番目の百周年記念会館川内萩ホールで、国際交流センターの催しや、なんでも相談コーナーなどを見る。
以上で、東北大学オープンキャンパスの見学はすべて終了した。今回は医学部・歯学部・農学部までは手が回らなかったが、私をしても1日で見学できる許容量を大きく超えていたので、これは次回の楽しみとしよう。ちなみに、国際交流センターで伺ったのは、東北大学には80カ国1500人の留学生が居て
国際交流は大変盛んであるということだった。オープンキャンパスを見学した感想としては、やはり、学部学科によって濃淡はあるものの、研究公開が非常に充実していて、見ごたえがあるという点である。多くの国立大学は説明会、模擬講義、相談だけのオープンキャンパスをしており、だめだ。
同日に全学部開催をすることで、シャトルバスまで出し、高校生に他学部も回らせる。これは東北大学が、学問の境界がなくなってきていることを、高校生に体験させる意図があるという。東北大学は高校生を大人として扱っている。未来の研究者達に、責任を持って最先端の学問に触れる機会を提供している。
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