【レポート】APU学長室の篠崎裕二課長と話す |

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(写真・APU学長室の篠崎裕二課長と私)
APU(1)せっかく別府まで行くのに、学生さんたちと話すだけではと思い、大学側にも話を聞こうということで、広報担当の方に取材を申し込んだ。学長室の篠崎裕二課長にご対応いただいた。篠崎課長は前日マレーシアから帰国されたばかり。「私は日本の高等教育全般に危惧がある」とおっしゃる。
APU(2)APUが2000年に開学して10年。日本の大学の国際化は進んでいるのかというと、遅々たるスピードであり、世界はもっと早く進んでいる。「2000年ごろよりも今のほうが遅れている」と危機感を隠さない。
APU(3)例えば、日本のメーカーが製造した大型の実験設備を、中国の大学に納入している。日本の大学では導入できていないものまであるという。こういうところで差が付き始めている。中国の大学生は、もう英語で議論をすることは普通である。日本はそうしたレベルに到達している学生は少ない。
APU(4)前日まで行っていたマレーシアでは、イスラム教と最新の学問を融合させた新しい大学が設立され、工学やMBAを教えており、世界中の留学生を集めている。授業はすべて英語。こうして中進国が世界に向けてマーケットを開いているのに、
APU(5)日本の大学はこのままでは中国、台湾、香港、シンガポール、オーストラリアはおろか、インドネシアにも追い抜かれてしまうだろう。インドネシアにも英語で授業をする大学が次々と生まれている。
APU(6)アジア各国を見て感じるのは、日本のスピードのなさだという。日本もグローバル30(現状では実質的にグローバル13)という国際化の推進をしているが、その内容やスピード、知名度、実効性、予算などは、アジア各国に比べても見劣りがする。
APU(7)APUは中国、韓国からの学生が多い。彼らの本当のトップ層は当然北京大学やソウル大学に行く、あるいはアメリカのアイビーリーグへ。もうワンランク下ぐらいの層がAPUに来るわけだが、この層の学生はTOEFL500点、600点はあたりまえ、
APU(8)韓国からの学生はTOEIC800~900点台で普通とのこと。 これに対し、日本人学生は、偏差値48~58(代々木ゼミナール2010年)の層となる。偏差値だけで見ればもはや中堅私大にすぎない。
APU(9)開学時は立命館大学の経済学部(同偏差値60)と同じ受験難易度だと盛んに宣伝していたことを思うと、凋落と言われても仕方がない面はあるだろう。だが篠崎課長は、「日本人学生は、偏差値の尺度では測れない学生が来ているし、来てほしいと思っている」
APU(10)「日本のマスを相手にする受験生獲得戦略ではもうダメで、本当に我々と同じ価値観を持つ学生を、たとえニッチなマーケットでも狙おうと考えている」とのこと。テクニックを駆使して受験偏差値を上げて日本国内だけでの大学の評価を上げることには、それほど力を入れない。
APU(11)篠崎課長は、アジア各国で学生募集をしている印象として、「アジア各国では、英語のレベル=知的レベルになっている。日本はそうでもないが」という。知的レベルが同じなら、英語ができたほうが評価が高い。日本ではまだ、英語化した企業に批判的な声があるが…。
APU(12)APUの国際学生(留学生)の約半数は日本に就職。一割が大学院へ進学、残りは自国に帰るか第三国で就職する。留学生の中でも日本に就職を希望する学生は多く、就職支援は最初は手探りだったが、2003年ごろから日本企業でも採用が増えて来た。
APU(13)学生や教員の半数を外国人にして、授業の半分を英語にする。この教育は注目されている反面、私立の単科大学では限界がある。限られた予算の中で、すべての授業を英語と日本語で開講し、例えば経済学の専門家で、英語でも日本語でも授業ができる先生を集めなければならない。
APU(14)同じ科目を英語と日本語で開講しているということは、イヤな言い方をすれば、他大学の半分の科目しか開講していないことでもある。学生の満足度は高いそうだが、私はアジア太平洋学部、国際経営学部とも、教育の内容、専門性の高さ、教員の研究の質という点では、評価は微妙である。
APU(15)学生ばかり、キャンパスライフばかりが注目され、メディアで取り上げられており、教員の姿が見えない、情報発信が足りない、研究成果が見えてこないと感じている。これは今後の課題だ。
APU(16)多言語、多文化という環境は、普通の日本の大学とは大きくかけ離れており、魅力的な部分は多い。キャンパス内の学生の半分が日本人ではないことは、必然的に国際交流が生まれることになり、学生は多くのことを学んでいくであろう。
APU(17)職員や教員との距離が近いことが満足度の高さだという。「距離が近い」という大学は多いが、APUの場合は、本当にみんな別府に住んでいるので、都会の大学とはまた違った、密接な交流が生まれる。例えば、日曜日に会う場合でも、遠距離通勤・通学して大学まで来る手間がない
APU(18)「この大学に期待されているものは、世界中のどこに行っても、異文化の中でサバイバルできる生命力、適応力。学生はその力は高い」と篠崎課長は言う。世界各国の学生と授業や課外活動や日常生活で頻繁に交流し、軋轢もあるが異文化を知っていく中で、
APU(19)プレゼン力やコミュニケーション力が付いて行くのを実感できる。一方で、この環境が価値観が多様すぎて企業と合わないという卒業生も若干いる。また、「思ったより英語ができないじゃないか」と言われる学生もいる。これは、規定以上の単位は英語の科目を取らなくてもいいため、
APU(20)個人差が生まれるためだ。留学生の友人も少なく、日本語の科目ばかり取って、あまり多くを学ばずに卒業してしまう学生は、この大学を使いこなせなかったと言えるだろう。そういう学生も存在しているのは事実だ。
APU(21)私がひっかかる点として、APUがリベラルアーツ系大学ではない点がある。つまり、哲学、文学、歴史学、数学、物理学など、基礎的な科目が充実しておらず、社会学のようなアジア太平洋学部(文学部や国際文化系とも違い、専門性という意味では充実した教育内容には見えない)、
APU(22)アジア太平洋マネジメント学部は国際経営学部に改称したが、これはやはり経営学という既存の学問の専門性を重視したための改組であろうと邪推していた。このことについて篠崎課長に率直に聞いてみた。
APU(23)「アジアの留学生には、リベラルアーツのディグリー(学位)は通用しないんですよ。彼らが求めているのはビジネスの専門性。だから国際経営学部の方が留学生人気は高い」と納得の回答。日本人は国際関係、国際交流というとすぐアメリカだけをイメージしてしまい、
APU(24)高等教育も(建前は)アメリカ型なので、リベラルアーツ教育は最高のものであると思いがちだが、アジアの各国では必ずしもそうではない。「ウチは国際関係ごっこの大学・学部ではない。本物なんです。いくら言っても本当のイメージは伝わらない。来てもらう、見てもらうしかない」
APU(25)さて、アジアの留学生を毎年大量に確保するのは、世界の大学との競争の中では非常に苛酷である。APUでは入試のスタッフを、国内担当約30人、海外担当約50人の、合計約80人も抱えている(外部スタッフ含む)。入試にかける予算も大変な額だ(聞いたけど書けません)。
APU(26)これだけ力を入れないと、留学生は来てくれない。「エージェントを通さない直接募集をし、留学生の親とも話します。これでやっとアジアで世界と戦える」(篠崎課長)。ユニークな授業の話も聞いた。
APU(27)FIRSTというプログラムで、1年生を5~10人の小グループでいきなり韓国や台湾に送り出し、紙で「ここに行きなさい」などの指示を出す。メンバーには職員とその国の留学生も入れているが、極力手を出さず、学生にサバイバル体験をさせるのだ。
APU(28)留学生(国際学生)の多くは、何らかの形で奨学金を得ている。日本人学生の初年度納入金は140万円近い。これは九州では一番学費が高い大学だ。これも私学にこうした挑戦をさせる限界で、マレーシアやシンガポールの場合は、APUのようなことを国立大学がやっているし、理系もある。
APU(29)これだけでも日本は遅れている。APUの国際学生は毎年1割ほど中退してしまうが、これは教育や研究内容が不満というよりも、多くが学費が払えないからだという。なぜ国は支援しないのだろう。
APU(30)学食で、イスラームの調理法に従った「ハラル」のチキンカレーを食べた後、学生寮「APハウス」を見学した。ここは国際学生は1年次に全員が入居する。シングルルームと、日本人学生と2人1部屋のシェアルームがある。
APU(31)寮はRA(レジデンス・アシスタント)という学生スタッフによる自治で(ただしセキュリティは厳重)、入居している学生同士の交流が非常に盛んになるように、イベントやサークル活動などが充実している。
APU(32)「アジアで学生募集をしていると、驚くほど日本の文化や実情が知られていないと感じる。教育や研究や就職ではなく、具体的なイメージがわかない、なじみがないから、日本の大学が選ばれないというのが現状。日本という国自体が、自分たちの魅力をPRしないと、
APU(33)これから世界の学生にとって魅力ある大学づくりはできない」と篠崎課長は言う。彼の持っている危機感を、早く多くの日本の大学が共有しないと、今後、アジア、世界各国の大学と厳しい学生獲得競争が進む中、日本の大学はますます遅れをとってしまうのではないか。(おわり)
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