12/4 武蔵大の2年生は60代の先輩に叱られる |
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(↑写真 金融Aブロック2201教室茶野ゼミ1チーム(2年生)の発表「なぜ変額年金保険は販売停止になったか」)
1)武蔵大学では、開学以来全員が1年次からゼミに所属する。伝統的なゼミ教育は、専門知識の修得、プレゼンテーションやディスカッションといった技術の向上だけでなく、主体性や積極性といった人間的成長の場でもある。
2)「ゼミ対抗研究発表大会」(通称:ゼミ大会)は、企画・運営等すべてをゼミナール連合会(学生団体)が主体となって行う。予約不要で、聴講は在学生だけでなく、高校生や一般の方も参加自由。今回私は武蔵大学広報委員長の経済学部黒岩健一郎准教授、企画・広報課岩本宏子様のお誘いで行きました。
3)武蔵大学は大変ゼミ活動が盛んです。以前ブログで紹介しましたのでご覧ください。
拙著『こんな大学で学びたい!』でも紹介しています。
http://www.amazon.co.jp/dp/4103236310
4)このゼミ大会は主に3年生が運営し、2・3年生が発表をする点が、他大学の卒論発表会と違う点ですが、他にも違いがあります。まず何と言っても驚きなのが、企業がスポンサーについていることです。今年は日経BPマーケティング、ソネットエンタテインメント、ナビタイムジャパン、
5)文化放送キャリアパートナーズ、毎日コムネット、プラス株式会社、ナムコ。ナンジャタウン、富士急ハイランドの8社がスポンサーとなりました。スポンサー企業は賞品も提供しています。ゼミ大会のパンフレットにすら企業広告が掲載されており、企業との結びつきが強いのが特徴です。
6)ゼミ大会の来場者は毎年500人ほど。メールマガジンで宣伝はしているものの、高校生は少なく、来場者のほとんどは武蔵大生です。広報課では約55社にプレスリリースを出しているそうですが、今回取材に来たマスコミは私だけでした。若い卒業生も見学に来ており、夜はゼミの後輩と飲むそうです。
7)ゼミ大会は武蔵大学の教育・学習の特徴であるゼミをより活性化させることを目的として始まったものですが、何年の伝統があるのかは誰にもわからないそうです。70歳代のOBが「ゼミ大会を開催した覚えがある」と言っているぐらい昔ではあるそうですが。
8)学生は普段のゼミでも自分で調べたり研究したりした成果を発表し、議論をしています。でも普段のゼミの発表はゼミ内部だけのもの。ゼミ大会はゼミごとの壁を超え、他のゼミ生や教員、社会人審査員、来場者の前でゼミの研究成果を発表する機会です。学生たちは質の高いプレゼンで優勝を目指します。
9)ゼミ大会は今年は35チームが出場。経済学部の専任教員は40人なので、多くのゼミが参加していることがわかる。経済A・B、経営A・B、経営・ファイナンス、金融A・Bの7ブロックに分かれ、1ブロック5ゼミがプレゼン発表をする。各ブロックごとに優勝・準優勝を決める。
10)各ブロックの発表の流れは、発表25分、審査員のコメント10分、入れ替え5分の計40分。時間どおりに進むように、係の学生が厳しく運営しており、発表の最中は途中入退場も許されないほどである。社会人審査員は、14人の卒業生、17回生から56回生まで年齢も様々だ。
11)社会人審査員は全員が武蔵大学の卒業生である。公認会計士、森永製菓、三菱総研、三井住友銀行、野村證券、リクルート、東京都民銀行、大日本印刷など、有名企業の社員を中心とした豪華メンバーだ。このほかに学内審査員として経済学部の教員14人が参加する。
12)審査員の審査基準は厳格である。各ゼミ42点満点で、①「表現」表現力(表現方法)、パワポや資料を効果的に使えているか、声の大きさ、抑揚が適切か、時間配分が適切か。②「内容」論理一貫性(内容が筋だっているか、論点がずれていないか)
13)③深層追及力(内容をいかに深く掘り下げて研究、考察したか)④主張の明確さ(はっきりした主張・結論があるか)⑤独自性(教員のみ審査)(今までの研究と比べてオリジナリティがあるか、オリジナリティを持った発表であったか)
14)⑥実践的な含意(社会人審査員)(企業経営や経済・社会政策への応用可能性が示されたか)の6分野各7点合計42点満点で審査される。ゼミでのプレゼン発表で、これだけ厳しく内容の質を問う事例は、他の大学ではなかなかないのではないだろうか。
15)私はまず最初に金融Aブロック2201教室茶野ゼミ1チーム(2年生)の発表「なぜ変額年金保険は販売停止になったか」を聴いた。5人の学生が次々にパワポでプレゼンをする。よく練習してきたのがわかる。優勝賞金は4万円。学生はみんなスーツだ。審査員は三井住友銀行と野村證券勤務のOB。
16)続いて経営Aブロック8603教室松島2ゼミ(3年生)「ポイントカードを斬る」。気のせいかさっきの2年生の発表よりも内容が稚拙だ。これは実力差が一目でわかる。やはり他のゼミを視るのは面白い。22回生の年配の卒業生審査員は非常に厳しいアドバイスをしていた。
17)まず開口一番「僕、というのはやめなさい。それと、手を組むのはいいが、右手が下、左手が上だ」。それからプレゼン発表の内容の欠点をビシビシ突っ込んでくる。学生が考えていなかった部分まで質問をしてきて容赦ない。これは先輩の愛のムチなのだ。
18)3つ目の発表は、同じ部屋の杉本Bチーム「企業における中堅社員のあり方~組織力の向上を目指して~」が気になったが、教室を移動して、経済Aブロック8702教室杉本Aチーム「地域の未来~地域共生プロジェクト~」を聴く。このゼミは自主的なサブゼミを開催するなど、活発なゼミだ。
19)学生たちの発表内容は経済学というよりも社会学的要素が強く、SNSやTwitterを活用し、失われた地域の絆や助け合いを復活させるビジネスモデルを提案するという社会貢献要素の強いものであった。2・3年生合同の「タテゼミ」という形式である。
20)私自身、まちづくりに関心があるので、この地域再生という学生のテーマはとてもいいなあと思って聴いていたのだが、社会人審査員の20回生の大先輩の講評の厳しいのなんの。「コストを考えていない。企業が倒産したらどうなるのかを想定していない、ビジネスとして成り立たない」。
21)教員からのコメント・質問も「政府・行政の役割との関係が掘り起こしが浅い」など容赦ない。これは、自分のゼミの学生ではないから、審査員の先生が一切の情け容赦なく厳しく審査ができるのだ。さて、ゼミ大会自体は緊張に満ちたものだが、発表会が終われば楽しい懇親会である。
22)懇親会では教員や社会人OBと一緒に楽しく食事やおしゃべりが楽しめるのだが、この場で総評や優勝ゼミ発表、表彰式が行われる。大学2・3年生と企業で活躍する社会人OBが交流できるメリットはもちろんのこと、4年制で卒業論文を書く前にこうして知的な修業ができる場があるのは素晴らしい。
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