お茶の水女子大学図書館の運営 |
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1)お茶の水女子大学の学園祭で図書館を開けていたが、高校生向けの受験相談コーナーとなっており私は入ることができなかった。ラーニングコモンズを見たかったのに極めて残念である。仕方ないので茂出木理子氏のレポートを読もう。
http://p.tl/ByCo
2)「幸せな図書館」とは、「利用者にとって」は当然のことだが、あと2つある。ひとつは、働く我々にとって幸せであらねばならないということ。もうひとつは、図書館を擬人化したときに図書館が喜ぶ・満足しているという意味で幸せであるということ。
3)お茶大図書館では、「図書館は学生のために何ができるか」を常に考え、「前例がないからこそやる」ことを実践してきた。早い時点で「ラーニング・コモンズ」を名乗ったことで注目された。これは戦略的にやったこと。キャッチコピーは大事。
4)ラーニング・コモンズやキャリアカフェなどのキャッチーな事柄よりもっと実質的なこと、学生のILL 料金の無料化や、LiSA(Library Student Assistant)のプログラム、新入生全員へのノートパソコンの貸与、遡及入力などの様々な地道な取組みのほうが重要。
5)私が、2006 年4月にお茶大に着任してからスタッフに言い続けているのは「とにかく常に学生のことを考えなさい。それぞれのルーティンワークで学生に無関係なことをしていることは絶対にありえないのだから。」ということです。
6)「図書館は、ルーティンワークや今までの積み重ねが大事な職種だということは否定しない。ただ何か新しいことをやろうとしたときに前例のあるなしは考えるな。それから、これが前例になってしまうから危ないからやらない、というようなつまらないことを言うな」
7)「ラーニング・コモンズを開いたから図書館職員が元気になったわけではありません。単なるきっかけにすぎない。ラーニング・コモンズは決して目標ではありません。「図書館として何を学生のためにやりたいのか」をとばして「とりあえずラーニング・コモンズを作ってみよう」というのは本末転倒。
8)人の魅力。スタッフ自らが、どれだけ自分の職場を活性化するかです。上司に言われたから、お茶大のラーニング・コモンズを見学しに来ました、では、意味がないと思います。
9)ラーニング・コモンズや24 時間学習室の真似をすることは決して恥ずかしいことではない。しかし同じものを作ろうとしてもだめ。そもそもそれぞれの図書館には、財力やスタッフの人数、施設面積の違いがある。身の丈に合ったオリジナルなものを作ろうとすることは当然。
10)日本の大学図書館業界には、アメリカコンプレックスというべきものがあるように思う。アメリカでは○○、だからうちでも○○しないといけない。しかし、やればやったで、アメリカでやっていることと違う、未熟だ、というような意地悪を言う人が必ずいる。私は、ほっとけ、と言いたいですけど。
11)「ラーニング・コモンズは、リベラルアーツ教育を掲げた本学のまさに象徴の場である。したがって各部署が連携して運用すべき協働の場である」
12)「ラーニング・コモンズの要素として、IT 機器を完備することと合わせてサポートスタッフの存在が欠かせないと書かれています。お茶大のラーニング・コモンズには、大学院生がラーニング・アドバイザーとして常駐してくれています」
13)「改修後、最も効果が現われているのは入館者数です。2006 年と2008 年を比較すると約1.5 倍です。図書館に投資した効果が、わかりやすい数値で出たことになります。図書館の改革が、学生の満足度向上に貢献できたことは大変うれしいことです」
14)「お茶大図書館では、全員の仕事がとにかく図書館全体の目標に関係している、ということを徹底させています。図書館業務では、レファレンスやリテラシーが花形で人気ですが、それが安心して実施できるのも総務や会計担当が、きちんと事務処理をしてくれているからこそです」
15)「定例打合せを隔週に朝30 分、カウンター当番2名をのぞいてチーム全員で、館長から非常勤職員まで、立ってやっています。立ってやる理由は、座ってやる時間がもったいないから、会議室をなくしたから、座席順の序列がないからなどです」
16)「職場のトラブルは互いの仕事を知らないことが原因で起こることが多いようです。お茶大のような少人数のところで、それは大変困ることなので、チーム研修会を原則30 分でやっています」
17)「スタッフ全員が当事者になって無駄になっていた労力を活性化することも大事ですが、さらに必要なことは「金を取ってくる」ということです。大学が獲得した外部資金の間接経費を共通経費化して、それを電子ジャーナル経費に回してもらうことができました」
18)スタッフ間に発言・参加の壁を作らない。全員が参加していいという環境作り。何か課題があったときに、その解決に向けてベテラン職員も非常勤職員も同じようにアイデアを出す。これはベテラン職員にとってはプレッシャーです。でも、ベテランなんだからこれぐらいは頑張って欲しい。
19)何よりも大事なことは楽をすること。ルーティンワークだけでへとへとの状態から脱するということです。そのために人を使う、省力化するならどんどんする。お金で解決できるなら安いと思う。そういう発想の転換がポイントになります。
せっかく茂手木氏がお茶の水女子大学の図書館をソフト・ハードの両面で改革したのに、そうした成果や設備を一切学園祭で見せないで、受験相談する女子高校生しか図書館に入れず、しかも受験相談をするラウンジだけを開けているというのは異常である。お茶女は普通に図書館を見せるべきだ。茂手木氏が東大教養学部の図書館に転出してしまったので、情熱を失ってしまったのだろうか。
ラーニングコモンズと図書館戦略
~新しいことを楽しむコツ~
2010年7月16日
東京大学教養学部等図書課長
茂出木理子
http://www.library.tohoku.ac.jp/tohokuchiku/kensyufile/modeki.pdf
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