聖学院大学の「面倒見の良さ」の本質に迫る |
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(写真)人文学部日本文化学科 清水均教授(写真)の研究室。ドアには「在室中はいつでも気軽に来てください」と書いてある。文学、アニメ、マンガ、映画、お笑いなど、現代日本文化ならなんでも研究対象なので、先生の研究室はマンガやライトノベルなども沢山ありまるでマンガ喫茶だ。学生が置いて行った本も沢山ある。学生が普段から頻繁に研究室を訪問し、くつろいでいることがわかる。
1)「面倒見のいい大学、入って伸びる大学」を標榜する、埼玉県上尾市の聖学院大学に行ってきました。印象的なキャッチコピーですが、その実態はよく知られていません。面倒見がいいという言葉は、気をつけないとネガティブな印象を与えかねません。
2)どんな大学も、「少人数教育」と名乗っています。学生数数万人の大学でも、10数人のゼミや語学のクラスさえあれば、「少人数教育」を称します。聖学院大学の場合は、1学科の定員が100人で、20人以下の授業が54%、50人以下の授業が35%ですが、あまり知られていません。
3)教員が、学生の名前と顔を把握して、個人的な話ができるレベルの人間教育をしている、濃密なコミュニティが学内にあるということの良さや価値は数字には出ないため、「有名企業に就職」「公務員や難関資格に●人合格」などの記事にならず、書きにくいのは事実です。
4)聖学院大学は信念を持ってセンター試験に参加していません。センターに参加すれば、志願者は増え、偏差値は上がります。しかし、キリスト教大学なので日曜は礼拝をするため、試験監督として働けないということと、暗記や受験テクニックに優れた学生を集めたいわけではないことから不参加です。
5)センターに参加することは、予備校による大学の序列化にくみするものという認識もあります。声高にはいいませんが、センター試験に代表される、日本の大学入試制度そのものに異を唱えているのです。そして、大学の個性に合った学生に来てもらうための入試を模索しています。
6)東大を頂点に、センター試験の点数や偏差値によって、すべての大学は上から下まできれいに序列化されている。私たちはそう思い込んでいます。しかし聖学院大学に来ると、この大学はそうした価値観の外にあることが分かります。「下」ではなく「外」なのです。
7)聖学院大学に来る学生は、いわゆる偏差値的には高い人たちばかりではありません。そういう学生は多かれ少なかれ、教員、親、社会によって劣等感を植え付けられています。これに対し、明確に「君たちには価値があるんだよ」というメッセージを送ります。
(写真)政経GP推進室。3人の教職員が常駐し、学生が自習やグループ学習ができるラウンジもある。こうした設備はほかに欧米文化学科も持つ。大学によってはこうした「学科研究室」が充実したところもあるが、一般的にはまだまだ少ない。
8)分かりやすく言えば、黒柳徹子の『窓際のトットちゃん』のトモエ学園のような、理想の教育を考える大学なのです。むろん、それが理想的に実現しているのかと言うと疑問ではありますが、少なくとも就職率の高さや有名企業に入ったから偉いという風潮はありません。だから記事になりにくいのですが。
9)聖学院大学の「面倒見の良さ」の象徴は教員です。他大学との大きな違いとして、教員は多くの時間を学生との交流に裂きます。オフィスアワー以外の時間にも、学生が気軽に教員の研究室を訪問できます。教員は遅くまで大学に残り、学生との対話や交流に時間をかけるのです。
10)はっきりいって、研究重視の先生にはつらい環境です。ですから、他大学に移る先生も当然います。しかし、日本に一つぐらい、教員がその時間の多くを学生の教育や、プライベートの悩み相談にまで「奉仕(キリスト教大学なのであえて)」するような大学があってもいいのではないでしょうか。
11)卒業生の評価としては、職場に居るとなんだかなごむ人、いてほしい存在、人の痛みが分かるとよく言われます。これは、挫折を知っていること、失敗を経験していること、他人の痛みや悲しみが分かる感受性があること。これらを大学教育の中で自然に身につけて行くことができるのです。
12)いろいろあって、人によっては挫折感も持ちながら、入ってきた学生が、入ってきてからがんばる。それを教員が親身に温かく見守ったり、そっと助けたりする、こんな大学なわけです。この良さを宣伝するのは極めて困難です。しかし、親からの評価は高いそうです。「ウチの子が変わった」と。
13)教員が授業以外のところで、学生のために時間を割くこと。手取り足とりの面倒見ではなく、学生が悩んで研究室を訪ねてきたら、どこまでもつきあう、決して見捨てない。学生が一ミリオン行くというのなら、教員は一緒に二ミリオン行くのです(マタイによる福音書5:41から)。
14)何かすごい制度やシステムを導入しているというわけではないので、なかなかその価値が外に伝わりにくい、困った大学です。1年生は13人1クラスのアドバイザークラスに所属し、教員とお茶を飲んだりイベントをしたり悩みを相談したりします。このクラスは授業はありません。
(写真)ラーニングセンター(この日は休み)。3人の専任教員が月~金に常駐し、学生の学習相談に応じる。
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