首都大学東京の謎の部屋 |

「キャリアアップ」のバカヤロー 自己啓発と転職の“罠”にはまらないために (講談社 α新書 559-1B)
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1)首都大学東京の南大沢キャンパスの正門を入ると、すぐ左の講堂の入口に、「高大連携室/大学での学び発見室/就業力育成・自発活動支援室」という小部屋がある。長い名前だが、これで1つの部屋だ。ただし、本来の組織は別なものが同居しているらしい。
2)高大連携室の役割としては、首都大学東京の学生に、「母校で語ろう、母校訪問活動(薄謝あり)」を推進している。これは、大学生・院生が、母校の高校で大学生活を熱く語る活動で、受験生へのPRに絶大な効果を発揮している。
http://p.tl/zZT1
3)「高大連携室/大学での学び発見室」は入試相談室の役割も兼ねており、平日10時~18時、土曜14時~18時に開室しており、特任教員や院生スタッフが高校生の相談に応じている。入試情報の提供だけでなく、大学で主体的に学習していくための動機づけを行う。
4)新入生への「学び相談」もしており、大学生活の相談にも応じる。学生ボランティアが数人、専攻ごとに日時を決めて常駐する。高大連携といっても受験生を獲得するために高校にPRするばかりではなく、新入生を大学生にする高大連携も担うのである。
5)高大連携室/大学での学び発見室では、高校生に、好きな教科や将来やりたい仕事を考える、自分で考えて勉強を進める・自分で考えて課外活動に参加する、行きたい大学の実際の生活を知る、などの、大学生になるための情報提供をしており、高校生を教育する場、自ら学ぶ学生へと転換させる場だ。
6)この部屋ができたきっかけの一つに、入学した学生のなかに、充実した学生生活を送れなかったり、伸び悩む学生が増えてきたことがあげられる。学部学科選びや大学選びがうまくいかなかった学生、高校時代の過ごし方が偏っていた学生にその傾向が強いのだという。
7)有意義な大学生活を送るためには、高校生活と大学初年次生活の中で、自分が目指す方向、大学で学ぶ目標をしっかりと定め、その目標に対して「しなくてはいけないこと」を習慣化する努力が必要とされている。
8)しかし、実際の大学生活がどういうものなのか、受け身で知識を詰め込むことから、知識を自主的に活かし、創造していく学問の世界がどのようなものなのかを把握しなくては、自信を持って高校生活と大学初年次生活を有意義に過ごすことは難しい。
9)高校までの教育が知識の詰め込みで、大学教育が自ら学ぶ場だ、というのは大学側の主張に多いが、本当にそうなのだろうか。私は高校現場の人間ではないので分からない、初等・中等教育は本当に詰め込みなんでしょうか。大学(が言う)のような自発的な学びや創造的な教育は無いのでしょうか。
10)首都大学東京では、入学後に求められる「多様な経験を自主的に多く積む力」「多様なコミュニケーションを多く積む力」「努力する気持ちと習慣を身につけていく力」を養うために、高大連携に力を入れているそうである。高校生と大学初年次生に、主体性、創造力、学習力を求める。
11)そのため、先輩の学部学生と大学院生が大学生活について語りあう「学び相談コーナー、キャリア座談会」、大学での授業を体験する「オープンクラス、オープンラボ」、大学教員による「出前授業」を実施している。特に生命科学系では高校生を招いた実験体験などもする。
12)首都大学東京の松浦克美教授が語る、「大学で伸びない学生」とは、1.将来の職業による収入や安定性のことを考えすぎて、学部・学科を選んでいる。2.大学名や学部学科名を頼りに、主に偏差値で志望大学を決めている。(つづく)
13)3.高校での勉強を、受験科目を中心に進めていて、点数を上げるための勉強ばかりに慣れている。4.授業ではノートをとることばかりに努め、覚えるのは試験の前にすればよいと考えている。5.先生の言った通りや、今までのやり方どおりに、自宅での勉強を進めている。(つづく)
14)6.勉強ばかりが中心の高校生活を送っている。7.時々遅刻をしたり、睡眠不足になったりしている。8.もっぱら特定の友人としか、毎日話をしていない。(山内注・大学生になると、そうした特定の友人すらいなくなるタイプもいる。こうした学生は出席状況はいいのに成績が悪い傾向がある)
15)これに対し、大学で伸びる学生は、1.自分が好きな勉強、またはやりたい仕事をもとに学部・学科を選んでいる。2.自分の適性や希望にあっているかをよく調べて、志望大学を決めている。3.高校での毎日の勉強をしっかりやって、受験テクニック的な勉強は少しだけしている。
16)4.授業中は、その場でよく理解しようとしながら授業に集中し、時々自分から手を挙げて質問している。5.何をどのように行うかについて、自分でよく考えて自宅での勉強を進めている。6.クラブ活動、学校行事、クラスの活動などに積極的に参加して、時にはリーダー役も務めている。
17)新しいことを企画したり、実行したり、問題を解決したり、失敗したりすることが経験になるということである。7.朝自分で起きて遅刻せずに登校する。毎日7時間程度睡眠を取るなどの生活習慣ができている。8.多くの人たち(友人・知人・家族・先生)と、毎日いろいろなことを話している。
18)このように首都大学東京の高大連携室は高校生に対してとってもおせっかいである。が、併設されている就業力育成/自発活動支援室は、今度は在学生に対してあの手この手でおせっかいを焼いている。たとえばポートフォリオシステムだ。
http://jihatsu.uec.tmu.ac.jp/
19)就業力育成/自発活動支援室では、主体性育成プログラム、目的意識醸成プログラム、授業外インターンシッププログラム、ボランティア起業プログラム、仕事基礎力向上プログラム、自発活動力キャリア蓄積プログラム、メンター能力向上プログラムなどを用意している。
20)なぜ自発的活動が必要か、首都大学東京は「IT化、グローバル化、競争激化の中で、従来の仕事や定型的な仕事は減少した上に低賃金となる傾向が続いています」と身も蓋もないことを言う。起業・社会が求める人材は、新たな仕事やサービスを創出し、それを組織的に実現できる人であると。
21)「誰かの役に立つ自発的活動」の経験を、グループを組織して積み重ねることが、企業や社会の求める能力向上に役立ち、自発的活動の履歴と向上した能力を示すことが、就職活動に有利なのだと説く。そのために、学生が自発的な活動を企画・運営するのを支援していくのである。
就業力育成の話は長くなりそうだが、書く力が尽きたので、今日はここまで。(終わり)
(参考)
国際性豊かな人材を育成するための新たな取組を開始します!
グローバル・シチズンシップ・プログラム(GCP)
http://www.tmu.ac.jp/news/topics/3190.html


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