4年ぶりに定員割れを脱した愛知東邦大学 |
2)そこで、学生実態の分析、在学生のヒアリングを行いつつ、学生募集戦略を考えなおすことにした。ヒアリングの結果浮かび上がってきたのは、学生の傾向として、入学目的があいまいで、大学を選んだ理由も「学力程度」が最も多いという実態だった。
3)入学定員の確保もままならないが、大学で学ぶ意思が定まらない学生を入学させても、中途退学者を減らすことはできない。全入大学では、なぜ大学で学ぶのか、なぜこの大学で学ぶのかをしっかり考えて進学してもらわなければ、大学教育の前提が成立しない。
4)愛知東邦大学では、「獲る学生募集から育てる学生募集」への転換を合言葉に、AO入試を教育改革の起点として位置づけ、改革に取り組んできた。その結果、2011年4月入学者は、入学定員350名のところ352名と、4年ぶりに定員を確保することができた。
5)量の点だけでなく、質の点でも、全員が入学式に参加する、教員が「今年の新入生は教えがいがある」と口々に言うなど、教職員の意識改革にも大きな影響を与えている。同大学がAO入試で受験生とどのようなコミュニケーションをはかり、彼らを変えていったのか。
6)同大学は入学定員350名のうち、100名近くがAO入試で入学する、もはやAOが入試の主力といっても過言ではない。同大学では、学外の相談会で一人ひとりの高校生に親身になって話し、相談に乗る。そしてオープンキャンパスなどで大学を見に来てくれるように促す。
7)オープンキャンパスに来る生徒は不安で一杯だ。そこで在学生の先輩が一緒に回ってくれる。その中で会話が弾み、どんなに学生や教員がフレンドリーで、相談に乗ってくれて、自分のことをきちんと見てくれて、安心して過ごせる環境があるかを伝える。
8)愛知東邦大学は、説明会や相談会、オープンキャンパス、AO入試といった、まだ自分の大学の学生ですらない高校生に対し、「教育」をするのである。同時に、密度の濃いコミュニケーションをとることで、本当に受験生に納得して選んでもらえるような大学になろうとしている。
9)はっきりいって名古屋の私大は激戦区だ。愛知東邦大学以上の大学は山のようにある。そんな中で、受験生が、「自分のことを考えてくれる」「単なる受験生ではなく、一人の人間として見てくれている」「こんなに真剣に考えてくれるのだから、自分も変わりたい」と思わせる、すごい戦略である。
10)『先生と学生の距離が近い』『少人数教育』とどの大学も言う。だが、それをちゃんと高校生に伝えている、伝えようとしている大学があるだろうか。「受験生が何万人集まったから偉い」という価値観とは違う世界が、確かに存在する。説明会で会った職員個人に惹かれて志望する学生もいるのだ。
11)「信頼できる人に出会える、人間関係が構築できる」ことを、大学の売りにするという方法は、現代の高校生のある一部の層には、強く響くことだろう。AO入試に臨む前に、何度も面談し、悩みや不安なども相談できる信頼関係を築きあげて入試に臨む。合格通知に手書きのメッセージを書く。
12)小規模大学がなぜ、マンモス校とまったく同じ入試広報戦略をとっているのか、意味がわからない。それは必ず負ける道だ。教員が旧帝大出身者ばかりだからか、それとも広告会社に言われるままのパンフレットを作っているからか。そういう大学は、愛知東邦大学の成功例を参考にしても良いだろう。終
(過去ログから) 4/20 愛知東邦大学は再生できるのか?!
http://tyamauch.exblog.jp/13492932/
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