9/9 君は「国際大学」を知っているか!? |
1)新潟県南魚沼市に、「国際大学」という大学がある。全寮制・授業はすべて英語の大学院大学であり、一般の知名度は限りなく低い。しかし、一度は行かねばということで、私はキャンパスに足を運んだことがある。
2)この時、案内してくださった、学生センター事務室・学生募集担当の平澤文子氏から、しょっちゅう、東京で開催される説明会のメールが来るので、一度ちゃんと話を聞いてみようと思い、六本木の東京事務所で開始された説明会を聞いてきた。
3)国際大学(IUJ)は、世界50カ国から留学生がやってきて、日本人学生はわずか1割しかいない環境である。国際関係学研究科修士課程(定員100名で、日本人は20名程度)と、国際経営学研究科修士課程(定員75名で、日本人は30名程度)の2研究科がある。
4)全学生は、南魚沼市のキャンパス内の学生寮に住んでいる。海外からの留学生は、JICAやアジア開発銀行の奨学金を得てきたアジアのエリートや高級官僚など偉い人が多い。寮は単身寮と世帯寮があり、バストイレは個室にある。キッチンは共用。
5)世界中から来た仲間たちと同じ屋根の下で生活することで、異文化間でのコミュニケーション能力を向上させる。図書館は夜0時まで、PCルームと自習室は24時間開いている。勉強はとてもきつく、英語も大変なので、学生は徹夜もしばしばで、
6)だいたい夜2・3時ぐらいまでは勉強しているのが普通。教員はほとんどがPh.D取得者かビジネス経験者。卒業生は110カ国3000人で、強固なネットワークを誇っている(後述)。
7)国際関係学研究科は、国際関係学、国際開発学、公共経営・政策分析などを学ぶ。なかでも国際開発学は経済学と数学・統計学を基礎から叩き込まれ、MBA並みにハード。国際開発学だけでなく経済学修士も取得できる。
8)公共経営・政策分析プログラムは、1年次に経営学、行政学、財政学、会計学などを学び、2年次は政策立案能力、政策実施評価能力、組織管理能力を高める応用科目を学ぶ。日本人学生は1割しかおらず、授業は英語という、否応なしに国際的な環境。
9)教員はほぼ全員が欧米一流校のPh.D取得者(ペンシルバニア大学、コーネル大学、エセックス大学、ミシガン大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなど)。IMF奨学金プログラムに、私立大学で唯一選ばれている(他には東大、一橋、政策研究大学院大)。
10)国際経営学研究科はいわゆるMBAで、ダートマス大学エイモス・タックスクールの協力を得た、日本初の英語によるMBA。1年次はファイナンス、マーケティング、会計学、経営学、ITの基礎を学び、2年次は個々の目的に合った選択をして研究を深める。
11)MBAは修士論文はなく研究レポートだが、1年制のEビジネス経営学プログラムには修士論文がある。英『エコノミスト』誌のMBA世界ランキングで日本で唯一ランクインしている(2010年で8年連続)。
12)同誌によると、「就職支援の充実」世界29位、「修了後の初任給」世界36位、「修了生の国際性」世界29位、「修了生の活躍ぶり」世界52位。こちらも日本人は1割なので、授業ではほとんど外国状態である。
13)教員は全員がPh.D取得者で、その9割が欧米一流校(カーネギーメロン大学、シラキュース大学、ペンシルバニア州立大学、ミシガン大学など)の出身者。レクチャー+ケーススタディという授業形式が多く、グループワークなどもたくさんやる。
14)このほかに、入学予定者を対象とした、夏期英語集中講座がある。2カ月で50万円。大学院レベルの講義、演習、ディスカッション、ケーススタディ、レポート論文作成に必要な英語能力の習得を目的としている。これなしでいきなり入学だとかなりきついらしい。
15)授業は週23時間で、1クラス12名の少人数制で行われる。受講生の半数以上は外国人留学生。読む、書く、聴く、話すスキルのほか、エッセイが書ける、プレゼンテーションができる、講義ノートの取り方まで、丁寧に教員が1対1で指導をする。
16)この夏期プログラムは、入学予定者だけでなく、企業派遣や、高校の英語教員も参加している。大学院の普段の授業は、必修だと1クラス50~60名だが、プレゼンやディスカッション、グループワークなどが多く、特にグループワークは授業外学習がかなり多い。
17)選択科目は1クラス15~20名程度になる。修士論文の指導は、教員1人が7~8名の学生を担当するので、マンツーマンに近い指導になり、指導教員に授業外で指導を受ける機会も多い。授業の雰囲気は、いつも手を挙げて意見や質問を言う感じである。
18)2010年度現在、専任教員36名に対し、全学生数は302名のため、教員1人あたりの学生数は8.38人。ハーバード大学並みである。特に、英語教員4人、日本語教員4人も専任で抱えており、他大学でよくあるように非常勤だらけということはないそうだ。
19)奨学金で学費が半分になる制度があり、日本人の申請者の8割は、授業料の半額免除を受けている。普通に学費を払う場合は、授業料は年間190万円、生活費は月10万円(寮費や食費など)かかるので、だいたい年間310万円ほどかかる。
20)入試は、英語能力はTOEFLiBT80点、PBT550点、TOEIC729点、IELTS5.5ぐらいが合格の目安。このほか国際経営学研究科では英語エッセイ500字、英語面接、GMAT提出(MBAのみ)など。国際関係学研究科では研究計画書が重視され、これに英語面接など。
21)同窓生の活動が大変活発で、なんと卒業生3000人中、110カ国2800人は連絡先を把握しており、学生は互いにメールなどを出して連絡を取り合うことができる。見知らぬ後輩から就職相談も来る。卒業生・在学生全員が人脈になっている大学なのだ。
22)これはすごい。というか、日本のほとんどの大学は、なんてダメなんだろう。全卒業生の半数にあたる1500名が、就職支援のアドバイザーとして登録している。30カ国に40の支部があり、同期代表者を決めて、毎年東京で同窓会をやる。
23)卒業生が理事や評議員になる制度もあり、これも日本よりはアメリカの大学に近い。日本の大学は、卒業生が大学経営に参加することを好まない風潮がとても強く、閉鎖的に感じる。だから寄付金が集まらないのだ。
24)卒業生は、自分のメアドや連絡先を、データベースみたいなのに自分の意志で登録する。それを、在学生や大学側が見て、連絡を取ったりできる。なぜこんな簡単なことが、日本のほとんどの大学ではまったくできないのか。実に腹立たしい。
25)実際、このネットワークにより、世界中で円滑なビジネスができる。たとえば、いきなりウズベキスタンで仕事をすることになっても、同国に居る卒業生(しかもその国の上流階級)と事前に交渉できるので、いろんな意味で根回しができて仕事がしやすい。
26)2年間合宿状態で、24時間勉強できる環境。世界中(2010年度は46カ国)の留学生が8~9割を占める、しかも各国のエリート層、彼らとのプライベートでの交流、強固な修了生ネットワーク、海外出身一流教員、全学生数わずか300人など、すごい環境である。
27)就職は、立命館アジア太平洋大学のようなオンキャンパス・リクルーティングがあり、キャンパス内で説明会や面接もしてもらえる。企業37社と「グローバル人材パートナーシップ」を結んでおり、企業派遣の学生を受け入れたり、インターンや就職で密接に交流する。
28)この37社は、アクセンチュア、インテリジェンス、SMBC日興証券、オリックス、花王、コスモ石油、小松製作所、住友商事、第一三共、武田薬品工業、中外製薬、テルモ、東京エレクトロン、東京電力、東京証券取引所、ニコン、日本IBM、日本オラクル、
29)日本GE、日本政策投資銀行、JT、NTT、日本マイクロソフト、パナソニック、JR東日本、日立製作所、ユニクロ、ファイザー、富士ゼロックス、富士通、みずほコーポレート銀行、みずほ証券、三井住友銀行、三菱化学、ヤマト運輸、横河電機である。
30)修了生の就職先の業種比率をみると、やはりこの大学の強さがわかる。国際関係学研究科は、金融22%、国際機関21%、政府・官公庁16%、教育・研究9%、コンサルティング7%、進学6%、メディア6%など。国際経営学研究科は、金融・保険35%、
31)コンサル19%、貿易・卸・エネルギー・機械12%、インターネット・モバイル・通信・IT・コンピュータ関連11%など。MBAの方が進路が多岐にわたっているが、特に国際関係学研究科は、同内容の学部教育の大学よりも、就職先がワンランク上の世界である。
32)こんな国際大学だが、世界から、また一流企業からの評価は極めて高いものの、日本国内での知名度の低さは超弩級である。やはり日本人1割は少なすぎると考えているそうで、せめて2~3割にしたいとのこと。ただし、学部卒でいきなり来ても、経験不足で、
33)ディベートやグループワークについて行くのは難しいかもしれないという話だった。もちろん、学部卒での進学者もいるので、やる気のある人は挑戦するといいだろう。国際大学は30年の歴史があるのだが、名前が類似校が多いのと、大学院大学であることが災いして、
34)日本での知名度は低い。もし、この教育や入試制度を30年前から学部教育でやっていたら、秋田の国際教養大学に匹敵する評価を一般から得ていたのではないか。30年もコツコツとグローバル人材を育成してきた、真の国際派大学に、もっと光が当たってもいいだろう。
35)幸い、2013年には軽井沢に小林りんさん@linkobayashiのインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢ができるので、http://tyamauch.exblog.jp/16490520/ せっかく近いのでいろいろ交流をしてもらいたい。(END)
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