【大上さん確認版】北京のMBA、長江商学院(その2) |
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ジェニファーさんインタビュー終わり。続いて、MBAマーケティング担当のロバートさん(欧米系)にキャンパスを案内してもらう。キャリアマネジメントセンターという就職課の話や、入学すると全員がiPadがもらえるといった話を聞く。
Robert Welchさん
International Marketing & Admissions Manager
MBA保持者
公認の就職サークルがあり、それぞれに卒業生のメンターを付ける。サークルは11あり、コンサルティング、アセットマネジメント、マーケティング、ヘルスケア、Toast Master(スピーチやプレゼンテーション能力を育成するサークル、弁論部など) など。EMBAの卒業生16人がMBA生のメンターとなる。メンターはボランティアで、現在は1人のメンターが3人受け持っているが、いずれは1対2の比率にしていく。「成功者が指導者」の体制。一緒にサッカーをしたりカラオケに行ったりする。
ほとんどの部門のオフィスを見学したが、びっくりするぐらい職員の労働環境が良い。
●夏蓮さんに聴くMBAの話
続いて、ロバートさんの上司の夏蓮さん(MBA&FMBA副主任)からお話を聞く。夏蓮さんはMBAプログラムの担当のリーダーだそうだ。
長江商学院は、李嘉誠(りかしん)氏という香港の大富豪の基金会から多大な援助を受けて2002年に設立。全世界のために新しい企業家を作り出すことを目標にしており、北京、上海、深センにキャンパス、香港、ロンドン、ニューヨークに事務所を持つ。
長江商学院の差別化戦略。1.世界的教授陣。米国のテニュアがないと教授になれない。ペンシルベニア大学ウォートンスクール、イェール、スタンフォード、UCバークレー、MIT、コロンビアなどから、各分野のトップの教員を引き抜いてきた。
教授陣は圧倒的に「研究重視」。米国以上の待遇で引き抜いてきた上に、研究環境も万全に整備する。教授の仕事は研究と論文であり、契約以上の授業を教えるのは別料金が発生。研究面においてアジアナンバー1のMBAを目指している。
2つ目の特徴は、ケーススタディで、中国のケースが豊富であること。2003年以降、200ほどのケースを作ってある。3つ目は、儒教など人文や法律なども教えていること。4つ目は、世界中の人と学ぶプラットホームであること。MBAは英語、EMBAは中国語で講義をする。
交流がある大学は、コーネル、コロンビア、ハーバード、UCバークレー、スタンフォード、ウォートンスクール、INSEAD、IMD、ロンドンビジネススクール、ソウル国立大、ケンブリッジ、シンガポール国立大など。
欧米だけでなく、モスクワ、インド、ブラジルなどの大学とも交流がある。「オーバーシーズ・モジュール」という、海外に交換留学に行って学ぶジョイントプログラムが充実。中国でのビジネスを学ぶため、海外のMBAからも学生が来る。欧米のトップと中国のトップが共に学ぶ。今後はWディグリーも計画している。
卒業生の強いネットワークも大きな特徴。EMBAは2006年以降だけで5000人の卒業生。MBAとFMBAは1000人。卒業生の勤務先が、中国のGDPの15%を占めている。
フルタイムの普通のMBAは、2003年に始まった。1クラス60人。25%が外国人学生であり、授業は全部英語。14カ月で学位を取得するスピードMBAだ。2011年現在、平均年齢は29歳、企業勤務経験6年以上が受験資格、70%が男子学生、平均GMAT680点。14カ月で35万元という学費は中国一高い。「中国で一番いいチャンスをものにしてほしい」と夏蓮さん。本当に優秀な人にはスカラシップを出している。
「働きながらMBAとかありえない。うちはフルタイム」夏蓮さん
学生の3~5割は交換留学する。
学生から教授への要求は、「必ず中国のケースを使うこと。しかも最新のケースを使うこと。3週間の「チャイナモジュール」というプログラムでは、学院長はじめ企業人など名立たる人が教え、一般人も有料で聴講できる。
実地訓練も重視、5週間のサマーインターンがある。これは主にEMBAかCEOプログラムの卒業生が経営する会社に、教授1名+学生4-6人で、内部に入り込んで特定の問題解決プロジェクトに取り組む、DCP(Diversified Consulting Project)といわれるものである。2013年は期間に余裕を持って、4月から8月に掛けて4件実施する。
学生たちは、金融やコンサルなど、世界のトップ500企業に入りたいと言っている。ただ、これからは中国のトップ企業に行きたいという声も増えてくるだろう。カリキュラムは毎年変えていく。2週間全員が北米のMBAに行くプログラムもある。コーネル、コロンビア、ハーバード、UCLA、UCバークレー、シカゴ大など。早稲田でも講義を受ける(同時通訳付き)。2・3年先にはジョイントディグリーもやりたい。
FMBAは金融に特化したMBA。これはパートタイムで土日だけ講義を受けるので、学位取得に2年間かかる。中国語での講義。60%の人はすでに金融業界の人。40%の人は金融に近い仕事の人か、金融業界に行きたい人。理論(セオリー・学術)+手法(メソッド)+知識(ナレッジ・実務)を学ぶ。北京、上海、深センの各キャンパスに50人で1学年150人。学生は中国人がほとんど。学費は45万8000元ととても高いが世界一流の先生が教育に当たる。学生の多くは自腹で来る。
中国の銀行は北京大や清華大の数学科出身者を好んで採用し、彼らは金融をちゃんと学びたいとFMBAに入って来る。中国では学部で金融を学んで銀行に入るという流れはない。つまり経済学部や経営学部だから金融業界ということはない。彼らは転職希望だったり、もっと学術的・理論的に金融を勉強したいと言って入って来る。
EMBAの学生は5月(325人)と10月(260人)に募集。約600人。EMBAは民間企業45%、国営企業25%、外資系企業25%、政府高官5%。平均18年の仕事経験、平均年齢は40歳だが、8年の勤務経験と5年以上の経営層の経験があれば入れる。7割が企業のトップ。2年間、月4日(木金土日)に通う。地方から飛行機で来る人も。学費は65万元。春は北京4クラス、上海1クラス、秋は北京3クラス、深セン1クラスを開講。北京の社長はほとんど取得してしまったので、今は全国から集めている。論文を書いて修士号を取得する。
世界的な認証評価を得ているが、それはもう重視していない。世界的な大学のランキングには積極的に参加しない。それは西洋のロジック。人の後ろについていく生き方。私たちは違う方向を目指す。
卒業生重視。「強大的校友群体」頻繁、豊富、多様的校友活動、長江文化、帰属感がキーワード。MBAは論文必修。EMBAも論文を書く。書かないと国家の資格としての学位が取得できない。
全球最佳教育資源。米国より待遇が良く、中国の役に立つ教育と研究。若い先生をここで育てていく。学生のほとんどはすでに社会的に成功した人。
培養企業家的人文精神。6日間の社会奉仕が必修。内容は自分で作る。「お金ではなく時間を使いなさい」。貧しい地区の子供の支援や、障害者、老人支援など。人文を重視し、哲学、文学、儒教、孫子などを学ぶ。ソクラテスなど西洋哲学はやらない。
企業家の人格を作る教育。人の値打ちを上げる。リーダーの人間力。歴史、宗教。李嘉誠先生はフォーブスで60位以内に居る唯一のアジア人。
学生は幼稚園児のようにニックネームを付けて呼び合う。社長やCEOが、くまちゃんとかうさぎちゃんとか黒虎ちゃんと互いを呼ぶ。社長と言う肩書を捨てる。
ケースセンターのほか、グローバル研究センター、イノベーション研究センター、投資研究センター、資産管理研究センター、企業の存続可能性研究センター(CRMなど)、もつくる。ケースセンターでは教授の指導のもと、5人の正職員と5人のインターンが1人が月に2~3本のケースをつくる。せかされて1人が1日で作ったこともある(笑)。半分は大学院生のインターン。フルタイムの仕事でパートタイムの給料。学生は教授に指示されて来た。インターンは夏休みはフルタイム、他は授業の無い日に来る。
夏蓮さんのインタビュー取材おわり。
(つづく)
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