オーリン工科大学 |
オーリン工科大学の使命は、「よりよい社会を築くため、人や社会のニーズを知り、その解決策を構想し、創造的なビジネスにつなげられる革新的な人材を育成する」こと。
オーリン工科大学は、工学分野は自分たちで、人文社会・芸術系はウェルズリー大学で、ビジネス系はバブソン大学でという「オーリンの三角形」で、工学以外は他大学に協力を仰いでいる。
オーリン工科大学は、科学の応用が中心で、産業から遠い旧来の工学教育への不満から、ゼロから作る新設大学として誕生した。学生数は1学年約80人、女子が約45%、教員1人に対して学生9人、3つのコースがあるが学科には分かれていない。豊田工業大学と似ている。
カリキュラムはデザイン力重視。新しいものを作り上げる能力をいかにつけるかが追究される。他大学では数学や科学の基礎的な学問を学んでから工学に入るが、1、2年生が興味を失ってドロップアウトしがち。そこでオーリン工科大学は1年生から工学を始め、早くからものづくりに触れて学生が自ら学ぶ意欲を持たせる。聴くだけの講義はほとんどなく、スタジオという部屋で数人ずつ実験をしたりする。チームプロジェクトも必須で、異分野の人と協力する力を養うため、1年生のうちから新しいものを作ったり、町の人にインタビューして課題解決をしたり、様々なプロジェクトに参加したりする。教員側もチームで指導(公立はこだて未来大学みたいだ)。
4年生は数人でチームを組み、1年がかりで「スコープ」というプロジェクトに取り組む。スポンサー企業が提案した課題に対し、学生チームが自分たちで計画を立て、ものを完成させる。学生たちは同時並行でビジネスも学び、製品化させることもある。これは工学院大学グローバルエンジニアリング学部のECPに似ている。
「個々に見れば、日本の大学ですでに取り組んでいるものもある。だが、デザイン志向や参加型の授業が、ここまで全科目で徹底されているところはないだろう」という、小林信一・筑波大教授のコメントは、まさにその通りだ。
新しい工学教育のキーワードは「デザイン志向」と「チームワーク」。私は数年前からこのことには気づいていた。フィンランドのアールト大学の事例(工科大学、経済大学、芸術デザイン大学が合併)も知っていた。
デザインがすべての学問を包括する
http://tyamauch.exblog.jp/13077293/
東京大学i.schoolでロジャー・マーティンの講演
http://tyamauch.exblog.jp/16473443/
日本は2005年に、工学教育の国際認定機関に「デザイン志向の教育の不足」を指摘されたのだという。この分野は徐々に改善されているが、異分野間のチーム作業の不足が指摘されている。
オーリン工科大学のリチャード・ミラー学長は、朝日新聞の取材に対し、娘のバイオリンの才能教育「鈴木メソード」が教育のヒントになったという驚くべき発言をしている。それは。学生に自ら学びたいと思わせる動機づけの方法で、3歳の楽譜も読めない子どもにバイオリンを聞かせると関心を持って自ら学ぶようになるというもの。工学も同じで、ロボットづくりにのめりこみ、自らどんどん学んでいくのだという。人間や社会への深い理解も欠かせない。人文社会や経営系の大学との連携は、そういう意図があるのだろう。
朝日新聞の記事を読む限り、そんなに独創的な大学と言う気はしない、AERAのカルテックの記事や、シンガポール工科デザイン大学、そして私自身が取材してきたMITのほうが刺激的だった。
2/20 AERAカリフォルニア工科大学
http://tyamauch.exblog.jp/17220368
12/3 シンガポール工科デザイン大学
http://tyamauch.exblog.jp/18226334/
しかし、こうしたオーリン工科大学の取り組みは、むしろ中堅大学には逆に名門校の事例よりも役立つかもしれない。
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