東京デザイナー学院を取材する |
「親が知らない進学のヤバい話」
毎月第1・3月曜発行。
お茶の水の東京デザイナー学院を取材してきました。お話を伺ったのは次の3人です。
北代(きただい)雅典 課長
竹田卓司 マンガ科学科長
髙橋翼 プロダクトデザイン科学科長
東京デザイナー学院の教育の特徴は、「教育イベントと産学協同」の2つ。教育イベントとは、東京ビッグサイトや幕張メッセなどで開催される、デザインやゲームなどの大規模な展示会などへの出展・学内イベント他、社会に出る前に実際のところを経験してみよう。という目的だ。産学協同とは、様々な企業の商品開発に、企画段階から関わって勉強しようというもの。同校には多彩な12学科があり、イベントの参加などでは、希望者の学生を募り、会場づくりから、仕事がどう進むのかを、学生間の交流を通して学ぶ。ここで自信がついたモチベーションの高い学生が、周囲の学生をも変えていく。産学協同の企業側のメリットは何か。それは、商品開発において、実際にデザインを学んでいる学生の力を借りることだ。学生の案を買い取ることもある。専門学校のゴールは就職である。そのため、学校の方で優秀な学生を選んで産学協同に参加させる。学科全員が関わる企業もある。
ゲームクリエイター科は、即戦力を作るので、わりとすぐに採ってもらえる。ゲーム業界はインターンや産学協同も盛ん。ソーシャルゲームの流行で人が足らない。1日1件のペースでインターンの誘いが来る。仕事の依頼までも直接来る。多すぎて断るほどだという。ゲームクリエイター科は1学年100人中40人はインターンに参加する。期間は2週間から3か月、就職に直結している。学歴は一切関係ない。面接とインターンで採用する。100人中75人は就職する。そのうちゲーム業界は60人くらい。5年ぐらい前は、就職率が20~30%の時代もあった。そこで就職対策を考えて、グループ制作を増やしたり、ゲームショーに出展したり、企業から依頼を受けたりするようにした。ゲームの専門学校はたくさんあるが、良い学校を見抜くには、学生の作品を見ればいい。特に学生のポートフォリオだ。質の高い作品を学生が作れているかどうかは、ゲームで目が肥えた消費者である高校生ならわかるだろう。
ゲーム会社は厳しい労働条件だと思われているが、最近の会社は言われるほどきつくない。きついだけの会社では良い人材は集まらない。むろん、納期の直前は徹夜になったり、若いうちは無理をすることもあるかもしれないが、それはどこの業界でも同じだ。
就職できない学生の理由の一つは、スキルが一定レベルに行かないことだ。どうしてもこうした学生はいる。しかし、高校では本気でゲームを仕事にしたい生徒など周囲にいなかった学生が、ここに来れば誰もがゲーム業界を目指している。入学後に伸びる生徒もいる。
ゲームを本気で仕事にしたいから来ている学生が増え、大学に落ちて仕方なく来るタイプの学生は減っている。高校の進路指導の現場も、生徒の自主性を尊重する方向に変化しつつある。大卒で管理職になると、本当に自分のやりたい仕事ができなくなる。あるいは、大きな組織では与えられたポジションの仕事しかできなくなる。そのため、小さな会社のほうがいいこともある。好きなことができるからだ。自分たちで仲間と独立することもある。
マンガ科は1学年80名。就職希望者はほとんどいない。在学中に出版社の担当者が付くのが目標。ビジネスとしてマンガを学ぶ専攻も作ったので、今後はマンガ関連業種への一般的な就職も選択肢に加えていく。
プロダクトデザイン科は1学年55名。大卒者や社会人が学生の半分を占めている。就職率は79%。雑貨のデザインなどの仕事が多い。独立して働くという概念はあまりない。プロダクトデザインは、作品ではなく「商品」を作る。学生にはそこを勘違いしないように教えている。私たちは大量生産品を作っているのだ。
アニメーション科について。アニメ業界が厳しい労働条件なのはもう知れ渡っている。そこで同校は、20年~30年と業界で生き残れる人材を作ろうと考えている。それには、ひたすら描くことだ。2年間で自分の背丈までデッサンを描く。例年の入学者は約80名で、卒業するのは60名程度。そのうち約88%が就職。ほとんどがアニメ業界だ。学生たちには、甘い世界じゃないことは、在学中にさんざん言って聞かせている。実力と継続力のある卒業生は長く生き残れている。アニメ業界では、「ウチの卒業生の携わっていない作品はない」と言われている。これも、高校生は、在学生たちの卒業制作の作品の質を比較して学校選びをしてほしい。2年間の学生生活は相当厳しいと覚悟してほしい。とのこと。グループ制作で、1本の5~10分間のアニメ作品を完成させる。「どうぞほかのアニメ専門学校も比較してみてください。現場力の違いがわかるはずです。」とのことだ。
アニメーション科の取り組みに、教育イベントというものがある。これは、日本の昔話をアレンジして子供向けのアニメ作品を作って、地方をキャラバンして上映するものだ。これは卒業作品とは別に作る。学生たちは夜9時10時まで学校に残ってアニメ制作に没頭する。今年度で38回目となるキャラバンは静岡伊豆地方で実施予定です。
今、人気が高いのはイラストレーション科で、例年の入学者は約140名。卒業するのは120名ぐらいで、就職率は60%。ゲームやグラフィックデザインなどの業界が多い。残りの40%は自己開拓だが、正直、就職率は上げていきたいと考えているという。入口(入試、高校生)の評価は高くても、出口(就職)はこれからという世界だろう。(つづく)
全文は、6月17日発行のメルマガで公開します。メルマガでは、就職支援体制や、中退予防についてもインタビューしていますので、その話を中心にお届けします。
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