IGS福原社長の話を聞く |
福原正大 Twitter:@masa_igs
Institution for a Global Society株式会社 代表取締役社長
http://iglobalsociety.com/
慶應義塾高校、慶應義塾大学経済学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。企業留学生として、INSEAD(欧州経営大学院)にてMBA、グランゼコールHEC(パリ)にてMS(成績優秀者)を取得。その後、世界最大の資産運用会社 Barclays Global Investors に入社。日本人としての最年少Managing Directorになるとともに、日本における取締役を歴任。その間、筑波大学にて博士号(経営)を取得。2010年5月、Institution for a Global Society株式会社を設立。
今の日本の高校からは、教員の指導だけではなかなか海外の大学には行けない。だから私たちのようなスクールが必要なのです。高度成長期の日本の教育は、キャッチアップとしては良かった。終戦からバブルまでの平均経済成長率は7.1%(1945~1991)もありました。1992~2011は0.7%です。私が社会人になった頃から、落ちていくばかり。失われた20年です。この間に、人件費や福利厚生は削られていき、コストは削減。1991年には2.1%だった失業率は2012年9月には4.2%と2倍になりました。
実際、若年層に限ってみると失業率は10%を超えていて、就職活動に早期に失敗すると労働人口に入らないフリーターになる人が多く、私が大学で教えている実感として、若者の失業率は10%を大きく超えているだろう。もっとずっと苦しい。若者も正社員になれなくなっています。就職活動に失敗すると、自分を全否定されたような気持ちになってしまう。2011年の貿易統計では、2兆5647億円の赤字です。膨大な債務・財政赤字になり、経常収支赤字が重なっていきます。日本の戦後成長を支えた産業が厳しくなってきています。中国やインドは高成長していき、各国とも日本のGDP規模の5~10倍になることが予想されています。日本の若い世代は、こういうマクロ環境でどうしたらいいのか。一人ひとりの子どもが輝くのは、今までのような教育ではありません。
1990年ごろの日本は国力があり、日本人というだけで世界で高く評価されました。今は日本の経済力、国力が落ち、2050年にはさらに今よりも小さくなります。GDPはインドネシアにも抜かれると言われています。こうした時代には、個人が力を付けていく
しかありません。教育によって、個人を伸ばすのです。残念ながら日本の大学の教育水準は世界的にも低く、ほとんどの中等教育は、塾も含め、東大早慶を頂点とした教育システムになってしまっています。少なくない高校が、海外進学にアレルギーがあり、日本の大学以外の進み方をご存じないのです。私たちは、そこに情報を提供しようと考えています。
いい大学に入るのが目的ではなく、世界のために、社会のために、何をするか。どこの大学に行くか。世界で活躍できる人材を作りたいのです。日本の人口は1億を切ると言われていますが、世界には70億もの人がいるのです。
私たちは、受験塾ではありません。グローバルリーダーを作ります。日本の大学だけではない選択肢を提供したいのです。日本の教育は、基礎知識のインプットに関しては素晴らしい水準です。日本の中学受験は世界的にもレベルが高いと言われています。でも、インプットだけなのです。これを、アウトプットもできる人にしていく。学校がやらないのなら、ウチのカリキュラムでやります。私たちの塾では、まず自己理解(自国文化への深い理解)、グループ思考、コミュニケーション力、多様性、思考力(哲学、論理力、健全な批判力)などを養います。
「15歳までに多国籍、多文化の中でリーダーシップを体験するべき」という、米国IBMの元会長で21世紀に成功する人材教育を考え続けたパルミジャーノの言葉があります。英語以上に、異文化体験も重要なのです。答えは一つではない。米国の大学受験にもインプットの試験はありますが、2次試験は考えさせる問題を出します。例えばこんな例を出しましょう。2011年のフランスのバカロレアの試験です。1行問題に回答4時間、持ち込みは自由です。
「自由は平等によっておびやかされるか」
これは思考力、アウトプットの力を見るものです。米国大学の2次試験もこうした考え方に基づいています。ところが東大は2次試験もインプットを問い続けます。漢字を書けとか、語句説明をしろとか。私たちは日本の大学や教育を否定はしません。ただ、子どもたちの選択肢を増やしたいと考えています。その選択肢の一つが、海外大学への進学なのです。
例えば、世界の大学の中でも評価の高いハーバード大学は全寮制で、世界の未来のトップリーダーたちと、共に過ごし、リーダーシップを学びます。ハーバードで最も重要なのは、教授ではなく、「場の提供」だという考え方があります。すなわち、寮での4年間です。世界最高のリーダーになる若者たちが集まっている環境です。若い時に、親元を離れ、共同生活をする。各授業の負荷は高く、これでもかという読書量・勉強量です。1科目が週3回の授業と1回のセクションで構成され、教授やチューターからの個別指導があり、宿題、課題提出、議論などがあります。1科目の密度が違うのです。寮では朝食も夕食も仲間と一緒で、議論をします。夜は2時~4時まで勉強することは普通です。多くの日本人はつ
いていくのに精いっぱいで、遊ぶ時間がないほどです。
でも、人は楽しかったことより、苦しかったことを覚えているものです。だから、大学に対する満足度は高いのです。勉強したこと、努力したことが自信になるのです。日本の優秀な大学生は、大学がつまらないから、アルバイトやボランティアやNPOに力を入れています。
私たちは、哲学教育に力を入れています。リーダーシップを学ぶためには、哲学の本を読むことです。そして、自分なりの哲学を持って議論をすることです。日本の中等教育もインプットはしっかりしていますから、そこにプラスアルファの力を与えるのが、私たちの役割だと思っています。(終わり)
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