2014.09.26 松本大学と健康運動指導士 |

(写真)松本大学の住吉廣行学長と私
1)長野県松本市の松本大学は、スポーツ健康学科の学生に健康運動指導士の資格を取得させ、市役所など自治体の専門職として公務員に就職させています。なぜ市役所は健康運動指導士を必要としているのか。それは、高齢者に運動をさせて、医療費を削減し、財政支出を減らすためです。
2)運動により高血圧、糖尿病、心の病などの生活習慣病を改善させ、寝たきりにならない健康寿命を延ばすことは科学的に実証されています。健康運動指導士は、病院や福祉介護施設、スポーツクラブだけではなく、自治体や企業の健康管理部門にも活躍の場が広がっています。
3)健康運動指導士とは、保健医療関係者と連携しつつ、個々人の心身の状態に応じた安全で効果的な運動を実施するための運動プログラム作成および実践指導を行う、公益財団法人健康・体力づくり事業財団が主催する厚生労働大臣認定の資格。健康な人の将来のリスクを防ぐ「予防医療」の資格だ。
4)健康運動指導士になるには、健康運動指導士養成校の養成講座を修了するか、健康運動指導士養成講習会を受講し、健康運動指導士認定試験に合格した上で、健康運動指導士台帳に登録される必要がある。松本大学は平成24年度24名が受験15人が合格(合格率62.5%)。全国平均は46.2%。
5)健康運動指導士は他の体育大学などでも取得できるそうだが、それを公務員就職に生かしている事例は松本大学ぐらいだ。松本大学は、自ら自治体に営業したそうだ。地域での運動指導・健康指導の実績があってのものだが、地方公務員=学力試験ではない、専門職採用の道が開けたのは画期的だ。
6)松本大学のスポーツ健康学科は学生による地域貢献に非常に力を入れ、学生が主体となって各地で健康講座を開講。人前での話し方から中高齢者とのコミュニケーションの取り方、仕事に取り組む姿勢などを学んできた。地域社会で生きた学びを実践した点が、自治体に就職するうえで高く評価された。
7)現在、健康運動指導士として公務員になた卒業生は4名(松本市2名、安曇野市、南箕輪村)だが、今後、増やしていきたいという。もちろん公務員以外にも病院、医療関係の企業、さらには、観光産業やサービス業などにも就職を想定しているという。レジャーや企業経営とスポーツ・健康が結びつく。
8)学生による健康づくりは自治体・地域だけではなく、リゾートホテルとも提携している。松本大学は池の平ホテル&リゾーツと連携し、運動指導を行う「いきいき診断ルーム」をホテルに開設。卒業生3名が働いており、観光客にウォ―キングや運動などを指導している。
9)顧客に健康指導・運動指導ができる社員のニーズは高く、病院、老健施設だけでなく、住宅建設、マンション管理、カラオケ、パチンコ業などからも相談が鵜寄せられている。どんな業種でも健康運動の専門家社員に活躍の場がある。こうして、地域全体が活性化していく。
10)従来、行政が財政的に観光振興をしても、地域へのリターンは少なかった。しかし、健康との結びつきは、健康食、地域農業、定住化による人口増、医療補助負担の軽減などメリットが多く、健康づくりが個人、企業、行政すべてに好影響をもたらしている。
11)「健康寿命延伸都市」を掲げる松本市では、松本大学の根本賢一教授(スポーツ医学)の協力のもと、中高年者を「熟年体育大学」に参加させて健康維持・増進を目的に運動してもらったところ、参加者平均で半年で2割の医療費削減が実現した。
http://www.matsumoto-u.ac.jp/professors/graduate/health/kenichi-nemoto.php
12)多くの地方大学が生き残りをかけて取り組んでいる公務員養成は、理念もなく単なる予備校によるスパルタ教育になっていたり、地域貢献活動は本当に効果を上げているか疑わしい事例もある。松本大学の取り組みは、この問題をどちらも乗り越えている点で、全国でも先進的な事例である。
13)スポーツ推薦で体育系の学生をかきあつめるために、多くの地方私大でスポーツ系の学科が乱造されているが、学力が伴わないので公務員には受からない。しかし、地域で運動指導・健康指導ができる健康運動指導士、健康運動実践指導者、トレーニング指導者などの資格があれば活躍の場は広がる(終)

