2014.11 神戸学院大学 岡田豊基 学長インタビュー |
「目立つこと」と「差別化」がキーワード
神戸学院大学 岡田豊基 学長インタビュー
2014年度は現代社会学部を開設、2015年度には、9番目の学部グローバル・コミュニケーション学部の開設に加え、大学本部を有瀬キャンパスからポートアイランドキャンパスに移転するなど、近年、急激に躍進する神戸学院大学を率いる、岡田豊基学長に、同大学の魅力を伺った。
岡田 豊基(オカダ トヨキ)
法学部 法律学科 教授
1953年生まれ
1977年 大阪市立大学法学部・卒業
1984年 神戸大学大学院法学研究科博士後期課程・単位取得退学
博士(法学)〔2009年3月(神戸大学)〕
1984年~1987年 鹿児島大学法文学部助教授
1987年~1993年 神戸学院大学法学部助教授
1993年~ 神戸学院大学法学部教授
・主な研究分野
商法・保険法(損害保険・生命保険・傷害疾病保険)
・主な研究課題
保険法の比較法研究(保険、保険契約法、保険業法)
地震と保険(生命保険、損害保険、火災保険、地震保険、地震損害免責条項)
・著書
『現代保険法』(中央経済社)
『請求権代位の法理』(日本評論社)
『現代企業法入門』(中央経済社/共著)
など
・講演・取材可能なテーマ
保険・年金
損害保険、生命保険
消費者保護
大学の社会的貢献
元気な大学を作りたい
私は、神戸学院大学を、「学生の満足度の高い大学」にしたいと考えています。49年前の1966年(昭和41年)に、森茂樹初代学長によって「真理愛好・個性尊重」という建学の精神が定められ、栄養学部100人からスタートした本学は、今や8学部1万人の神戸市内最大の私立大学に成長しました。こうして大きくなれたのは、学生・卒業生の愛着と誇り、4年間、あるいは6年間の教育で、夢や期待を実現できたからだと思っています。「満足度の高い大学」とは、そういう場です。
大学では、まず、学問を学ぶことの楽しさを知ってほしい。高校まで知っていたことをあらためて学ぶ、高校までには知らなかったことを学ぶ、文系5学部、理系3学部が一緒に学ぶ中で、多彩なキャラクターと出会い、仲間ができる、生涯の友とめぐり会う。本学では地域貢献や就職支援にも力を入れており、中四国の各県と就職支援協定を結んでいます。勉学、学生生活、キャリア、すべての面で充実を図っていきます。
なかでも、「授業の充実」が重要です。年配の先生を中心に、昔の経験で授業をしがちですが、もう昔のやり方では通用しない。FDを充実させようと考えています。いかに教育をして、付加価値を付けて、学生に満足してもらうか。日々の授業のアウトカム、教育効果を向上したい。愚直なまでに、来た学生を育てることです。
神戸学院の学生は、「素直だ」「まじめだ」と社会から評価されます。着実に仕事をしていく。ただ、やや大人しすぎるかなと思う面もないわけではないのですが、ここは、「元気な大学に」と思い、様々な施策に取り組んできました。新設した現代社会学部、グローバル・コミュニケーション学部は、『神戸』という都市を強く意識した、これからの時代にふさわしい学部だと考えています。
法学部の教育改革
私の法学部では、4年ほど前に、大学改革の成功例として名高い中京大学法学部を見学し、学生がイキイキとしている姿に感銘を受け、その施策を取り入れました。もともと本学の法学部は警察官や消防官などの就職は強かったのですが、これに加え、地方公務員を増やそうと、1年次で宅建、2年次で行政書士の合格を目指すようにしました。1年目の2013年度で、宅建に120名が合格し、そのうち60名が1年生、全国合格率10%の行政書士試験にも、2年生4人、4年生1人が合格しました。公務員試験で結果が出る2年後が楽しみです。
関西の私大は、学生募集で厳しい競争を続けています。私たち神戸学院大学は、具体的にどこかの大学がライバルというわけではありませんが、この競争の中で、他大学に比べて、「目立っていくこと」「差別化」を意識しています。法学部というと印象が薄い学部だというイメージもありましたが、法律を学ぶ面白さを知ってほしいと考えて教育し、さらに、1年生のうち60名が入学半年後の10月に宅建に合格したことで、「やればできる!」という空気が学部内にみなぎってきました。
宅建、行政書士、公務員試験といった取り組みは、就職だけを意識したものではありません。法学部の通常の授業が変わってきたのです。学生が教室で前の方に座るようになりました。そして、資格取得を目指してがんばっている仲間がいる。学生の目の色が違うのです。中でも、「授業が理解できるようになった!」という声は嬉しかったですね。たとえば民法などで、宅建での実務の勉強と、授業での学問が、学生の中でバランスよく融合しているのです。教員としても、授業後に学生が質問に来るようになったので、緊張感が違います。
法学部は1年生前期に1クラス20名の基礎演習がありましたが、1年生後期はこうしたゼミがありませんでした。2015年度からは、大学本部も法学部の1・2年次生もポートアイランドに移転し、4年間の一貫教育を開始するのを機に改革を進め、1年後期もゼミを実施します。2~4年次の専門ゼミは選択制ですが8割の学生が履修します。ゼミによっては教員の判断で卒業論文も書きます。努力する学生は、きちんと勉強しているから、卒業論文を書いていても、公務員試験は受かります。
法律を学ぶことの意義
資格試験、公務員試験の勉強は、手段としての法律ですが、授業は、研究のための法律です。法学とは、「なぜなんだろう?」と考え、それを突き詰める、「説得の学問」です。法律は絶対なものではなく、解釈が存在しますね。それで相手を説得する。裁判も検察もそうですし、契約もそうです。日本だけでなく、世界の社会のベースは法、すなわちルールに則っています。この法というルールを知っておけば、トラブルを未然に防いだり、困難に立ち向かったり、つまづいても立ち上がることができます。法律は固くるしいという人は、法律を専門に学べば、きっとその面白さがわかってもらえるはずです。企業人の方からは、「法律を知っておけばよかった」と言われることが、よくありますよ。
そのことと関連して、法学部での学びを紹介しますと、法学部では、まず、①「1+1=2」であることを学びます。つぎに、②「1+2」という問題を前にしたとき、「1+1=2」を学んだ学生は、「1+1=2」だから、その答えが「3」であることを導き出すことができます。①が基礎だとすると、②は応用です。世の中には、「1+2」だけでなく、「2+3」や「3+4」のように課題がたくさんありますが、基礎を学んだ学生はこれらの課題に対応することができます。このように、大学での学びは、社会の課題を解決するための知識を修得し、能力を高めることにあるのではないかと思います。
18歳で大学にやってきた学生を、どう育てるか。私はたとえば、今後は法学部でも、簿記が重要になるかもしれないと考えています。経済事件が増え、裁判所の書記官や裁判所の事務官には、簿記2級が求められるようになりました。
私自身は、学生時代、漠然と法曹を目指して、法学部に進学しました。しかし、4年次に司法試験に落ちて、「世界が違うなあ」と感じ、せっかくなので法律の知識を仕事に生かしたいと考えていたところ、ゼミの先生から「大学院に行かないか」と誘われ、大学院ではさらに学問としての法律を勉強し、専門的な知識と法的な考え方を深めました。「法律的思考」=リーガルマインドとは、いろんなことに興味を持って取り組むことです。興味を持って、「なぜなんだろうか?」と考え、取り組んで、結論を出す。宅建に合格した1年生60名も、興味を持って取り組んだ結果、やればできるという自信につながりました。自信を持つことは、性格を変えることです。私は法律を学ぶことで、社会のバランスを考えるようになりました。ある判決が出ても、それが自分の意見と違う場合がある。そこに、自分の生き方が出る。世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな判断がある。でも、自分は自分だ。法律は、そうやって自己を確立していく学問なのかもしれません。(終)
謝辞
この取材は、神戸学院大学教務センター教務事務グループの松宮慎治様のお力で実現いたしました。松宮様には篤く御礼申し上げます。
広報部 部長 兼
入学センター事務部長 兼
広報部 広報グループ
グループ長事務取扱
住 智明 様
ご協力賜り、ありがとうございました。