(完全版)千葉商科大学サービス創造学部の教育と就職事情 |

(取材した皆様)
サービス創造学部 吉田優治 教授・学部長
サービス創造学部 学部教務委員長 中村秋生 教授
サービス創造学部 学部キャリア支援委員会委員長 今井重男 准教授
戦略広報センターオフィス 柏木暢子 課長
教務オフィス サービス創造セクション 鈴木孝 課長
千葉商科大学が2009年4月に開設したサービス創造学部の一期生が社会に出たのは2013年4月。この学部では今までの大学にないユニークな学部教育によって、人材が輩出されていると聞き、吉田優治学部長をはじめ関係者の皆さんに取材をさせていただいた。吉田学部長はこの学部を設置した狙いを、「日本の大学を変えたい」と表現する。「このままでは日本の若い人の育成が、世界のレベルに追い付かないんじゃないか。しっかりと教育をする大学が必要だ」と吉田学部長は言う。
1学年定員200人に1期生は227名入学。2013年春の卒業者は148名で、そのうち4名が専門学校等に進学。残り144名中就職希望者が140名。そのうち139名が就職した。1期生の就職率は99.3%だった。留年が30名、留学目的の休学が2名、退学・除籍が47名となっている。中退者が2割と多い点については、「経済的事情が1/3ほどであり、残念だ」とのこと。そのほかは、自分に合わないなどミスマッチによる。今までの大学とは違い、実際に社会に出て活動する機会が多い学部ではあるが、座学の勉強をしなくていいというわけではない。また、「活動から学ぶ」という学部のコンセプトに対し、活動的ではない学生のミスマッチもあった。「早く大学を辞めて、次のステップで活動した方が本人にとっても良い場合もあった」(吉田学部長)。
サービス創造学部は、その名の通り「サービス」そのものを学ぶ学部である。「サービスは、まだ学問としても知名度としてもそれほど市民権を得ていない。一般には、サービス=飲食業と思われがちだが、サービスの概念はもっとずっと広いものである。ウチは専門学校のように技術を中心に教えるのではなく、サービスの理論と企業とのプロジェクト実践を学ばせている」(中村教授)
このあたりをよく理解してもらい、受験生のミスマッチを減らす努力をして、二期生の退学は半減した。サービス創造学部は一般入試を実施せずすべてAO入試(2014年からセンター入試も導入)だけで学生を集めている(そのため、偏差値が存在しない)が、学力は内申書で評定平均3.0以上などそれなりに要求しており、学力の低い学生は入学させていないので、一般入試がなくても問題ないという。
「僕は、基礎学力の他に、VisionとPassionで学生を選びたい。何を目的に学ぶのかが明確な学生に来て欲しい」(吉田学部長)
偏差値競争というレッドオーシャンにわざわざ戦いを挑みに行くのではなく、教育の中身や出口で評価される学部になりたいのだという。多様な学生を、偏差値や、一流企業への就職といった、一つのモデルに押し込めたくないのだとも。
「今や日本のGDPの74%がサービス業、日本の就業人口も約70%がサービスに関わっています。このサービス業というのは、先ほどのように飲食業界だけではなく、私たちはメーカーなどにもサービス創造が求められていると考えています。いろんな業界にサービス創造のマインドや知識を持った人材を送り出したい」(吉田学部長)
就職支援についても、大学全体のほかに、(OB・OGがいない中で)学部独自でも多くの取り組みをした。1年生からのキャリア教育にも力を入れている。教授会や教職員のネットワークを広げ、ゼミを通じて、情報を学生に伝える。学部独自の「就活塾」も開設し、3年生の5月から実施したが、これは学生の約半数100名が参加した。主に金曜日の4・5限などに、いくつかのクラスに分けて実施する。就職イベントなどは3年生のうちに集中して実施し、4年生の夏、秋になっても、まだ進路の決まっていない学生もそれなりにいるので、教員3人で未決定者全員と面談。学部専従の就職顧問を雇用して、学生たちが先生に相談できないこともこっそり相談できるようにする。年間460回ほど相談しているという。この顧問は「就職の女神」と呼ばれる庄司裕子先生で、自ら起業して人材紹介業務などをしていたため、マッチングが得意。学生一人ひとりに合った企業にマッチングさせることを仕事としている。夜中でもメールやFacebookで学生たちとつながり、支援をする。
「大企業に何人入ったかよりも、3年で30%が辞めないような就職をさせたい。小さくても、本人に合ったいい会社へ。という気持ちで、学部を挙げて就職指導にあたっています」(今井准教授)
どういう人材を育成していくかが明確な学部だから、他の教職員も協力的であり、学部一丸となって学生の支援をしていけるのだという。「公式サポーター企業52社に何人入ったんだとか、上場企業に何人入ったんだとか言われるが、そういう問題じゃない」(吉田学部長)
大学も企業も、今までの基準とこれからの基準は違う。教育方法論で差別化していく。そのために、学部をあげてアクティブ・ラーニングに力を入れる。企業人などによるゲストスピーカーの講義も多いが、こうした先生方も入念に準備してきて最高のパフォーマンスを発揮して下さるので、学生に刺激になる。こうした講師は必ずしも有名企業のエリート社員ばかりではない。小さくて良い会社、ベンチャー企業の社員も多い。
「実践知+学問知+活動知です」(吉田学部長)
こうした講義をしてくれる公式サポーター企業52社に対しては、交通費もギャラも出していない。逆に、寄付講座として費用を徴収しても居ない。想いに賛同してくれる企業が、ボランティアで協力してくれているのだ。
「企業経営者は、いつまでも変わらない日本の大学教育にうんざりしています。だから、私たちは、一緒にやろう!と声をかけ、偏差値教育とは別れよう!という趣旨に賛同してくださる企業さんと協力をさせていただいています」(吉田学部長)
学部オフィスも学生支援では独自の動きをする。「職員の窓口対応が学生に不親切と言われる大学も多いと聞くが、ウチはそんなことはありません。親身な対応をします。同じオフィスに就職の女神(庄司先生)もいるし」(吉田学部長)
二期生は、一期生を超えるペースで内定しているという。8月末現在で、1期生は内定率51%だったが、2期生は65%だ。
「一期生の就職の頑張りが、後輩の刺激になった。」(中村教授)
「学生の多くは、高校時代に褒められた経験が少なく、自信を持っていない。学生に自信を持たせることは大学教育で重要だが難しい。彼らは偏差値教育の中にいたが、社会は違う動きをしている、だから、公式サポーター企業と関わることで、学生をその気にさせています」(吉田学部長)
サービス創造学部の学生に対する評価は、「明るくて元気」と評判がいい。「4年間で、学生たちが変わっていく。その成長を感じます。メールのやりとりも名乗らないなど友達感覚が抜けなかったのが、『お世話になっております』など丁寧にメールが書けるようになる。社会と接するうちに変わっていく。企業とのやりとり、大人との関わりを経て、学生たちは変化していくのです」(戦略広報センターオフィス 柏木暢子 課長)
サービス創造学部の教育
企業とのかかわりが学生を変えていく、サービス創造学部の独自の教育を追いかけてみよう。まず、1年生たちは全員必修の「サービス創造入門」を受講する。これは、サービス創造学部の52社のサポーター企業の社員がかわるがわる来て、職業観や仕事について語る授業で、新入生は入学直後にいきなり「シャワーを浴びるように」企業人たちから仕事の話を聞く。
「企業の方には、会社の話というよりも、仕事を通じて何を成し遂げたかを語っていただく。仕事のおもしろさ、つらさ、社会とのかかわり。これを、前期で12~13人から聞く」(中村教授)
同時に、「研究入門」という、いわゆる初年次ゼミも受ける。(「正しいスタートをさせる」ために)これは1クラス14~15人で、専任教員から、大学生としてのマナー、生活習慣、ノートを取る、本を読む、図書館を活用する、議論をするなどのリテラシー教育だ。課題を出してグループで解決させるなどして、友達づくりの場にもしている。以上が必修だが、オプションで希望者には企業見学などのイベントも実施する。
「1年生春の『サービス創造入門』では主に仕事の話を、1年秋と2年春の必修の『企業セミナー』では、主に具体的な企業の仕事の話を、そして3年次にはいくつもの業界ごとのセミナーを授業で実施しており、学生は企業人から、働くことについて、個人→会社→業界と徐々に大きな世界の話を聞くようになっています」(中村教授)
専門科目の「業界セミナー」は、ファッション業界、健康関連業界、外食業界、観光・交通業界、スポーツ・エンターテインメント業界などでそれぞれ開講されており、それもゲスト講師が来る。「ここで、教員も企業と接することで、成長することができる。理論的なことを教える上で、教員も実践の場で学ぶ」(吉田学部長)
3年生夏のインターンシップは、約50名が参加。これは学部1学年の1/4にあたる。公式サポーター企業26社が約50名を受け入れる。インターンシップの長期のものは北海道や沖縄のリゾートなどで4週間におよぶものもある。「1年生の時から、授業などでいらしていただいた企業で、場合によっては知っている社会人もいる環境でのインターンは、より一層、リアルなビジネスや社会を身近に捉えることができる。」(吉田学部長)
サービス創造学部では、年2回、全学生と面談をしている。これもキャリア教育の一環だ。最初は、自分が知っている有名企業志望の学生が、教員との面談を繰り返すうちに、身の丈が分かって来る。3年間を通じて様々な企業の話を聞いたり、インターンシップをしたりする中で、方向転換し、本当に自分がやりたいこと、自分に合った仕事を探すようになる効果がある。「私も大学生の子どもがいる親として、払った学費に見合った教育をする責任を感じている」(吉田学部長)。
こうした学生全員の情報を、学部内で共有する。「学部内のコミュニケーションの量が全然違う。学部長自らも動くし、職員も含め、共有していない情報は無い。関係する全教職員にメールを一斉送信することもある」(中村教授)。こうした密な交流には学生も加わっている。非公開のFacebookページでは、教職員にサポーター企業の関係者、それに約300人の学生が参加している。
「プロジェクト実践」も同学部の特徴的な科目だ。これは、「活動から学ぶ」がテーマで、主に2・3年生約170人が参加する。1年生のやる気があれば履修可能。2013年度は「千葉ロッテ・プロジェクト」「旅行プロジェクト」「パーティー・プロジェクト」「コミュニティ・カフェプロジェクト」があり、実際に企業や社会と連携して、新しいサービスを企画・実行する。単位にならない学生の自主プロジェクトも複数動いている。プロジェクト実践は教員と専門分野の特命講師の2名によるティームティーチングで行われ、2012年度には桂由美特命教授のドレスでファッションショーをする「ブライダル・プロジェクト」、日本航空と共にプロバスケットボール公式戦をプロデュースする「千葉ジェッツ・プロジェクト」などが行われた。
「私の知らないうちに、日本航空の宣伝部長と、学生が直接電話して打ち合わせをしていたりもして、あわてましたが、学生たちはきちんと企画・運営できました。頼もしく見守っています」(吉田学部長)
「プロジェクト実践」は大学側の企画の他、場合によっては学生の企画も受け付ける。パイロット的な非公式プロジェクトを経て、授業単位化される場合もある。「プロジェクトに参加している学生たちは、夏休みも毎日のように大学に来て、準備や会議をしています。企業にも何度も足を運び、時には怒鳴られたりもする。しかし、そうやってがんばっている学生がクラスにいることで、参加していない学生にも刺激になっています。こうした学生は、就職の面接で、自分の成功・失敗の体験を、生き生きと、胸を張ってしゃべれる」(中村教授)
こうした特命教授は「現役」にこだわっている。「社会人が今、まさに、現場で試行錯誤している姿を学生に見せたい。体験してほしいからです。」(吉田学部長)。自分の会長室に選抜された学生を招き、企業の仕事の現場を見せてくれる経営者もいる。学生のうちからこんな体験ができる大学生はまれだ。秋学期からは「特命教授塾」を実施予定。
「僕たち大学教員では、社会での規律や時間管理を教えられないんですよ。小学校、中学高校でも無理だと思います。でも、企業の方であれば、たとえばある企業では、新入社員研修のプログラムを実際に30人の学生が体験させていただきました。全然違います」(吉田学部長)
一方、専門ゼミでも、たとえばマーケティングなら、実際に学生を外に出して、企業や商店街などで調査をさせることもある。吉田学部長のゼミでは、企業のビジネスモデルを作成するために、まずは専門書をしっかりと読ませる。ハーバード大学のMBAで行われているような「ケース・メソッド」を導入し、ディスカッションをする。学生たちにもケース・メソッドを実際に作らせる。
「私たち教員は理論を、そして企業からは実践を学ぶ。学生は公式サポーター企業からは、先端的なサービスを学びます。こうした企業はどうやって開拓したか。島田晴雄学長のご縁もありましたが、私が自分で営業した企業もあります。そして想いを熱く語る。共感していただく。お金ではないが、互いがWIN-WINの関係になる。企業は怖いもの知らずで飛び込んでいけば応えてくれます。こうして多くの企業のお力を借りて教育ができているのです」(吉田学部長)
学生に「これでもか、これでもか」と社会との接点をつくり、企業から学ばせる。こうして一期生の就職希望者はほぼ全員が就職できた。まだ2013年春に入社したばかりだが、企業からは「目つきが違う、態度が違う」とおおむね高評価を受けている。
「どうにもだらしなく、ダメだった学生が、大手流通業に内定しました。僕は彼がダメな時から、『君を全力で応援する』と言い続けてきました。内定後は就職のアドバイザーとして3年生を支援してくれました。彼は素晴らしい成功例になった」(吉田学部長)
サービス創造学部は、日本の大学教育を変える手がかりになると吉田学部長は言う。まだ新しい学部であり、社会に浸透しているとはいえず宣伝不足の面があり、今後は企業出身の教職員の力も借りながら、学生を活用したPRなどにも力を入れていく。
「学生募集のための教育改革は、もうやりたくないんです。本当に自分たちが育てたい若い人を作るような教育がしたい」(吉田学部長)
大学教員は、なかなか組織的に動かない人たちだ。だから、トップが、リーダーが、熱い思いを持って教員をコントロールしていくべきだと吉田学部長は言う。教員もそうやって育てる。育てるだけじゃなくて、自分で学んで、上がって来てもらう。これは学生も同じだ。そういう意味では、ある程度学生には自主性に期待し、突き放した部分もある。中退に関しても、辞めたい学生を無理に食い止めることが、必ずしも良いかどうかは分からないと吉田学部長は言う。
「今までは、大量生産、人と同じ発想、人から言われたことをやる。でも、これからは、人と違ったことを、どれだけ経験し、決行し、発想し、実現してきたか。私たちが一般入試をしないのも、そうした考え方からだ」(吉田学部長)
あえて偏差値というレッドオーシャンに戦いを挑まず、企業と協力した人材育成と言うブルーオーシャンで学生を教育する。(迷わずに仕事を続けられるマインド、意思決定をする判断力を身につけさせる)千葉商科大学のサービス創造学部。こうしたタイプの大学で伸びる学生はきっといるだろう(合わない学生もいるが)。そして、企業と大学で人材育成のあり方が明らかにズレてきている今、文系私大の、企業とのミスマッチを防ぐための学部教育のあり方としても、この学部の動きは注目である。(終)
(資料)
サービス創造学部9つの特徴 吉田優治 学部長
1.VisionとPassionに基づく総合評価での入試
・高校の内申書と、VisionとPassionによる総合評価で、目的意識の高い学生を入学させる。
2.実践志向の高いカリキュラム設計
・「学問から学ぶ」基礎講座、ケースディスカッションクラス
・「企業から学ぶ」公式サポーター企業52社
・「活動から学ぶ」オフィシャルプロジェクト、非公式プロジェクト
3.学部独自の就職塾講座
・キャリアサポートセンターとは別に、学部主催の就職講座をクラス別に提供
4.年間約125名、4年間で約480名のゲストスピーカー
・実務で活躍する公式サポーター企業などのゲストスピーカーの通常授業が年間合計で約125名。実務家との接触により物おじしない性格づくり。
5.学部専属の就職顧問「就職の女神」
・1期生対象に年間450回の個別面談を学部オフィスで実施。メールやSNSも活用し週3~4日の個別相談以外の時間にも相談を受ける
6.学部就職委員会の体制
・卒業生で実務経験豊富な今井准教授が委員長。ほかにも豊富な経験の教員
7.学部オフィス職員
学部独自のオフィスで、学生たちを職員が応援するという雰囲気・体制の構築
8.200名の学部規模 教職員がほとんどの学生の顔と名前を把握している
9.これでもか、これでもかの学習機会の提供
・就活塾×就職担当顧問×学部キャリア支援委員会×企業によるキャリア講座
●企業関係者による講義が聴ける正規の授業
・「サービス創造入門(仕事刺激クラス)」公式サポーター企業の実務家11人
・「熱血講座」卒業生が毎週交代で現役学生に本気で熱く語りかける15人
・「企業セミナー」様々な業界の企業家が毎週交代で
・「流通業界セミナー」
・「外食業界セミナー」
・「観光・交通業界セミナー」
・「スポーツ・エンターテイメント業界セミナー」
・「経営サポート業界セミナー」会計士事務所、監査法人、保険会社など
・「ファッション業界セミナー」
・「健康関連業界セミナー」
・「ブライダル業界セミナー」
●サービス創造学部就活塾
・3年生を対象に、職業観の醸成、マナーやエントリーシートの書き方など、内定獲得までに有効なスキルを習得する。
・GPA3.0以上の学生対象のエリートクラスと、通常クラスを設定。年明けでも内定の無い4年生のための「緊急クラス」を作ることも。講義は13回で3000円など。単位は出ない。
●そのほかの就活支援
・着こなし講座(AOKI協力)(12月)
・「就活必勝ファイル」配布(10月)
・就活サイト登録状況調査および登録促進(10~11月)
・進路希望アンケートの配布と回収(12~1月)
・「コミュニケーション・マナー研修」(JALアカデミー協力)(1月)
・「髪型・メイクアップセミナー」(資生堂協力)(1月)男子学生も対象
・「履歴書・面接対策講座」(2月)
など
ツイート

