2018.9.13 イスラエル・テルアビブ大学の赤野健悟さんに会う |
イスラエルの大学で学ぶ日本人学生は、かなり少ないと思います。そんな中、短期留学ではなく、正規の学生として学んでいる数少ない日本人学生、赤野健悟さんにお話を伺いました。
──大阪府堺市出身で、22歳です。テルアビブ大学1年生で電気電子工学を学んでいます。甲陽学院高校(兵庫県西宮市の中高一貫男子校)を卒業後、大阪大学歯学部に入学しましたが、いち歯科医師になることへ疑問を感じ、アメリカの大学で学びたかったので、1年生を終えて米国のノックスカレッジ(イリノイ州のリベラルアーツカレッジ)に2年次編入しました。入試はエッセイやTOEFL、高校・大学の成績など、普通の米国大の入試とそれほど変わりません。でも、超田舎に立地しており、リソースも充実していない本大学に三年間在籍する意義を感じられず、本大学へ再度編入するに至りました。イスラエルの大学の入試はアメリカと似ていて、TOEFL、エッセイ、高校・大学の成績、SATなどで受験可能です。
なぜイスラエルに行ったかですか? 歴史や宗教的な動機ではありません。イスラエルが技術大国だと知って、ノックスカレッジ時代にインターンシップに行って、今までイスラエルに抱いていたイメージを覆され、これはすごく面白い国だなと感銘を受けたのがきっかけです。本人がほとんどいない環境にも魅力を感じましたし、ある意味で「おいしいな」と思いました。さすがにヘブライ語はまだアカデミックレベルでは分からないでので、大学は英語の授業で学位が取れるインターナショナルコースに所属しています。今は1年生が終了した状態で、最初の1年は物理や数学を中心に学びました。
僕は病気になって4回手術した経験がありますが、カテーテルなどによる低侵襲性の術式などでほとんど傷跡が残らない医療技術はすごいと思ったのが、この分野に興味を持った理由です。日本とイスラエルを医療・ヘルスケアの分野でつなぐ仕事をしたいと思い、そうした会社を立ち上げて事業をしています。ヘルスケアや医療技術に特化して取り組んでいるプレイヤーがいなかったので、これはやるしかないと思いました。日本の企業とイスラエルの企業との協業、投資、リサーチ、視察のアテンドなど、両国のスタートアップ企業の支援を仕事にしています。日本のスタートアップ企業でイスラエルマーケットに入りたい企業の代理店業務もしています。
イスラエルの大学は10月に始まり、2学期制です。大学は週4日で金、土、日は休みですが、膨大な宿題が出ます。1年次は9科目取りました。1学期目は4科目で、必修の物理と線形代数の授業を取り、残り2科目は前の大学の単位が認められ免除になりました。2学期目は5科目で、物理、微分積分、常微分方程式、C言語のプログラミング、デジタルロジックシステム(デジタル回路のロジックを考える)です。アメリカの大学と似た教育ですが、1科目が1コマ2~3時間あり、1日7~8時間は授業で、大変です。授業はほとんどが1クラス30人で、先生とTAの2人が授業に居ます。
テルアビブの町のアパートを借りてバス通学をしています。インターンや旅行で来た日本人、特に学生向けにゲストルームも用意しています。物価はとても高いので自炊です。学費は年間で150万円です。イスラエルの大学は、おおむね、文系は3年、理系は4年通います。日本人学生はテルアビブ大学に正規生として留学しているのは僕だけです。
僕は22歳の1年生ですが、イスラエルは男女とも18~21歳は兵役があり、兵役が終わると世界を旅したりするので、25歳ぐらいの学生は普通で、早くても新卒で就職するのは26、27歳ぐらいの人が多いです。大学生のうちに結婚する人も結構います。男女とも兵役があると、軍で出会いがあって結婚する人もいます。治安は心配されますが、テルアビブについては、アメリカよりも良いと思います。
インドや中国からの学生は、イスラエル政府がお金を出して、タダでイスラエルの大学で学べる仕組みがあり、学生はそこそこいます。僕も大学から奨学金をいただいていますが、日本人はほとんどいないし、大学や国としてはもっと日本人には来てもらいたいようです。日本人がイスラエルに興味を持つように、サマースクールの実施など、何か取り組みができればと考えています。(終)