教育で平和をつくる―国際教育協力のしごと |
岩波ジュニア新書(岩波書店) 小松太郎
岩波ジュニア新書は子ども向けと思われているが、私はその質は極めて高いと評価している。
本書は、ユネスコやJICAで国際貢献活動をした、現在九州大学准教授の筆者が、教育という側面から世界平和に挑むという崇高なチャレンジの記録で、国連暫定政府教育行政官としてコソボに行った話である。
国際機関で働くというのは、華やかなイメージを持つが、実際の作業は苦闘に満ちている。内戦で対立していたコソボでは、セルビア人とアルバニア人が、同じ地域に住みながら互いに対立し、子ども達はまったく違う教育を受けていた。その融和はとても厳しい作業で、何より大人たちの対立の根が深い。互いの民族は言葉も宗教も違う。内戦で命を奪い合った者同士が、戦後も隣人として住む環境で、子ども達の教育はどうあるべきか。
本書は、真の国際貢献の厳しさと、その厳しさを克服していくことの価値を教えてくれる。
