『ベルナルドの足跡』 ②ポルトガル鉄道 |
リスボンの人口は56万人で、日本なら八王子や松山ぐらいである。大都市圏としては266万人おり、台湾の高雄大都市圏とほぼ同じで、ポルトガル全人口の25%を占める。一国の首都だけあってさすがに賑やかだ。観光地である旧市街ばかりが注目されるが、郊外には広大な近代的市街地が広がっており、世界共通の巨大なショッピングモールが深夜まで営業しており、自動車の往来も頻繁である。
旧市街地同様、郊外も高層の建物が多く、ピンク、黄緑、淡いブルーなどのカラフルな色にビルが塗られているのが特徴的だ。人々も同じような色の服を好み、衣料店や大型スーパーでは、日本では絶対に売れないようなカラフルな服や、野暮ったい服が売られており、ファッションセンスはイギリスや日本とずいぶん違う。
多くの人は必ずしもおしゃれではないが、適当な服を着ても似会うから不思議だ。お年寄りになるとそれなりに落ち着いた色の服が増えるが、ジーパンに真っ赤なTシャツの老婆もうろついていたりしてあなどれない。若者も多くがユニクロみたいなのを着ており、少なくともファッションに関しては、日本の若者は世界最高に頑張りすぎであると感じた。私には、誰もが適当な服を着ているポルトガルは居心地が良かった。
リスボン市内には地下鉄4路線、市電5系統、ケーブルカー3系統、無数のバス路線、丘の上に登る有料のエレベーターなどの公共交通機関があり、どれも異国情緒たっぷりで魅力的である。すべて4€(ユーロ、ポルトガルでは「エウロ」と発音する)の1日券で乗ることができる。別料金だがテージョ川の対岸の町に行くフェリーも沢山あり、安く乗れる。
このほか、市街地を環状に結ぶポルトガル鉄道(Caminhos de Ferro Portugueses, CP)が走っている。日本でいうJRにあたり、1日券は使えない。中心部から郊外にいくつかの路線があり、それなりに本数も多く便利だが、土日に完全運休してしまう線があるのはいただけない。それと、市の中心部は改札のない無人駅ばかりで、長距離列車の切符を買うにはわざわざ大きな駅まで別料金で行かなくてはいけないのが面倒だ。
ポルトガルは日本の新幹線よりもさらに20センチほど線路の幅が広い広軌を採用しているため、電車はどれも顔が横長で、車内の座席はかなり余裕がある。通勤電車にも快適な向かい合わせの座席を配しており、二階建て電車もあるなど、サービス水準は高い。地下鉄や路面電車と違い朝夕の通勤時間にも全員着席できるほど空いている。
面倒だといいながらも、郊外にあるオリエンテ駅Estaçao do Orienteまで出向く。壮大なコンクリート造りの新しい大きな高架駅だが改札はなく、切符売場以外は駅員が全くいないので、かなり殺風景だ。1998年の万博会場跡地が公園になっており、ヴァスコ・ダ・ガマ・ショッピングセンターという大きなショッピングモールが隣接している。この後も彼の名はあちこちで見かけ、いかに彼がポルトガルでは英雄であるかを認識させられた。
オリエンテはリスボン最大のターミナルであり、長距離バスターミナルも隣接している。いろいろ探検したが、お隣スペインに行くバスも列車も思ったよりずっと少なく、まるでポルトガルは島のように孤立した環境にあると感じた。日本から見るとまるでスペインのおまけのような国だが、一時は対等に世界の覇権を争った仲であり、ポルトガルの独立志向はとても強い。
窓口で、事前に用意してきた紙を渡し、コインブラまでの電車の切符を購入する。行きはIC(Inter City)という急行(19.50€)、帰りはアルファ・ペンドゥラール(Alfa Pendular,AP)という特急(30.00€)だ。ところが提示された金額は往復で32€と、ポルトガル鉄道のHPに書いてあった値段よりかなり安かった。往復割引だろうか。
翌朝、ホテルからCPの通勤電車でオリエンテ駅に向かい、8:39発のICを待つ。反対側のホームには、帰りに乗る6両編成のAPが止まっている。やがて無骨な電気機関車に引っ張られてICがやってきた。切符には21号車と書いてあるので、どんな長い列車かと思ったら、20~23という数字が掲げられた4両編成の客車で、拍子抜けした。席は残念ながら進行方向の逆だ。コインブラまでの2時間、急行客車に揺られていく。
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